138話 弱者なりの考え
陰陽師編書いてみようかなって思います。
ただ、陰陽師のことあまり知らないんですよねぇ。
だれか馬鹿でも分かるように教えてください。
side???
「やっべぇーばれたんだけど!?」
「それな!」
「いや、お前ら口調乱れとるぞ」
そこには、豪華な一室。
高級レストランの一角だ。
A5の肉をナイフで切りながら口に運ぶ。
そして、ワイングラスに手を伸ばす。
「うぉっほん……まぁ、それは分かってたことだろう?そもそも余の式神すら見つかったし、消された。なら、いくら優秀なやつでも、仕方ない」
「ああ、それは分かって入るが、問題はそこじゃない」
「そうだ。最大の問題は、転移を使ったと言うことだ」
そう、レインが監視に気付いたことも、監視者に注意勧告と称してボコボコにしたことも問題ではない。いや、レインからすれば、全く強くないゴミみたいな実力だったとしても、陰陽師全体から見れば、上位に入る実力者であるため、レインの実力が想定以上ってことでもあり、それはそれで、問題なのだが。
最大の問題は実力以前のことだった。
長老たちの頭を悩ませているのは、レインが使った魔法。『転移』のことだ。
陰陽師では、転移の術はない。
転移と言うものがあれば、要人の暗殺などし放題だ。
フィクションでよくある異世界でも、『転移魔法』と言うのは、珍しい。希少な魔法だ。
だからこそ、転移が出来ないよう結界を張ったりする。のだが、日本で、しかも陰陽術で転移がないのだから、その対処の仕方ももちろんない。転移を使える者がいると言うことは、追いつめたとしても逃げられ、どんな場所にも出現出来る。
「本当どうしよう?」
「だから口調……まぁいいか。次の問題としては、『転移』に制限がないかどうか、だが……」
「ああ、だが、一度使えるだけでも、我らにとっては脅威だ」
「それで、転移のことは、ひとまず置いておこう」
「ん?なぜだ?」
「報告のことだ報告の……監視をやめろという」
レイン。名前からして外国人だが、日本に来るまでの足取りが全く分からない。だから、監視以外にも、レインの正体と言うものを権力を駆使して調べていた。
正体不明の外国人。それも、自分たちの監視にすら気が付く実力者。もし、敵だとしたら、厄介と言う言葉では言い表せない程の相手だ。と言うより、長老たちからすれば、敵対したくない、と言うのが、本音だ。
だから、本人から「監視するな」と言われれば、やめるべき。なのだが、放置することも出来ない。
「それなんだが、自分たちは『観光に来た』と言っていたらしい。ってことは、我らの敵になることはないのではないか?」
「完全にそう言い切れないから、怖いのではないか」
「ああ、観光と言うことは、それが邪魔されれば今回のようなことが行われるかもしれないのだろう?野放しは危険すぎる」
「では、どうする?……あ、これと、これと、これを追加で」
ちゃっかりベルで呼んでいたウェイターに注文をする。
「まだ食うんか……」
呆れたように言う。
ここで、長老のこと(見た目)を少し話しておこう。
一人は、ぶかぶかのTシャツを着てラフな格好をしている、二十代半ばの男。
一人は、地味目な服装をしているが、きちんと見れば、そのどれもが高級品だと分かる五十代程の男。
一人は、常に眠たそうな目をしており、見るからに高そうな服を着て、指にも指輪を嵌めており、ピアスも室内だと言うのにサングラスをかけている二十代の男。
それに長老と言っているが、老人ではない。
そもそもが、長老と言うのは、この三人が言い始め広がっていったのであり、本来の名、正式名称と言うのは、『十二天将』と呼ばれる陰陽師の最高峰の者たちだ。
長老と言い始めた由来も「こっちの方が威厳とかあるよね?」「長と言ったら長老じゃね?」的な緩い感じで言い始めたら、なんかしっくりきて、そう言っていたらなぜか定着し始めた、と言うのが現状だ。
「それなら、こういうのはどうだ?」
そこで、提案したのはーー
「いや~よく来てくださいました!私は、完全院虎彦と言います」
遡ること数十分前。
レインがクリスティとデパートで買い物をしている時、黒服の男が現れ、「自分たちについて来てください」と言いだし、レインも面白そうと言うことで、付いていったら黒い車に乗せられ、豪奢な一室に呼ばれ、開口一番のセリフがさっきのだ。
サングラスの男、完全院虎彦、十二天将の一人だ。
もちろん、目の前の人物のこともレインは知っていた。他の十二天将も陰陽師とは関係ない財閥の者たちも。日本において主要人物だと思われる人たちは、レインは把握している。
「ああ、それで、俺らを呼び出したのには、何かあるんだろう?」
肘掛けに肘を付きながら背もたれに深く腰掛け言う。
その時、感じたことのないプレッシャーを感じ、完全院は息を呑む。
だが、完全院の後ろに立っている部下と思われる者は、何も感じておらず、逆に日本において最高権力者の完全院に対して、タメ口に、いかにも自分が上位者だとでもいうレインの言葉遣いに怒りの声を上げる。
「この方を誰だと思っている!本来なら貴様のようッッッ!?」
その次の言葉を発することが出来ないでいた。
なぜならクリスティがレインに不敬を働いた者に対して何もしない、なんてことはないからだ。
心臓が凍り付くような冷たい殺気が、男の口を無理矢理に閉じさせていた。完全院虎彦も同じように感じ、膝の上でぐっと握っている拳が震えているのを感じながら、表情を決して変えないように、本気で頑張っていた。それでも、顔が若干青褪めていたが。
「クリスティ」
レインが名を呼ぶ。それだけで、この一室に充満していた殺気が霧散する。
レインへと頭を下げ、一歩後ろに下がる。
「まぁ、良いではないか。頑張って考えた結果だろうさ。大方、監視をやめろと言ったから、どうにかして俺たちを把握しておきたいが、監視は出来ない。なら、友好的な関係を築こうと、近付いてきたんだろう。そしてあわよくば、仲間に引き込もうとでも思っているんだろうさ」
「ッ……」
考えていた計画を全て完全に知られていたことに驚きを隠しきれない。
「ですが……人間如きがレイン様と対等に口を利くなんて、許されない」
殺気は出ていないが、キッと睨んでいる。
「下等……生物」
「いいんだよ。面白そうじゃないか。それで、用件を言え」
「あ、ああ……」
クリスティに対して、レインは、ククク、と笑いながら楽しそうに答える。
「もう全部言われたが……そう、我々陰陽師は、貴殿に対して有効的な関係を築きたいと思っている」
「だろうな……ってかそれしかないからなぁ」
「そこで、この日本で我らの管轄の県内ならば、最高の便宜を図りたい」
「で?俺に何をさせたい?」
全部分かったうえでレインは聞いている。
にやにやといやらしく笑いながら。
「我ら陰陽師の存在意義として人に仇名す妖怪の類を滅する……のだが、最近非常に多くなってきたのだ。今のままだと、いずれ世間に公となるのも時間の問題かもしれない」
「だからこそ、俺は飽きたんだがな」
「は?……」
「よいよい、続けろ」
「あ、え……はい。続けますが、ある者を我らは追いかけているのですが、見つけられないのです。それと同時にとある『霊装』も奪われました。それが、やつに渡ると、我らでさえ太刀打ちできないのです」
深刻そうな顔で言う。
完全院が言っている、『やつ』と言うのもレインは知っているが、ここでは何も知らない、と言う体で話している。
「それで、俺に殺してほしいと?」
「いえ、一応私も十二天将の席にいますので、基本的に十二天将が相手をします。ですが、もし、私たちが破れるようなことになれば、手を貸してほしいのです」
「まぁいいぞ」
「感謝します」
深く頭を下げ、礼をする。
レインの力をあてにしている、と言うのを隠さず告げている。
レイン相手に、嘘や虚言を付いたとしても、すぐにバレる。すぐにバレなかったとしても、いずれバレるのだから、その時の報復を考えれば、正直に本当のことを言って、信頼を得た方がいい。もし、信頼を得ることが出来なくとも、悪くはならない。だから正直に言った。
そして見事、レインに協力を取り付けることが出来た。
「そこでですが、普段は自由に遊んでいてもらって構いません。力を借りたいときは、連絡したいと思います」
「いいだろう」
レインはそう言い、スマホを出し、机を滑らせて完全院へと渡す。
完全院には他にも狙いがある。
それは、レインが使った『転移』のことだ。ちょうどいいため、ここでその制限などを確かめておこうという魂胆があった。
「んじゃ、俺らはもう行くぞ」
「ええ、今日はありがとうございました。車を出しますが、どうされます?」
「いや、いらんぞ」
「左様で……」
レインが席を立つと、完全院も立ち、腰を曲げ礼をする。
それは、レインとクリスティが部屋を出るまで続いていた。
レインたちが去った後、深く息を吐く。
「はぁーーーーーーー、馬鹿野郎!もし、機嫌を損ねていたらどうする!?」
「す、すみません!」
男は深々と頭を下げる。もはや、土下座に近い。
「お前も分かっただろう!あの少年たちとは、絶対に敵対してはいけない、と」
「はい、本当にすみませんでした。自分もあそこまでの殺気を感じたのは初めてです」
この男も、十二天将に付き添っているだけあって、それだけ実力がある。その彼も、クリスティの殺気の前には、一歩も動くことも喋ることも出来なかった。いや、息すら出来ていなかったのだ。
「殺気で俺の体を縛る……か。本当に化け物だな。それに、あの呼び方。聞いたな?」
「はい、下等種族。そう言われました」
「つまり、人間ではないということだ。妖怪かと思ったが、違うようだ。あれは、俺ら人間という種族を超越した何かだ」
「そんな相手にあんな約束してもよろしいので?」
「ああ、こっちにどんな不利なことだとしても、あの少年らが俺たちに敵対しないなら、それだけで利益となる」
「なるほど……」
完全院、ひいては陰陽師にとって『良いこと』とは、レインが敵とならないことだ。それは、どうやったとしても、回避しないといけない。ならないのだ。
そして、直接相対して、予感が確信へと変わっていた。
あの少年たちは、人間がどうこう出来る存在ではないと。
自分たちも人を超えた存在だと思っているが、そういった『枠』の問題ではない。
人は災害に勝てる。
十二天将は、台風を裂くことも、津波を押し返すことも、出来る。
だが、地球には勝てない。当たり前だ。そんなことが出来るのなら、世界なんて日本に限らず表舞台に堂々と立ち、『支配者』を名乗れるのだから。
完全院はレインのことを地球と同列の類だと考えたわけだ。
「他の者にも伝えろ。今回のことを、会議で話す」
「了解しました」
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