102話 帝国の終わり
第四使徒をサクッと倒した後、帝城に向けて飛ぶ。
近づいた時、
ドガァァァアアアアアアン!!!!!!
「………………………」
思わず歩みを止めてしまった。
なぜなら、城の上半分が爆発して吹き飛んだからだ。
その後、龍の咆哮が聞こえ、犯人はすぐに分かった。
「あやつめ、何をやっている」
顔に手をやり、やれやれと言った感じだ。
さすがに、人化したままだが、それでも、息吹はやりすぎだろう。
下から上に撃ったから良かったものの、逆なら地盤に穴が開いていた。
「しかし、第一使徒と皇帝は残っているな。それと……あと一人残っているな。誰だ?」
生命探知に三つ反応があり、その場所に行く。
屋根のなくなった城に上から入り込み、中を確認する。
黄金の結界が張られ、先の息吹を凌いでいた。
そこには、使徒二人がいた。
「クハハハハハハ!!我のブレスを耐えきるとは、やるではないか!ストレス発散に付き合って……」
龍翼を出し、空を飛びながら、高笑いをしている。
その途中に、ヨルダウトに気付き、動きが止まる。
「こ、これは違うぞ!?ほら見ろ!あれが思いの他硬くてな?仕方なくやったのだ!」
「ストレス発散とか言っていたではないか……」
「言葉の綾というものだ!!!」
「まあ良い。……さて、やるか」
未だに言い訳をしているシェダルハーダを無視して、黄金結界に目を向ける。
「貴様ら、何者だ!」
豪華だが動きにくそうな服装をしている男が声を荒げる。
「攻め入られ、帝都には生きている人間はもういないというのに、まだそんな悠長なことを言っているのか?」
「なに!?」
「人間はよく言うな。何者だ、と。貴様らの敵だ」
「皇帝、その通りみたいだ。最早生物はいないようだ」
「使徒は何をやっている!?」
少なくなったとはいえ、残っている使徒もいる。
そして、使徒一人でもいれば、動く死体がいくらいようと関係ないだろう。そう、ただの動く死体ならば。鎮圧に向かっていた使徒は、暗黒騎士オーウェンとアンドレアに殺されていた。つまり残っている使徒は、ここにいる、第一使徒、第二使徒の二人だけだ。
「余の配下が殲滅した。使徒も大したことがないな。ただ、普通の人間より強いというだけではないか」
「なにを……!?」
「完全に舐められているね。皇帝、君は、どうする?逃げるかい?」
第一使徒セルビスは、どこまでも余裕の表情だ。この状況を乗り切るだけの力があると確信を持っている。対して、皇帝は、どうにか動揺を抑えようとしているが、出来ていない。
「逃げん!セルビス命令だ!敵を倒せ!」
「了解。アルゴーリ角の方を任せるよ」
「……(コクン)」
第二使徒アルゴーリは、無口だ。決して喋らないため、頷いて応じる。
「余が、あの少年をやる。シェーダが、あの巨漢をやれ」
「分かった、ご主人サマ」
早速セルビス目掛け、魔法を放とうとしたら、空間を裂きアシュエルが現れた。
「やっほ、ヨルダウト」
「何の用だ?アシュエル」
「まさかこんな早く帝国を攻めるとは思ってなくてね、そこの、第一使徒は僕が貰うよ」
「余の遊び相手だぞ?」
「前々からレイン様から許可を取ってたんだよ。同じ種族として、ね」
「主殿から、か。分かった、なら余は手を引こう」
「ありがと!……というわけだから、第一使徒さん僕が相手だよ」
「俺は、どっちでもいいぞ」
急に現れたアシュエルは、第一使徒が自分の相手だといい、レインの許可も貰っていることだけ言うと、第一使徒を連れて消えた。ヨルダウトと戦ったあの異空間に行ったのだろう。
「セルビス!?どこに行った!!!」
急に消えたセルビスに皇帝が狼狽える。
今までセルビスが護ってくれているため、どんな状況になったとしても、耐えることが出来た。
皇帝自身も一流の武芸者だ。だが、人の粋を外れた強者には、勝てない。使徒クラスの敵が来ても持ちこたえることは出来る。だが、倒すことは出来ない。今回は、いつ来るかも分からない状況で、ヨルダウトの相手をしなければならない。狼狽えるのも仕方ないと言える。
「仕方ないな。余があいつの相手をすればよかったか」
シェダルハーダに目を向けると、牙を剝きながら、楽しそうに殺りあっているのが見える。
急にムカついてきたヨルダウトは、後で罰を与えるか、とシェダルハーダが聞いたら目を剥くようなことを考える。
「さて、こいつを何とかするか、『炎月』」
月の形をした炎が回転をしながら、皇帝を護っている黄金結界に飛んでいく。
ギャリギャリと音を立てながら、拮抗しているが、割るには至らない。少し食い込んだところで魔法が消え、傷付いた結界はすぐに修復した。
「ふむ。黄金結界というより、再生結界とでもいった方がいいな。ならこれでどうだ?……天を貫く千の刃よ」
皇帝を取り囲むように、千本の剣が現れ、一斉に結界に突き刺さる。
「ふん!その程度の魔法で、セルビスの結界が破れるものか!」
絶対に破れないと知っていたから、狼狽えていてもその場から逃げだそうとしなかった。
だが、五百本が突き刺さったところで、ひび割れが大きくなった。
「ふ、ふん!だから言っているだろう!その程度では、壊れんとな!」
八百本が突き刺さった。
「も、もうやめろ!?破ることは出来ない!!!」
そして、九百、九百五十、が刺さったところで、再生しながらも再生しきれなくなった。剣が刺さったままだと、穴が塞がりきらないとヨルダウトは、最初の一撃で気付いていた。
そして、ついに千の刃が刺さった。結界を隙が無く埋める程の剣が刺さり、ついに、パリンと小さな音を立て割れた。
「な、な、なに!?馬鹿な!?今まで、一度も破られたことのないセルビスの結界がぁ!?」
「ふむ。再生結界か。中々良かったが、まだ詰めが甘いな。もっと強力な攻撃でもよかったがーー」
チラッとシェダルハーダの方を見、
「--あいつの邪魔になりそうだからな」
強力な魔法は、通常威力が高いため周囲を巻き込んだ攻撃が多い。
結界を壊し、ようやく皇帝に近づけると思った矢先、結界が回復した。
「は?」
「……ふ、ふふ、ふはははは!!!そ、その程度の攻撃では、壊しきることなど出来んのだ!?ふはははは!!!」
結界が回復して安心したのか、ふははは、と笑い続けている。
「忌々しい結界め、許さん。来い!ブラッディ……ブラッディ……何だったか、ブラッドだったか?まぁ良い、魔剣よ!」
勇者、佐藤太樹が持っていた魔剣は、元々ヨルダウトが吸血鬼時代に使っていた……と思われる剣だった。微かに思い出したが、魔剣の名前までは思い出せなかった。
結界に近づき、魔剣を突き刺す。なんの音も抵抗もせず突き刺さる。
「伸びろ」
魔剣の切っ先から、紅い刀身が伸び、皇帝の脇腹を貫く。
「ぐあああ!!いたい!いたいぃぃぃ!!!」
脇腹を押さえ、その場に蹲る。
ヨルダウトは、魔剣を振るう。
一瞬の内に、数千回斬りつける。
粉々にまで破壊された、結界に追い打ちをかけるように、破片を燃やし尽くす。
この黄金結界は、破片からでも再生するからだ。
「ひいぃっ!来るな!来るなぁ!セルビス!おい、セルビス!!!俺を護れ!どこにいる!!」
「アシュエルが行った、あの人間ももう死んでいるだろう」
「そんなわけあるか!セルビスは、人を超越した存在だぞ!?」
もう喋る気はない、とばかりに、魔剣を振るい首を落とす。
ごとッと落ちた皇帝の表情は、信じられないと語っている。
「余は終わったが、シェーダはどうだ?」
確認しようとしたところで、大きな爆発音がした。
しばらくして、ヨルダウトの傍に降り立ったシェダルハーダが口を開く。
「いや~戦った戦った!」
「シェーダ楽しかったか?」
「うむ!久しぶりの殴り合いで気分が上がってな、ご主人サマの死霊も巻き込んでしまったけど……」
「構わん。どうせ、すぐに死ぬのだ」
チラッチラッとヨルダウトの顔を見ながら、怒られないか確認しながら聞く。
だが、ヨルダウトの返事は実にあっさりしたものだった。
「死ぬ?ってどういうことだ?」
「こういうことだ、天体魔法『隕石』」
「へ?まさか……」
何かに気付いた様子のシェダルハーダが慌てながら言う。
「ご主人サマは、馬鹿なのか!?人界でそんな魔法使うやつあるか!?」
「だから、一つしか降らせていないであろう?」
「数の問題じゃないわ!!!」
そう言っている間にも、巨大な隕石が炎を纏いながら、落ちてくるのが、遥か上空に見えた。
「『重力加速』」
「馬鹿かぁ!!!!加速させてどうする!?威力を上げてどうする!?」
「思ったより遅かったのでな」
「もう知らん!」
この日より、帝国は地図上から消えてなくなった。
帝都にいたヨルダウトの死霊数百万の軍勢と共に。
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