変わっていく人
達哉に会うのが怖い。
そんな風に考えながら玄関を出ると、おはよう!といつもの調子で話しかけてくる達哉の姿があり、ホッと胸を撫で下ろす。
「おはよー。ねえ、昨日さ…」
「あー、昨日宿題やるの忘れてた!光希はした?」
「う、うん……」
「よっし、なら大丈夫だな」
「なんで大丈夫なの!」
もう!と怒る光希と笑う達哉。
いつもの調子に戻るのは良いことだけど、明らかにはぐらかされてしまった。
言いたくないのなら無理に聞くのはダメだ。
そう心に言い聞かせながら達哉と一緒に小学校へ向かった。
それからから一週間。
何事もなく生活しているけど、光希の体力は限界に来ていた。
「なんで今日も壮真くんいないのー!?」
「最近忙しいみたいなんだ。私で我慢してくれる?」
「うー、真広くんも好きだけど……」
一週間も壮真に会えないと干からびてしまう。
それに……と黒川家の玄関から見える白野家入り口を見る。
「達哉も学校終わったらどっか行っちゃうし……」
いつもなら一緒に帰っているのに、あの日から学校が終わる度に車に乗ってどこかへ消えてしまう。
だから最近ヒーローごっこも出来ない。
それだと宿題のやる気も削がれてしまう……と、真広の元に日参している。
真広も真広で寝込んでいる時は会えないし、春菜も塾で忙しくて、結局の所数日は一人ぼっちを経験した。
「皆に置いてかれる……」
「……光希ちゃん。大丈夫。皆置いてったりしていないよ」
ポンポンと撫でる手が優しい。
うー……と涙を堪えていると、達哉が帰ってきたのか車が白野家に横付けされた。
「あ、帰ってきた!」
パッと表情を明るくさせ達哉の登場を今か今かと待ち望んだものの、達哉が降りてくることはなかった。
「……達哉のお母さん……達哉は?」
「あら、光希ちゃんに真広くん。こんにちは。達哉はね、親戚の所にいるのよ。何でもそこで体調を崩したみたいで……」
困ったように頬に手を添える達哉の母は、それだけ告げるとじゃあねと家の中に入ってしまう。
「病気かな」
「どうだろうね」
いつもならお見舞いにと行きたい所だけど、親戚の所にいるのなら行けない。
深くため息を吐いて自宅に帰ろうとした時、暫く見ていなかった壮真の姿を見れて、うわーい!と声を上げた。
いつもの調子で壮真に突撃すると、ひらりとかわされてしまった。
レンガに激突しそうになり両手をついて回避する。
ジリジリと距離を詰めようとしたものの、不機嫌そうな壮真にピタリと行動を止める。
これは本気で嫌がっている。
それを瞬時に理解した光希は、嫌われてしまった……とパニックになる。
放課後達哉に会えなくなり、壮真だって偶然出会うしかなくなってきている。
こうして離れ離れになってしまうのだと考えると、ポロポロと涙が溢れていく。
「やだー!皆と一緒にいたいー!」
「は?真広兄さん。なんだコイツ」
「皆に置いていかれるのが嫌なんだよ。ね、壮真」
「………そんなの……無理だろ。人は変わる。俺もお前も、達哉も……全員変わる」
「私は変わんないもん!」
「……だろうな」
「壮真くんも達哉も!変わらない!」
「そうか?現に達哉は変わってきてるだろ」
鼻で笑う壮真はどこか冷めた瞳を見せている。
「お前は……そのままでいろよ」
こんな時にいつもなら頭をポンッと叩いてくれた。
でも今は冷めた瞳を見せて光希から背を向けてしまい、光希の胸に寂しさだけが残っていった。