9話
「ゼロ様ぁ!」
アシュリーが真名で呼んできた。
「こら、今回はれいんだよ。レイン・ヴァン・ウィルムンド だよ」
何時もに比べて、レインの口調が優しくなっている。膝の上に乗っているため体温が伝わりあったかい。頭を撫でなでると、目を細めながら気持ち良さそうにしている。
「だって、ゼロ様の方がいいんだもんっ」
ぷくぅっと頬を膨らませて言ってくる。俺に、こんなふうに言ってくるのは、アシュリーくらいだし他のものには許可もしていない。
というか、タメ語で話したりすれば他のメンバーに殺されるだろう。
「仕方ないなぁ。2人の時だけだぞ」
「やったぁーーーー!」
このくらいで、喜んでくれるなら嬉しいものだ。
「今度は何するの?」
「今度?リムルス王国って国が、武器とか食料買い込んでるみたいだから戦争でも始めるみたいでさ、裏で動こうかと思ってる」
「敵?」
据わった目をしながら、殺気を漲らせ言った。
頭をぽんぽんしながら諫める。
「ダメでしょ。五帝にはこの国に向けて攻撃されない限り、自分たちから手を出すのはダメ」
「ええー、ゼロ様の敵はアリーが殺すの!」
確か前にも似たようなこと言って、国を3個ほど、壊していたな。
前皇帝をしていた時に、武力では絶対に勝てないと知っているから、しょうもない嫌がらせをされていた。そのことを知ったアシュリーが激怒して、その国、ひいては加担していた国まとめて滅ぼしてしまった。余波でもかなりの人数が死んだため生き返らせたりしようかなって思ったけど、グルだった奴らもかなりいたためやらなかった。敵だとわかればまた殺しにいきそうだしね。
「この国や俺に対してのの攻撃は許可する。いいね?暴走したらお仕置きだからね?」
「お仕置き!!」
目を輝かせている変態。自分のやりたいことを貫けるだけの力を持っているため、力を持たないいや、持っていたとしても抗う術がない。一部を除いて。
「わかってるならいい。それより、どっかいきたいとこあるか?」
「行きたいところ?デートっ!!」
「ま、そうだな。どこでもいいぞ。日本では、全く構ってあげれなかったから」
「ん〜とね!迷宮がいい!そのかわりステータスはオール5万で!」
オール5万と言うと、レベル200〜300くらいのステータスだ。
「それで何処の迷宮に行く?」
「あそこっ!『妖華の魔宮』
妖華の魔宮とは、SSSランク冒険者がクリアしようと躍起になっている。クリアすれば、名誉を与えられ、爵位も与えられる。場所は、ここ。ウィルムンド王国の近くにある。そのため、爵位は、王族だし、名誉も別にいらないけど、強さ的にはちょうどいいから、縛って遊ぶには丁度いいだろう。
「いいよ。いつ行くかだけど、一週間後にしようか」
「わぁーい!楽しみにしてる!!」
★★★★★
sideどこかの国
「くそっ!王国も帝国も法国もっ!人材が揃っているっ!」
「そうだ!この国最大の危機じゃないかっ」
口々に文句を垂れ流しながら、ついにはお互いを責め始めた。
「貴様ら軍のレベルが低いせいだ!」
「それは、満足に訓練できないからだ!お前らが無駄にダンジョンを攻略しろって言うから強行させたときに死者が想像以上に出て、士気も低く、挙げ句の果てには!お前らが!金を無駄に使って国庫を減らし、給料が減っているせいでやる気のない兵がいるんだ!」
「っっっ!?なんだと!我らが悪いと言うのかっ!?」
「そうだっ!この国を思って改革をしているのだ!!!」
ここに王がいれば変わったかもしれないが、残念ながらこの場にはいなかった。
唾を飛ばしながら罵り合いとどまるところを知らない。
「それでどうするのだ?我が国には、十三使徒や法国の暗部、ウィルムンド王国にも最近暴龍と呼ばれる騎士団ができているようではないか」
「確かに、個の強さでも敵わず、数も帝国に敵わない。このままでは負けるぞ?」
その一言で、静まり返る。
「…………勇者」
「なに?」
「勇者を召喚してみないか?」
「勇者だと?そう言えば、帝国も勇者召喚しようとしていると言う噂があったな」
「だが、我らには召喚の仕方がわからないぞ?」
再度静まり返る。その時、財務大臣の1人が、
「召喚のスキルを持っているやつを知っている」
「なに?……だが、勇者とは別の世界から呼び寄せるのだろう?ただのスキルで呼べるものなのか?」
「わからん。だがやるしかないだろう!足りない魔力は、数百人奴隷を消費すればなんよかなるはずだ!」
「確かに、それしかないならやるべきだ!して、その者は誰だ?」
「公爵の1人娘だ」