120話 シェダルハーダさんを解放しろ!!!
やっぱ戦いのシーン楽しいですね
sideレイン
王城の一室に戻ったレインは、早速白狐のことをどうするか決めようとした。
狐のことは狐に任せる。
というわけで、九華第四席の雪那に任せることにした。
「ってなわけで、召喚っと」
転移陣を出し、召喚する。
現れたのは、明るめの紫色の着物を着た狐耳の女性だ。
尾は九本。九尾だが、それは、戦いに使うため尾が多い方がいいだろう、ってことで生やしているだけだ。
「あれ?主様ではないですかぁ。どうされたんですぅ?」
間延びした声で話しかける。
「ちょっとな、こいつの面倒を見てくれ」
「こいつ……?おぉ、天狐なんて珍しいですねぇ。それとお久しぶりですぅ、輝夜さん」
「お久しぶりです」
着物美女の微笑み。
お互い似合っているし、万人が魅了されるほどの美貌を持っているため、その笑みの破壊力と言えば、凄まじい。
「なんだ貴様は!」
「口が悪いですねぇ」
「そうなんだよ。神使だったらしいが、主殺しでな。面白そうだから連れて来た」
「もぅ、また、変なのッれて来たのですかぁ?」
「ああ、輝夜と同じ場所に入っててな」
「あらぁ」
「早く解放しろ!!!」
「うるさいですねぇ」
どこからか扇子を取り出し、一振り。
白狐が突然地面に平伏す。
雪那がやったことは、単純だ。重力で上から押さえつけただけ。
「ぐぁぁああ……うぐぅ」
「静かにしてくださいねぇ」
「では、頼んだぞ」
「はいぃ、任されましたぁ」
扇子を再度振り、転移陣を出し、その中に消えていった。
それと同時に、扉がバンッと勢いよく開く。
無礼にも入ってきた人物は、赤髪の少年だった。
レインの元までズカズカと歩き、目前でビシッと指を指し口を開く。
「お前がレインか!俺と決闘しろ!」
レインからは何もしていないのに、ここまで敵意を向けて来た人物はどれだけいただろうか。
「なぜだ?」
「お前がシェダルハーダさんを奴隷としているからだ!」
「ん?」
何か話が食い違っている気がしたレインは首を傾げる。
シェダルハーダを奴隷。あながち間違っていないような気もしないでもないが。
「おい、どういうことだ、シルよ」
赤髪の男の後ろに目をやり、話しかける。
今まさに入ってきたところだった。
困ったような、焦ったような表情を浮かべながら言い淀んでいるシェダルハーダは、少し迷いながらも話し始めた。
「ええ、と。我がこやつの危機を助けたら懐かれて、な?」
今のシェダルハーダの姿は、力も元に戻り、姿まで戻っている。
身長は165cm程。胸もとても大きい。ロりっ子の姿は色々抑えられた状態だったが、力も戻り、妖艶美女の姿に戻った今のシェダルハーダは、周囲を魅了する美女だろう。少年の一人二人、一目惚れしてしまうのも無理はない。
「それでか……大方俺が、主だとかなんとか言ったんだろう?」
「そう!まさにそうなのじゃ!さすがは我が旦那様じゃ!」
「旦那じゃないがな」
「だから、シェダルハーダさんをかけて俺と決闘しろ!」
「いいぞ」
「へ……?」
あっさりOKされるとは、思っていなかったのかポカンとした表情を浮かべたが、すぐに気を取り直し、咳払いを一つ。
「よし!なら決闘場に行くぞ!」
そう言われレインを残し、一人で部屋を出ていく。
「なんか、凄い妄想する人でしたね」
「なぁ輝夜。あいつ馬鹿じゃね?それにシルも何やってんだよ」
「仕方ないのじゃ!我の力も戻って確かめている時、偶々本当に偶然あ奴がいてな?」
上目遣いで瞳をうるうるとさせながら言ってくる。
普通の人なら、それだけで、許してしまうだろう。だが、レインは普通じゃない。
「あうぅ」
「しっかりしろ」
ぺしっとデコピンを喰らわせる。
額を押さえ蹲る。
「セバス」
「どうぞ」
レインがセバスの名を呼ぶと分かっていたかのように、傍に控え、お茶を注ぐ。
カップに口をつけ飲む。
「ふぅ、美味しいな」
「お口にあって良かったです。初めてお出しする茶葉でしたので」
「それより、行かないでいいんですか?」
「あ?」
「決闘ですよ、決闘。さっき言ってたじゃないですか」
「ああ、そう言えば、ん?シルはどこ行った?」
シェダルハーダの姿が見えないことに、気付いたレインは、辺りを見渡す。
「もう先に行きましたよ?あの少年を追って」
「ええーーーっってことは、決闘……しなきゃいけんのかめんどくせぇ」
重い腰を上げたレインは、決闘場へと向かっていった。
登場ゲートをくぐった先に待っていたのは、赤髪の男だった。
しかし、二人だけではない。
観客席にはびっしりと人で埋め尽くされている。
「観客は俺が呼んだ!負けた時に言い訳が出来ないようにな!」
ドヤ顔でそう言い放った。
そのことに若干レインは引いた様子で言った。
「お前が負けた時はどうするんだ?」
「そんなことはない!……が、もし俺が負けたら、お前の奴隷になってやる!」
「いらんわ」
男の奴隷などいらない。
しかも、生意気な奴隷などなお要らない。
その時会場が沸いた。
赤髪の男ーーどうやら、この国の騎士団長らしい。
それで、この人気。
だが、人気で言えばレインも負けていない、と言うか会場の女性はほとんどレインに見惚れている。
「戦闘不能か降参と言えばそこで終わる!」
「それでいいぞ。んじゃ、開始の合図は……セバス」
レインがセバスを呼ぶと、観客席から跳び上がり、レインと赤髪の男の間に着地した。
「それでは、私が開始の合図を……両者ともよろしいですか?」
「俺はいいぞ」
「俺も大丈夫だ!」
「それで…………決闘開始!!!」
セバスは手を振り上げ、下ろす。セバスは、下ろすと同時に、バックステップで壁際まで下がる。
それと同時に、赤髪の男は、レインに肉薄する。
レインに近づきながら、空間から剣を取り出す。
それを素手で受け止めながら、レインは聞く。
「お前の名は?」
「俺の名は、ショータスだ!お前を倒すものだ!」
「ショタ?確かに子供だが、名前にまで表さなくても……」
「ショタじゃない!ショータスだ!」
ショータスは、17歳。恋愛に興味があるお年頃だ。
そこへ綺麗なお姉さんが現れ、ピンチを助けられれば、惚れるのも仕方ないだろう。
だけど、まさか、即突撃、決闘まで持ち出すとは、シェダルハーダも思っていなかった。
地面スレスレまで剣を下ろし、地を舐めるように這わせる。
地面を掠りながらレインへと斬り上げる。
だが、斬り上げる瞬間レインは、前に進み剣の柄を足で押さえる。
「ぐっ……」
「なんで、剣を使うんだ?槍を使え槍を」
「なに?」
ビクッとショータスの肩が跳ねる。
確かに一流の剣技を持っている。だが、間合いの取り方、突きを放とうとして途中で止めたりなど、普段長物を武器に使っている癖があった。
騎士、と言うから剣を使ったのだろうが、レインは侮辱を受けたに等しい。
圧倒的格下に、本気(本来の武器)を出す必要もないと思われていた、と言うことなのだから。
「本気をださんなら……」
「ぐあっ……!」
押さえていた足を蹴り上げる。
レインの足が跳ね、ショータスの顎を穿つ。
顎を蹴り上げられたショータスは、大きく放射線を描きながら場内の端まで吹き飛ばされる。
「ったく、最初から本気で来いっつの」
ため息を吐きながら頭を振る。
砂煙が巻き上がっている中から、人影が立ち上がる。
「くそっふらふらする……っ。しかもばれていたとは、さすがは、シェダルハーダさんの主と言うだけはあるか」
ぶつぶつ、と呟きながら立ち上がる。
だが、足元が覚束ないのかふらふらとしている。
そして、剣を消し、槍を取り出す。
燃え盛る炎のような色の槍だ。さながら魔槍と言ったところだろう。
「すぅぅーーーーーーーーーーーー」
大きく息を吸い、吐き出す。
足を開き、槍に左手を添えながら構える。
ぐっと足に力を入れ、一息に駆け出す。
砂煙を裂きながら弾丸のようにレインへ向かうショータス。
「お?おお、やっと本気になったか」
「おおおおおおおおおおおお!!!!!」
紅い閃光となったショータスは、空を切りながら、レインへ突撃する。
「はああああ!!!」
「でも、それでも足りんぞ」
突進力をそのまま槍に乗せ、突きを放つ。
レインの顔面に伸びる矛先に、軽く人差し指を当て、受け止める。
ぶわっと風が巻き起こり、観客席にまで届く。
先の一撃がどれだけの威力を持つのか、風圧を感じた観客が息を呑む。
と、同時に、その威力を指先一つで止めたレインへ、畏怖と恐怖と羨望、嫉妬の視線が突き刺さる。
ショータスは、間合いを取り、再度攻撃の態勢へと移る。
「これからが本気だ!!!」
面白い!
続きを読みたい!
と思ってくれた方評価して貰えると嬉しく思います!
☆☆☆☆☆を貰えるととても喜びます!お願いします!!!
そして、評価してくださった方ありがとうございます!