手作りのお守り
日曜日。ヒーロー達は今日も格好良かった。そして今日の放送終了後から、光希は家の裁縫道具を取り出し、母親に手伝ってもらいながら黙々と作業を開始する。
「むぅ……難しいー!」
手先があまり器用ではない。だから裁縫なんて家庭科で少しやったくらいで、それも出来映えは良くなかった。
でもこの情熱は抑えきれない!と指先に怪我をしながらも作業を続ける。
そして出来たのが丸っこいお守りだ。
表面には星とハートのフェルトをボンドで張り付けている。
テレビの中でヒロインが作っていたのは、ヒーロー達に渡すお守り。
中には日頃の感謝を書いた手紙を入れていた。
自分は何を入れようかな……と考えた結果、達哉には健康成就にした。
達哉は今でこそ元気だけど、生まれた頃は良く寝込んでいた。
約束をしても、今日はお熱があるから遊べないのと断られた回数は数知れず。
その度壮真を無理矢理引き連れお見舞いをした。
お見舞いをすると達哉はみるみるうちに元気になるから、自分達は特効薬だ!と喜んでいたのが懐かしい。
壮真には何にするかはもう決まっている。
「壮真くんには恋愛成就!」
そして最後に、光希とだよと一言添える。
うふふーと笑いながら完成したお守りを握り締め公園を目指した。
約束はしていなくても、日曜日午後からは予定がない限りは公園に集まっている。
公園の入り口でベンチを見ると、壮真と達哉が座っていた。
駆け寄り2人に、挨拶もそこそこにはい!とお守りを差し出す。
「達哉のは健康成就だよ!」
「おう、ありがとう」
「で、壮真くんのは……」
モジモジしながら壮真に手渡そうとするものの、受け取りたくない……と言われショックを受ける。
「えぇ!?恋愛成就だよ!欲しくない!?」
「なんだよ恋愛成就って。お前どうせ光希と、とか書いてんだろ」
「バレた!」
「ああ、お前以外の光希って女と付き合えるようにか」
「ちーがーうー!!作り直す!!」
そんなことは望んでない!とお守りを握り締めようとしたものの、その前にスルリと取られてしまった。
「はいはい。どこぞの光希って奴との恋愛成就な。貰っとく」
意地悪そうに笑う姿にむー!と怒るものの、やっぱり楽しそうに笑ってくれる姿が大好きで、最終的には笑顔が見れれば良いやと満足してしまう。
達哉といるのは楽しいし笑ってくれると嬉しい。
でもそれ以上に壮真が笑ってくれると嬉しくて暖かくて幸せを感じる。
これはきっと恋なんだろうな……と思いながら、一緒にベンチに座り楽しくお話を続けた。