赤くんと青くん
翌日、真広は体調を崩してしまっていた。
でも寝室に来てくれれば本は読めるよとのことで、光希は1人で真広の元を訪れた。
達哉は歯医者に行く日。壮真は中学がまだ終わらない時間。
久々に真広を独り占めだと寝室に入ると、思いの外元気だったようで椅子に座り本を読んでいた。
「今日は何読んでるの?」
「赤と青の龍の話だよ」
「あ、それ知ってる!」
この地方に伝わる伝説を元にした絵本。今や教科書にも載っている有名なお話だ。
何度も勉強に使っていたから正直目新しい物でもない。
でも真広に読んでもらうとまた面白いだろうな……と読んでもらった。
2匹の龍はとても仲良し。
大きなお山のてっぺんで暮らしている。
2匹は自慢の角を使って、木に生えている果物を取り食べていた。
夜には大きな卵を大事そうに抱えながら眠りにつく。
ある時赤の龍が病気になってしまった。
日に日に弱っていく赤の龍。
どうしようどうしようと悩んだ青の龍は、天に向かって祈りを捧げた。
「どうか、僕の力をなくしてもいいので、赤くんを治してください」
そう強く願うと、赤の龍の体が光輝きパチリと目を覚ました。
良かった良かったと泣く青の龍からは、自慢の角が失くなっていた。
ポロポロと泣いた赤の龍は、天に向かって祈りを捧げた。
「どうか、僕の力をなくしてもいいので、青くんの力を戻してください」
青の龍の体が光輝き、折れていた角が少しだけ伸びた。
祈りが届かなかった。そう嘆く赤の龍と慰める青の龍の元に、天からの声が聞こえてきた。
「ごめんね。私の力だけじゃ、足りないみたいだ。そのかわり、少しおまじないをかけてあげる」
神々しい輝きに2匹の龍は目を閉じる。
「青くん、君は大好きな人と過ごしたら、力は元に戻るよ。赤くん、君は少しだけ体が弱いけど、大好きな人たちと過ごしたら元気でいられるからね」
「どうして、僕たちに良くしてくれるの?」
「それは君たちが相手を思いやる心を持っているからだよ。……私はいつも、皆を見守っているから……」
天からの声は光の粒となり、2人が抱えていた卵に吸い込まれていく。
2匹の龍は、互いを思いやる心を忘れずに、その卵を大事に大事に育てていきました。
「……2匹の龍もこの天の声も皆優しいね」
「うん。私はこの物語が愛しくて仕方ないよ」
真広は読んでいた本の表紙をソッとなぞる。
静かで優しい時間はこうして過ぎていった。