103話 アシュエルVSセルビス 前
sideアシュエル
「ここは?」
いきなり別の空間に連れてこられ、戸惑うセルビス。
アシュエルは、当時同じだった者として、セルビスと戦ってみたかった。だから、ヨルダウトが帝国を攻めていると聞いて、慌てて帝国に飛んだのだった。
そこには、ヨルダウトがちょうどセルビスと戦おうとしていたところで、本当にぎりぎりだった。
「ここは、亜空間とか異空間と、取り敢えず、ここではどれだけ強力な攻撃をしても現実には影響しないから本気で来ていいよ」
「君何者?」
自分の置かれた状況を認識したのか、落ち着いている。
「僕は、暴龍騎士団の統括だよ。君が第一使徒でしょ?」
「そうだけど……」
「心配しなくても皇帝は死ぬよ。結界を張っていたみたいだけど、魔力供給が途絶えれば、無限に再生する効果もなくなるでしょ?まぁそれでも、少しはもつだろうけど、ヨルダウトの攻撃には耐えることは出来ないだろうからね」
キャラの被った、どちらも少年のような容姿の男の子が、向かい合って、戦おうとしている様は、子供の喧嘩をしているようだ。規模は全く違うが。
「っ……それは、契約したけど、破ることになるな」
大事なことのはずなのに、全く気にしていないようだ。
笑いながら話している。
「それで、俺を呼んだのは戦うためか?」
「そうそう、この世界で自力で聖人になったっていうからやりあいたいなって思って」
「へぇー」
目が鋭くなった。
この訳の分からない状況でも、セルビスは、自分が負けるとは微塵も思っていなかった。
「さっさとやろうか」
セルビスが先に武器を構える。
セルビスの武器は、柄が50cm程あり、刃が包丁のような形をしている刃渡り1m50cmの巨大な剣だ。
「崩剣星砕き」
「なら僕も、神刀暮桜、呪刀緋姫」
右手に、桜色の暮桜、刃渡り90cmの日本刀に近い。左手に、深紅の緋姫、刃渡り93cmの直刀だ。
「まぁ、あいさつ程度にーー」
アシュエルは、緋姫を左の空間目掛け突き刺す。
「ちっ……!」
セルビスは腰を捻り避ける。
アシュエルはそのまま二度三度突き刺す。
「なめるな!」
星砕きを大振りし、アシュエルの攻撃を弾き飛ばす。
アシュエルの刀をよく見ると、刀身の半分が消えている。その消えた先が、セルビスを後ろから刺すような形で、出現する。
そのことごとくを避け弾いていく。
普通の人間ならば、この一撃で終わっている。
あらゆる場所から、刀を飛ばすことが出来るからだ。
「はあ!」
セルビスは、魔力を込め、斬撃を飛ばす。
巨大な三日月の形をした斬撃は、音速を超えアシュエルに向かう。
対して、アシュエルは、暮桜で受ける。
暮桜に当たった場所から、花が散るように消える。
「それそれそれ!!!」
それから何度も、何度も斬撃を飛ばしてくる。100を超えた辺りで、攻撃が止んだ。
「普通ならこれで終わるんだけど?」
「その程度の攻撃が効くとか本当に思ってるわけないよね?ただの飛剣如きで」
「穿て仙空!」
星砕きを正面に構え、高速の突きを放つ。
それを、暮桜一本で容易く弾いていく。
星砕きに風を纏わせ、一段速くなった突きを連続で放つ。
「これは……!中々だね……!」
「ちっこれでもだめか!」
楽々とセルビスの攻撃を弾いていたアシュエルは、後ろに迫っている竜巻に気付いていなかった。
後ろの風圧に気付いた時には、完全に四つの竜巻に囲まれていた。
「しまった!」
逃げられないよう四方を囲まれ、巨大な竜巻がアシュエルを巻き込む。
「なんてね」
だが、次の瞬間には、ふわっと弾け風が消える。
緋姫で、空間を斬りつけ印を刻み、前に飛ぶ。
すると、さっきまでアシュエルがいた場所に、上からセルビスが重力に任せ落ちてきた。その場所は、ちょうどアシュエルが印を刻んだ場所で、セルビスは思い切りそこを攻撃してしまった。
「くっ、なんだこれ!?」
「緋姫は呪いを空間に刻むことでその効果を発揮できるんだ。そして、今回の呪いは」
徐々に星砕きの刃が黒くなっていく。
すぐに魔力を流す。
「おお、良くわかったね。呪いより強い魔力を流せば、破ることが出来るんだよね」
基本呪いを破る方法は、『解呪』をすること。他には、さっきセルビスがやったように力ずくで破る方法だ。
「『風神竜』!!!」
風を纏った竜が現れた。
いや、あれは風というより嵐だ。暴風が吹き荒れ、周囲の風が竜に引き寄せられている。一つの台風だ。
「行け!」
風神竜がアシュエル目掛け突撃する。
その大きな顎を開き、アシュエルを噛み砕こうとする。
「あ、言うの忘れてたけど、僕に魔法は効かないんだ」
歯がアシュエルの体に触れた瞬間、バシュンッと風の竜が消えた。
「は?な、なんで………?」
初めて動揺したセルビスは、後ろに回り込んだアシュエルに気が付かなかった。
「しまっ……がはっ!」
胸を袈裟斬りに切り裂かれる。大量の血が飛び散るが、痛みを我慢しながら、後ろに下がる。
「なんかつまらない。思ってた以上に弱くて」
「はぁ?貴様!ここからは、本気だ!『聖鎧天朧』!!!」
イラつきながら、本気のスキルを使う。
セルビスがこのスキルを使ったのは、人生で三度目だ。聖人となった時に、手に入れたユニークスキルである。効果は、認識をずらすこと。
だから、
「『光輪』!」
光の輪を四つセルビスに飛ばす。
完全に捉えたその攻撃は、セルビスに当たったが、スルリと通り抜けた。
「ここからは本気で殺してやる」
遊びは終わりといった感じで、殺気が膨れ上がる。
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