表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超越神の世界旅行  作者: sena
第6章 世界侵略編
124/266

121話 悪夢の楽園

ポイントと同時にブクマもしてくれると嬉しいです!

 

 ショータスは、魔力を高め、槍に纏わせる。

 一息でレインへ近づき、突きを連続で放つ。


「はあああああ!!!!」


 それに対して、レインは人差し指で()()受け止める。

 その様は、弟子に訓練している師匠のようだ。


 つまり、ショータスは完全に遊ばれている。


「クソクソクソッッ!!!」


 何度も何度も突き、大きく薙ぎ払う。


「これでもダメとか、化け物かッ!」

「突くんなら矛先に魔力を集中されろよ」


 あまりに(つたな)い魔力操作に、ついアドバイスをしてしまった。

 すると、矛先に螺旋を描くように魔力が収縮していく。


 アシュエルとかいう、あまりにも規格外の天才がいるため、実感がないかもしれないが、ショータスも天才だ。僅か17歳で、騎士の(おさ)を任せられるのは、努力だけでは無理だろう。才能があり、そして、努力しまくって超一流の域に達したのだ。


 だが、レインと戦うには明らかに下積みが足りない。


 螺旋を描いている様は、ドリルのようだ。


「うぉおおおおお!!!!」


 レインは同じように受け止めるが、僅かに()()()()()()()


「おお!」


 これには、レインも感嘆の声を上げる。

 一つのアドバイスで物にしたようだ。

 だけど、それでも、


「はあ!?」


 レインが少し軽く押すと、ぐぐぐっと押され始める。

 咄嗟に腕を引き、再度突く。


「また同じか……お?」


 今度の突きは、レインの顔面に届く寸前に右に曲がった。

 続く突きは、左に。そして、上、下。様々な方向に槍先が曲がる。


「おお、器用なことするなぁ」

「まだだ!」


 そこへ、先の螺旋突きを放つ。

 ただ今回は少し違う。魔力の収縮ではなく、風を纏っている。

 凄まじい風が槍先に集まり、小さな竜巻が出来上がる。


「はっ!」


 グッと踏み込み、腕を伸ばす。

 レインの眼前に竜巻が迫りくる。


 レインは魔力を指先に集中させ、放つ。ただの魔力弾だ。


「は……?」


 バシュンッと音が鳴り、竜巻が消え去り、魔力弾はそのままショータスの顔を横切る。

 ピシッと頬が裂け、血がたらりと垂れる。


「今回のはまぁまぁよかったぞ」

「どんだけだよ!?」


 もうここまで来て、レインに勝つ、倒す、と言ったことは思っていない。

 明らかに実力が違うと実感したからだ。

 巨大な壁にぶち当たり、自分の全力を出してなお壊せない。そんな壁をレインに見てしまった。


 自然と身が竦み始める。

 全力の一撃ですら、レインをその場から動かすことが出来なかったのだから。


「まだまだ、やれるだろう?」

「くっ……!」


 レインは剣を創り出し、ぶらんと脱力する。

 今度は、自分の番と、レインから攻撃する。


 タッタと近づき斬る。


「ぐっ!?」

「それっと」


 槍を縦に構え受け止めようとするが、あまりの威力に吹き飛ばされる。


(早く態勢を……なに!?)


 まっすぐ、壁に向けて吹き飛んでいくショータスは、空中で態勢を立て直そうとするが、後ろから気配がし、咄嗟に槍で受け止めようとする。


 その判断は、正しかった。

 吹き飛ばされるショータスよりも早く、レインは、回り込み、またもや一閃。


 咄嗟に受けたが槍を離さないようにするので精いっぱいだ。

 腕が捥げるかのような衝撃と痛みを感じ、顔を顰める。


「ほらっ」


 腕が跳ね上げられ、がら空きの腹に蹴りが突き刺さる。


「がはっ」


 吐血し、吹き飛ぶ。

 地面に線を引きながら飛ばされ、ゴロゴロと転がる。


「がっがはっごほっ……!(まずいっ)」


 レインの剣を受けた腕は衝撃で骨が折れ、蹴りを受けた腹は、ボコッと凹み、内臓が破裂した。

 辛うじて生きているのは、魔槍により、回復の恩恵を受けているからに過ぎない。もし、途絶えれば、そこで絶命するだろう。


 なんとか、腕を付き、体を起こそうとする。だが、血を吐くだけで全く上がらない。

 そして、下半身に力が入らない。


(クソいてぇ……!ぐぅ、左腕も使いもんにならねぇな、クソがっ!)


 痛みに呻きながら、内心で毒づく。

 なんとか腕に力を入れることくらいは回復したが、まだ動かせない。

 そんなショータスに向けて、レインは歩みを進める。

 恐怖心を煽るように、ゆっくりと。


 それを、睨みつけることしか出来ない。

 だが、その目には、戦意以外にも恐怖がチラついているのをレインは感じ取っていた。


「ごほっ……動けっ!動けぇ!」


 声を張り上げ、立とうとする。

 このまま動けなければ、死ぬ。そう直感した。レインの眼を見て。


 レインの眼には、愉悦、痛みを感じ恐怖しているショータスを見て心底楽しんでいる。それが感じられた。だからこそ、痛みを我慢し、無様でも体を引きずりながらでも立ち上がろうとしている。


 ショータスとレインの距離が5mになったところで、レインは立ち止まる。

 そして、足で地面を(つつ)く。

 すると、ショータスの顔面の土が盛り上がり、穿つ。


「うがあっ!!!!」


 放射線を描き、また吹き飛ぶ。

 鼻が潰れ、前歯が折れる。


「あが……が……があ!はぁなあ!?」


 数メートル吹き飛ばされたショータスに近づいていく。

 もうすでに、観客は静まり返っている。

 あまりにも惨い悲惨な決闘とも呼べない、一方的な暴力に顔を青褪めさせている。

 席を立ち、決闘から目を背け、出ようとしているが、席から腰が上がらない。誰一人として、その場から立つことが出来ないでいた。

 もちろんレインの仕業だ。きっちりと、これから起こることを見てもらおう、と思って()()()からくる、レインの仕業だ。


「さて、もう終わらせようか。『悪夢の楽園(ナイトメアパラダイス)』」


 レインはショータスへ魔法をかける。

 痛みに呻いていたショータスが急に大人しくなる。意識を失ったからだ。


『悪夢の楽園』文字通り、悪夢を見せる魔法だが、普通の悪夢(ナイトメア)と違うのは、その人物の一番の幸福を見せることにある。

 ショータスの場合は、シェダルハーダと付き合い、結婚し、幸せな家庭を築く。そんな、状況を見せられる。そして、幸せの絶頂で、その最愛の人物に裏切られる。その絶望は計り知れないだろう。

 だが、まだ終わらない。

 一回だけではない。何度も何度も何度も……計一万回見せられる。つまり、一万回の人生を歩み、一万回殺される。

 幸福な状況から最愛の人に殺され()()()。しかも、いやらしいことに、一度たりとも同じ殺され方をしない。剣で殺されるにしても、心臓を一突き、首を落とされる、細切れにされる、など、同じ武器を使われたとて、同じ殺され方はしないのだ。指先から斬り刻まれるなど、拷問じみた殺され方をされることもある。


 突然だが、皆考えて欲しい。

 夢とはどんなかんじだろうか。

 今聞いているのは、『時間』のことだ。夢の中だと、数ヵ月経っているといったことがあるだろう?それって、実際に寝ているのは、6時間から9時間程。そして、その中で夢を見ている時間はさらに短いだろう。つまり、夢の中の時間という概念は曖昧なのだ。


 そして、ほんの短い時間の中でショータスは変わった。その時間とは僅か5()()


 一秒経つと、髪の毛先が少し白くなった。


 二秒経つと、七割程色素が落ち、白く、少し髪が抜け落ちた。


 三秒経つと、完全に色素が落ち、真っ白に、髪が全部抜け落ち。


 四秒経つと、肌が乾燥したように渇き、腕や足は少し細くなった。


 五秒経つと、もう老人のようにしか見えなくなった。


 たった5秒、されど5秒。

 現実時間では5秒だが、ショータスからすれば、いっそ殺してくれとでも願ってしまう、そんな膨大な時間を体験していた。

 傍から見れば、若者が老人に変わる様がよく分かったことだろう。


 5秒経った頃、現実に戻ってきたショータスは、変わり果て、もはや若い頃の見る影は残っていない。

 目の焦点は合わず、うわ言のように、「殺してくれ」と呟いている。

 口の端からは涎を垂らし、痙攣している。すでに、老人と言うか、死人にも見える。


「精神も壊れたか」


 つまらない物を見る表情でショータスを見るレインの眼は冷たい。

 レインからすれば、()()()人生一万回。それだけだ。


「ああ、ああ、あああ」と呟くだけになったショータスは実質死んだも同然だろう。


「セバス」

「はっ」


 シュタッとレインの後ろに現れる。


「こいつの記憶を覗いたが、王子なんだって?」

「そうです。私が制圧しましたこの国の王子……であり、騎士団長です」

「だからか、俺に対しても上からで物を言ったのは」


 王子とは、普段は敬語を使わない。なぜなら自分が一番に偉いからだ。逆に下の者に敬語を使えば舐められること間違いなしだ。

 だから、仕方ない。なわけがない。意外とレインはそのことに腹を立てていた、と言うことだろう。


「そんなことは、どうでもいい。それより、この世界も飽きた。早く滅ぼし次に行くぞ」

「了解しました」


 レインに一礼し、天に手を向ける。


「取り敢えずは、ここにいる観客を殺しましょうか」










面白い!

続きを読みたい!

と思ってくれた方評価して貰えると嬉しく思います!

☆☆☆☆☆を貰えるととても喜びます!お願いします!!!

そして、評価してくださった方ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ