135話 ……消えろ
転移してレインがまずしたことと言えば、挨拶ではない。
攻撃だった。
いや、攻撃とも言えない、自分と戦うにたる実力があるか『試し』をしただけだった。
その『試し』だけで、レイン討伐に来た24の神の内三人が地に落ちていった。
「思ったより少なかったな」
「お、お前が『主』とかいうやつか!?」
レインの『試し』。それは、ただの威圧だ。殺気ですらない、ただの睨みつけとも言える。
レインと目を合わせた瞬間、全身の細胞が泡だった。絶対に相対してはいけない、と。
だが、目下の惨状を見た、それと、必ず殺すと言った手前引くに引けない状況となっていた。
「残り21。そしてここに集まったのは、自分の力に自身のある者のみ、と」
レインは、ふむふむと、頷いているが、レインを殺しに来た神族たちは、すでに戦闘態勢になっている。
真っ先に動いたのは、太陽神だった。
レインの真上に灼熱の炎が現れ、燃やし尽くそうとレインへ向け落ちる。
「『太陽の権能』……と言ってはいるが、ただの火の塊だ」
手を上に向ける。
すると、灼熱の太陽が凍った。
太陽神の持っている権能。『太陽の権能』だが、それは、概念攻撃と言える。しかし、太陽の概念ではない。炎や熱と言った概念だ。
太陽とは、簡単に分かりやすく言えば、ただの火球だ。それの、超高温度ってだけの。
「我の炎を凍らせただと!?」
「たかがその程度の温度で粋がるな……『起源の炎』」
左手に真っ白の炎を出現させ言う。
火の形をしていたが、徐々に白い球体になる。
その白炎の球体がレインの掌から消えた。
「あがっ!?ぐっ!?があっ!?」
太陽神は、顔、胸、右脇腹、左腕、と衝撃を受けた。
超高速で動き回り、太陽神の体を穿ったのだ。
衝撃を受けたところは、風穴があき、レインの手に白炎が戻ったとき、太陽神の風穴から白い炎が噴き出し、全身を包む。
「がああああああ!?熱いっ!?あついあつあついッ!!!!」
「アスラ!?大丈夫か!?」
太陽神ともあろうものが、炎で死にかけている。
そのありえない状況を見、他の神族が動揺する。
その時、太陽神ーーアスラの頭上から水が降り注ぐ。
「クランス!どうだ!?」
「消えないの!この炎!私の水でも消せない!?」
「当たり前だ。この炎は、原初の炎。俺が消さない限り燃え続ける」
「あついぃぃいいいいい!?」
勢いよく、燃え盛っているにも関わらず、中々に燃え尽きない。
というより、全く燃えてもいない。
レインは、パチンッと指を鳴らす。
バッと白炎が消え去ると同時にアスラの姿も消える。
一瞬で燃え尽きたのだ。
「残り20。少しは、楽しませ……っと」
「カッ!」
両手首にリングをはめた浅黒い肌の青年がレインを殴りつける。
「おお、威勢がいいな。だが、それだけだ」
「がふっ!?」
青年の攻撃を片手で弾きながら、カウンターを入れる。
面白いように飛んでいき、地面へと激突した。ちょうど壊れていないビルの屋上へぶつかり、各階を砕きながら吹き飛ぶ。
「どけ!俺がやる!」
そう言い、出てきたのは、両手に炎を纏わせた、大男だった。
ガツンッガツンッと拳をぶつけ威嚇する。
「オラァ!」
見かけによらず、素早い。
一瞬で距離を詰め、炎の拳でレインの顔面を撃ち抜く。
それと同時に、レインの後ろに人影が現れる。
「神と名乗るなら概念を使え」
「ぐふっ……なん、で……?」
大男の拳をいなし、背後に出現した女を貫手で腹部を貫く。
「転移するなら、もっと静かにしろ」
レインは、攻撃を加えると同時にアドバイスも送っている。
きちんと聞き、直してくれたらいいなぁ、程度の思いだが。
「開け!百石箱!!」
レインの真下にミミックのような牙の付いた箱が現れ、レインを喰らう。
「ふむ、真っ暗だ」
まんまと喰われたレインは、呟く。
取り敢えずで、殴る。
だが、ぽよんとした感触と共に跳ね返される。力不足のようだ。
『公平の権能』の力はもちろん働いている。
今回のように複数人場合どうなるのか。
全員のステータスの合計となるのか……違う。
全員のステータスの平均となるのか……違う。
答えは、その中で一番高い者と同一のものとなる。
それは、つまりこの特殊魔法を破るには、少しばかり力が足りないようだ。
「はぁ、仕方ない。解放……展開、発射」
レインの周りに白い宝玉のような物が現れ、一斉に飛ぶ。
それも、一点集中した攻撃だ。
ピキッパキッとヒビが入り徐々に拡がる。
「そいっ」
留めとばかりに殴る。
「ば、馬鹿な!?あり得ん!!!」
神族の面々が驚愕の表情を浮かべる。
この場にいる神の全員がこの魔法に賭けていたようだ。
『百石箱』と言うのは、異空間に閉じ込める類の魔法だ。
そこから出るには、発動者の許可がなければならず、それ以外には、出ることが出来ない。それに加えて、中に閉じ込められると、能力が全て100分の1となる。
神の強力な魔法や権能、概念攻撃と言った強力な攻撃も100分の1。
それは、異空間から絶対に出ることが出来ないと言うことだ。
だからこそ、神たちは、百石箱にレインを閉じ込めたら勝ちだと思っていた。
「なんだその顔は?もしかしてその程度の魔法でこの俺を倒そうと、殺そうと、封印しようとしたのか?」
レインは、怒っている。
これだけ、戦いに自身のある神が集まり、作戦を練り、やってきたと言うのに、まさか本当にあれだけの攻撃でレインをどうにかしようとしていたことに、レインは不快感を露わにする。
そもそもレインは、百石箱と言う異次元に飛ばす類の魔法だったとしても、転移すればいいだけの話。
もちろん普通の者なら転移しようにも狂わせられ出来ないが、レインなら出来る。簡単に、息をするように。
「ふざけるな。これだけ楽しみ待ってみれば、つまらんやつら、つまらん攻撃につまらん策。もうよい、消えろ」
レインは力を使う。
すると、神族の姿が消える。そこには、何もいなかった。文字通り全てが消え去ったのだ。
レインは、万物の創造主で、全生命の父でもある。
つまるところ、創造も出来、同時に破壊も出来る。
そして、この能力を簡単に説明すると、コンピューターに似ている。
『世界』がファイル。『データ』が人間などの生命だ。そして、レインが、それを操作する者と言ったところだ。ファイルもデータも消去することに何の苦労が努力がいるだろうか?いや、要らない。何の労力もなしに出来る。
万物の創造主、全知全能を地で行く、それがレインだ。
だからこそ、全世界を同時に、一瞬に、消すこともなんの労力も伴わない。
マウスをクリックするように、液晶をタッチするように、その程度の感覚で出来る。
「ちっくそつまらん」
「……レイン様」
転移し戻ったレインに、アシュエルがどう声をかけようか迷う。
口を開いては閉じ、また開き閉じる。言葉に出来なかった。
「どうした?」
「主人……どうかしましたか?」
「ふん、もういい、さっさと消して戻るぞ」
機嫌が悪そうに言う。
この後、怒りを発散するために、五帝やアシュエルにヨルダウトを交え、ボコボコされたのだった。
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