111話 アストレアと四狂聖
sideアストレア
「どうしましょうか?」
アストレアは、城壁を抜け、レインたちと別れた後、まっすぐ歩いていた。
壁を抜けて数分しか経っていないのに、あちこちで戦闘の音がしている。
「本当に珍しい世界ですね。王が一人しかいないとは」
世界には、何百何千時には何億もの人口がいる。
それだけの多くの人がいるということは、それだけ様々な思想があるということでもある。つまり、纏めるのは容易ではない。
それもそうだろう。いろんな考え、また、ステータスと言うものがあるため、強さや有能さも違う。みんな平等とはいかないだろう。
だが、狂帝はそれを力で纏め上げた。
つまるところ、恐怖だ。
圧倒的な力を見せつけ、歯向かった者には見せしめの意味を込め、残虐な殺し方を。
「だけど、それで統治出来ているんですから、本当に」
クスクス、と笑いながら歩く。
すると、十本の火柱が上がった。
「アドニス……仕事が早いですね」
アストレアらは、レインを狂帝と戦わせるためにだけに、今動いている。
「これで、ほとんどの『騎士』は沈みましたか。それと、強い気配は」
気配を探っていると、銀の鎧を着た男がアストレアの目の前に現れた。
「貴様か、王の庭を荒らしているのは」
「ええ、この世界には消えてもらいますので……私の役割は、ただ主を楽しませるために」
「消えてもらう……か。そんなことをさせるとでも?」
殺気を放ちながら剣を抜く。
「我は四狂ーー」
「あ、自己紹介はいいです。どうせすぐに殺しますので」
少しも表情を変えずにそう告げる。
「そうか。なら、後悔しながら死んでいけ!『起動』!」
全身から銀の光を放出する。
そして、光を裂きながらアストレアに突撃する。
「ぐがっ……!?」
銀騎士の剣の間合いあと一歩のところで、突如吹き飛ばされる。
空中で態勢を整え着地する。
「四狂聖。確か、騎士の上官って感じですか」
一人呟きながら、アストレアは考え込む。
再度、銀騎士が突撃する。
しかし、今度は、斬撃を飛ばしながら、近付く。
「それに、あの場所……ですね」
アストレアは完全に上の空で、周りをきょろきょろしている。
飛んでくる斬撃は、アストレアの無意識に張っている剣気の結界に当たり相殺される。
だが、斬撃は目くらましで、銀騎士はアストレアの後ろに回り込んでいた。
「死ね!」
掛け声とともに、真っ二つにするべく振り下ろす。
またもや同じように、アストレアに届く前にはじき出される。
「おや?まだ生きていたのですか?」
「なんだと!?」
まるで、全く気にしていないような言葉に、銀騎士は怒りに顔を赤く染める。
「それだけ斬られても生きているとは、化け物ですか!」
表情を一切変えずに、驚いた風の演技をする。
アストレアは、驚いているというより、めんどくさい、まだ気付かない雑魚といった感じだが。
銀騎士が何に気付いていないのか。それは、アストレアに斬られたことに、だ。
「さっきから何を言っている!!!」
アストレアの言っている意味が分からないため、声を荒げ剣を構えようとする。
だが、両腕の感覚がなかった。
「なに?……なんで、腕がぁ!?」
「腕だけじゃない。そろそろ死んでください」
無表情を消し、ごみを見るような視線で銀騎士を見ながら告げる。
すると、銀騎士の全身に斬り痕が現れ、濃くなる。次の瞬間、バラバラに斬り裂かれた。
「これだけ弱いと、斬られたことにも気付かないとは……」
どうでもよさげに言いながら、歩みを進める。
銀騎士を斬ったのは、最初に突撃された時だ。剣気の結界に無防備に突撃したのだ。全身を斬り刻まされても仕方ないと言うものだろう。
細かく肉片まで斬られているため、それも物凄く速い斬撃で。あまりに速すぎた斬撃のため、斬ったのに斬れていない状況が出来上がった。高い自然治癒のおかげで、繋がりかけていたのだ。
だがそれも、最後の銀騎士の攻撃で、さらに細かく斬り刻まれた。斬って斬って斬り刻まれて。斬撃が重なり、ズレたからこそ、ああやってバラバラになった。
「それじゃあ、行きますか。……ってまたですか」
ため息を吐きながら、足を止める。
「次は誰です?」
「キャハハハハ!!俺か!?俺はなバルフェルクが一人、序列三位、ギリストール・バイだ!」
「また、おかしな人が来ましたね」
騎士剣を抜き、起動する。
現れた武器は、刃渡り50cm程で、弧を描くように反りが深い。それが、二本。
「二刀流ってことですか」
「キャハハハハ!?そうだぜ!あいつは、真面目だからな!だから負けた!?」
肉塊と成り果てた銀騎士を指さしながら笑う。
一通り笑ったのか、息を付き、深呼吸をする。
「ふぅー。キャハハハ!!!行くぞぉ?」
また笑い出し、ギリストールの姿が消えた。
すると、アストレアの目前で火花が散る。
「キャハハハハ!かてぇかてぇなおい!?」
「その程度ではかすりもしませんよ」
「知ってる!知ってるさ!?」
再度姿が消える。
今度は、アストレアの周り四方八方から火花が散る。
そして、ついに、アストレアの服の切れ端が数ミリ斬れた。
「お、やりますね。どんなスキルです?」
「教えねぇよ?教えねぇ!?」
「まぁ別にいいですけど。さて、そろそろ反撃に移りますか。銀の人は、弱すぎたので……あなたは楽しませてくださいよ」
ニヤッと笑い、挑発するように言う。
それに応えるように、ギリストールが笑い声を上げる。
アストレアが初めて剣を抜いた。
面白い!
続きを読みたい!
と思ってくれた方評価して貰えると嬉しく思います!
☆☆☆☆☆を貰えるととても喜びます!お願いします!!!
そして、評価してくださった方ありがとうございます!