104話 アシュエルVSセルビス 後
魔法を完全に封じられたセルビスは、崩剣星砕きを構える。
共に同時に地を蹴る。
手数は二刀のアシュエルが圧倒的に多いが、一撃一撃の威力はセルビスが高い。それでも、セルビスは一回攻撃し二回防御することで手数の少なさをカバーしている。
「『空逆』」
空気を裂き、セルビスの剣がアシュエルの首に向かう。
その時、暮桜を鞘に納める。
首に届く瞬間に星砕きが大きく弾かれる。
「『解放』」
神刀の抑えていた神気を解放する。
弾かれ態勢が崩れているところに、神速の抜刀術を放つ。本来の切れ味を取り戻した暮桜は、セルビスの体を容易に斬り裂く。
「くっ……!」
「認識ずらされるのめんどくさい!」
セルビスの左腕を斬り飛ばす。
超再生のスキルで、最初受けた傷もろともすぐに治っている。
大量の神気を放出している暮桜は、神々しく輝いている。今回は、『神化』を使うつもりはないが、せめて、刀の能力は使うつもりだ。
「こっちで斬りつければよかったかな」
緋姫には、再生無効の効果がある。どんな傷を回復する手段や魔法があったとしても、緋姫の前では無力だ。対抗するには、ヨルダウトのように同レベルの力で対抗するしかない。
「はああああああ!!!!」
今までの人生で一番の大声を上げ、魔力を高めるセルビス。
人生で一度もこれ程圧倒されたことはなく、苦戦したこともなかった。
そのセルビスが、軽くあしらわれているこの状況に怒りを抑えることが出来ず、声に現れた。
地を蹴り、黄金の光を纏いながら、突撃する。
再生した左腕に風を纏い、回転を掛ける。
(右手の大剣は囮……そして、左の拳も囮……なら)
半歩下がって、地面を踏みつける。
地割れが起き、セルビスは飛び上がるしかなくなった。
緋姫で、上に斬り上げる。
「『天震』!」
「(重っ……!)おらっ!」
片手で受けるしかないアシュエルは、本当に星を砕きそうな威力の攻撃を真正面から受けることになった。腕の力を抜き、ブリッジの要領で腰を落とし、暮桜で突く。
「ぐっ」
体を捻ったことで、脇腹を抉るように掠める。
裂けてなければ、腹に大穴開いていたところだ。
セルビスは、空中を蹴り、一回転し、そのまま踵落としをする。
アシュエルは、暮桜を地面に突き刺し、右手で受け止める。
そして、ぐっと力を入れ、投げる。
「うおおおおおお!?」
「あ、やべっ、飛ばし過ぎた」
一瞬にして、小さくなってしまった。
右手を前に突き出し、ぐっと腕を引き絞る。
すると、飛んで行ったセルビスが、引き戻されるようにアシュエルの方へ戻ってきた。
それに合わせ、顔面を割るように殴りつける。
「がっ!?」
バキッとなってはいけない音がした。
セルビスの意識が一瞬飛ぶ。
そこへ追い打ちをかけるように、緋姫で連撃を叩き込む。
なんとか、聖鎧天朧のおかげで、致命傷だけは避けている。
それでも、決して治らない傷が無数に出来、血が滴り落ちる。
「ほんと、それめんどくさいね。思ったより強くないからもう終わりにしようか」
「……!なめるな!地を割れ、星砕き!!!」
右腕一本で星砕きを振り上げる。
神々しく輝き、大量の魔力を星砕きに注ぐ。
アシュエルは、刀を交差するように受け止める。
「やっぱおもっ……力だけは一人前だよね。それでも……」
「うくっ」
横に受け流すようにして、地面にぶつける。そのまま剣を踏み、動かせないようにする。
ぱっと手を放し、距離を取る。
「武器を放したらもう終わりだよ。世界を切り裂け、緋姫」
深紅の刃が真っ赤に染まり、赤の軌跡を空中に残す。
「あ、れ……?なに、を?……」
「この世界ごと魂を斬ったんだよ。ってもう聞こえてないか」
アシュエルの言う通り、セルビスの体が横に裂け倒れる。
世界を斬る斬撃を放ったせいで、この疑似世界がガラスにひびが入るように割れ始めた。
パッリーーーーン!!!
と大きな音を出し、壊れた。
疑似世界から出た先は、最初にヨルダウトと会っていた場所だった。
だが、そこで見たのは、帝国ではなかった。
「あれ?なんか、でっかい穴、開いてるんだけど?」
帝国があった場所に、隕石でも落ちたかのように大穴が開いていた。
そこへ、アシュエルの疑問に答えるように、いつも間にかアシュエルの隣にいたマーリンが答えた。
「統括、これは、ヨルダウトが隕石を降らしたんですよ」
「え?まじで?」
ぽかんとした表情をする。
まさか、本当に大規模魔法をこんなところで使うとは思っていなかった。
「まじです。しかも、ほらあそこを見てください」
そう言われ、アシュエルが見たものは、綺麗に攻撃の跡が途切れていた。
「あれは、新しくヨルダウトの仲間になった神龍のシェダルハーダが抑えたおかげで、これだけの範囲で収まったんです。もし、結界で押し込めなければ、この5倍は酷かったです」
「それはそれは……でも、ここは、戻さないんだろう」
「ええ、それに対しては何も言われていませんので」
大穴を再度見て、呆れた顔をする。
「それで、統括。どうでした?」
「セルビスのこと?期待外れだった。たしかに、暴龍が出来たころの団長クラスならいい勝負が出来たと思うけど、僕の相手にはならなかった。この『魔法無効化』のせいで、セルビスが使う魔法を全部無効化してしまうし、星砕きっていう大剣は威力がとにかく高かったけど、それだけ」
「ああー一番統括がつまらない相手ですね」
「そうなんだよー」
とてもつまらなそうに言う。
「せっかく暮桜解放したのに、結局能力全部は使えなかったし」
「神刀ですよ?この世界の武器とまともに打ち合ったら、簡単に武器を斬ってしまうでしょう」
「それが、耐久性も抜群で、どれだけ打ち合っても、刃こぼれを最後に少ししたくらいで」
「それは……凄いですね」
神器と打ち合える武器なんて数が限られている。
その中でも、崩剣星砕きはその一部だったということだろう。
セルビスが、星砕きを持っていたことは幸いだった。それを使っていなければ、打ち合うことさえ出来なかったのだから。ステータスも聖人のころまで落としているため純粋に同ステータスで戦っていた。つまり、セルビスが負けたのは、練度の差だ。
ステータスだけが半端に上がり過ぎたものがよく陥る。
「しっかし、これで、人間の国はうちのウィルムンド王国だけになったよね」
「そうですね。……レイン様はこれからどうされるのでしょう?」
「それは、僕たちが考えることじゃないよ」
アシュエルの目が鋭く光る。
その眼光にマーリンは息を呑み応える。
「後は、ヨルダウトが魔族をどうするか、それを見届けるだけだよ」
帝国があった場所を見ながら小さな声で呟く。
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