8話 四天王(笑)
sideレイン
手を叩きながら、集まっている魔族の中に姿を現す。
「何者だっ!」
すぐに立ち上がり、魔王を守らんと武器を構えた。
中々にいい反応だ、四天王に魔王、魔族の頂点が集まっているいるところに何の気配もなく現れたんだ。警戒するだろう、しない方がおかしいか。
「俺は、レイン。お前たちが話していたウィルムンド王国の王子だ。挨拶と選別に来た」
金光のシュウオウとか呼ばれていた奴が、大剣を抱えながら向かってきた。
大剣が黒く光、爛々と輝く。
「はああああああ」
「この程度か」
「なんだとっ!?」
掌でその一撃を受ける。全くダメージを受けていないが普通の人間なら、今ので消し飛んでいただろう。その証拠に、剣圧で結界が貼られているこの部屋が悲鳴を上げ今にも壊れそうだ。
そのまま連撃を放ちながら、魔法も来るが、全ていなし、隙ができたところに近づき、腹パンする。
「ぐはっ」
血を吐きながら、倒れる。
「シュウオウが一撃で!?」
相変わらず魔王は、座ったままだが一番警戒しているのは彼女だろう。いつでも、対応できるように全身に魔力を行き渡されている。
四天王が一撃で倒されたこに、ますます警戒している。
「だから、今日は戦いに来たわけじゃない。挨拶と選別と言っただろうが」
そう言ったにもかかわらず、警戒を緩めない。ま、それはいい点だな。主君の前に圧倒的強者がいる、警戒するなと言う方が酷だろう。でも、警戒しても無駄な相手もいるがな。
「選別とはどうことだ?」
「やっと、本題に入れるな。お前らに力をやろう、今のままだと弱すぎる。魔王が500にもいっていないとかダメダメすぎる」
「なに?」
魔王の眉がピクッと反応する。力を見せた後だから、反撃こそしないがイラっとは来ているだろう。
「てなわけで、お前ら5人に力を与える」
そう言いながら指を鳴らす。
すると、5人が黒い光に包まれる。
「我たちに何をした!」
「落ち着け。その光が収まれば圧倒的な力を手に入れているだろうさ、激痛があるかもだけどな。ククク」
少し見ていると、
「ぐわぁぁぁぁあああ」
悲鳴が聞こえてきた。始まったか、加護を与えたため加護の力に耐えられるように身体を作り変えているところだ。中には、痛みに耐えかねショック死するかもしれないが、そこは魔族最強と呼ばれているから、頑張ってもらいたい。
数十分後。
「はぁはぁはぁ。治った」
「魔王様大丈夫ですか?」
「あ、ああ。力が溢れてくる……」
みんな耐え切ったようだ。断罪のショルティーナとか言う奴が、ステータスを開いて見たらしく、唖然とした表情をしながら固まっている。他の面々もそれぞれ見たらしく同じく固まっている。
「どうだ?それで帝国とも正面切って戦えるだけの力を手に入れただろう?」
「貴殿は何者なのだ?」
魔王が、問いかけてくる。しかも、呼び方が貴殿とは。笑ってしまいそうだ。
「レベル900になっている」
ほお、あれしきの加護でそこまで上がるとは、よほど才能があったのか。四天王も500は超えたみたいだな。よろしい、よろしい。
「力の上昇を確認できたな?」
戸惑いながらも頷いたのを確認してから続きを言った。
「ただレベルが上昇し、純粋なステータスが増した分まだ全然力を扱え切れないだろう。だから、今から一週間ここの訓練場で満足のいくまで練習して扱えるようになれ。いいな?」
「我らにこんなに力を与えて何をしたいのですか?」
と、魔王が聞いてきた。確かに龍王クラスにいきなりなれば戸惑うのも当然か。しかし、最初に突っかかってきた奴も強くなったため、力の差を感じ取れるようになったのか黙っている。
「うーむ、そうだな。特に意味はない。ただ、この世界は平均レベルが低いからな。せめてレベルの高いやつを『個』として強くしてみようと思ってな」
「我らが今あなたを攻撃するとは考えなかったのですか」
「クク、してきてもいいぞ?どうした、しないのか?」
わかってて聞いてみた。殺気を出してみると、ゴクリと喉が鳴る音が聞こえた。顔が青くなってきたため、出すのを止める。
「ま、その程度では敵わんからどうでもいい。言っただろ?意味はないと」
「で、では、私たち侵攻しても?」
「ああ、当初の予定通りにしてかまわんぞ」
魔王軍は、これから色々な国を攻めながら世界征服に向けて頑張るだろう。そうすれば、世界は戦乱の渦に飲み込まれる。そして、数の理が意味を為さないとしたら、もっと全体的に鍛えるか、個を強くするか、策を弄するか。たくさん考えてくれるはずだ。
「人という種を滅ぼすのも、世界を滅ぼすのも、世界を征服するのも、全て自由にしていい。ただ、和平や休戦などは絶対にするな、つまらんからな。あぁ、それと、『俺のことを話すことを禁ずる』」
5人の周りにひとり一本の鎖が現れ、それぞれの心臓に刺さった。
「それは、俺のことを話すと魂にまで到達し魂を壊す。なに、命令はそれだけだ、心配するな」
それだけ言うと、転移で帰る。
残された魔王たちは、力を確認するためにそれぞれが練習に取り掛かった。
一人一人がスキルを1つは手に入れ、その効果に驚いたり、力加減が出来ずに小走りしただけで城が半壊したり、大変だったがなんとか普通に生活出来るまでは、出来るようになった。
それから、全力がどのくらいかなど確認していった。
そのせいで、魔族領の一部が消し飛んだりしたが、俺の知るところじゃないしな。