好物はチーズ
日常に戻った所で普段の生活に変わりはなく、いつも通り達哉と春菜と3人で学校生活を過ごし、空手を習いに行って帰る。
変わったのは交遊関係だろう。
戦いが終わって数日後、スマホに知らない番号から電話がかかってきた。
誰だろう?と出てみると、なんとあの女性からだった。
彼女は黒川佐久という壮真の親戚らしく、話してみると好きな食べ物や飲み物が同じだったり、最近欲しい物まで一緒などと、細かい所が同じで、一緒に話すと楽しくて仲良くしてもらっている。
日曜日の昼下がり。達哉も含め3人でレストランで話をする。
後でもう1人来ますというと、6人でも悠々と座れる席に案内してくれた。
達哉は俺今日はここ!と言ってわざわざ狭いお誕生日席に座り、佐久は少し考えて広々とした椅子を選ぶ。
なら私は長椅子だな……と座ると、椅子の席より狭かった。
全員注文を済ませ、届くまでの間に話をし始める。
本日の議題は角が折れた時の対処について。
「解決策はありますか?」
「あります」
「あります」
クイズで使うようなボードはないけど、ボードに見立てたメニュー表を見せて聞くと、同じ答えが即答で返ってきた。
2人は姉弟ですか?なんて聞きたくなるほどのコンビネーションだ。
感心したように頷いていると遂に主役の登場だ。
戦っている時は必死でそれどころじゃ無かったけど、店内を悠々と歩く姿が格好良い。
壮真ー!と達哉の呼ぶ声に軽く手をあげる姿も様になっている。
テーブルに近付いた壮真は暫く沈黙し、光希の隣に座ろうとする。
「ここ狭いから椅子席の方が良いよ」
「良いからとっとと奥行け」
親切心で言ったのに不機嫌になられてしまった。
とはいえ隣に座ってくれるのは嬉しいし幸せだ。
メニューを手渡すと、お前は何を頼んだんだ?と問いかけられた。
「グラタン!」
「は、ガキの頃から変わってねぇな」
チーズがとろーっとしたグラタンは、子供の頃から大好きで今も好物の1つだ。
「壮真くんだってチーズハンバーグ好きじゃん」
幼馴染み一家総出でレストランに行くと、壮真は決まってチーズハンバーグを頼んでいた。
「俺は別にチーズハンバーグが好きな訳ではねぇな」
「そうなの!?」
チーズ好きとしてはその発言は頂けない。
鉄板の上でジュワジュワと音を立て、肉汁溢れるハンバーグ。
そのハンバーグの上には表面を覆うとろけたチーズ。
ナイフで切り、フォークで一切れのハンバーグを取るとこれでもかというくらい、チーズが伸びる。
伸びたチーズを絡めて食べるチーズハンバーグは、光希にとって嗜好の1品だ。
グラタンかチーズハンバーグで悩んでいたくらいで、今もチーズハンバーグのことを考えると頼んでおけば良かったかなと思ってしまう。
でもそんなに頼めないし……と考えていると、店員さんによって、達哉と佐久が頼んだ日替わり定食とグラタンが運ばれてきた。
「すみません。注文良いですか」
「はい」
「チーズハンバーグ。ライス付きで」
決めるのが面倒なのか結局壮真はチーズハンバーグにするようで、好きなんじゃないか……と壮真を見る。
「面倒だからとっとと決めただけだ。ほら、早く食え」
「はーい。頂きます!」
程なくして届くチーズハンバーグは本当に美味しそうで、小さな頃同様少しだけ壮真に貰うのであった。
その優しさが嬉しくて、締まりのない笑みを溢す。
「もう、本当に壮真くん好きー!」
煩わしそうにされるのは分かっていても言いたい。
案の定、顔を顰めて不機嫌そうにしていたけれど言えて満足だ。
その様子を真正面で見ていた佐久は、呆れた……と呟いた。
「黒の龍と壮真って似てるな」
「そうなの?」
「うん。あっちは気持ちを言葉に出すけど」
「へぇ、龍にしては良い男じゃない」
佐久は感心したように頷き、食事を再開させている。
光希もグラタンを食べながら、達哉の言う通り確かに似てる部分もあるなと考えた。
「白の龍もだけど、黒の龍も格好良かったよね!」
雰囲気とか声とかが格好良くて、壮真に少し似ていた。
そう伝えると、壮真にどこが?と鼻で笑われてしまった。
「そのうち光希が惚れ込んだりして」
「そんなことないよ!……そんなことないからね!?」
達哉に否定した後、壮真にも改めて念を押すと、うるせぇ……と呟かれる。
「分かったから少し静かにしろ。他の客に迷惑だ」
「……はい」
騒がしくしてしまったと達哉と2人で反省していると、何だか昔を思い出す。
変わったことはあるけれど、変わらないものだって沢山ある。
その中で重要な位置を占めているのは幼馴染みとの関係だ。
幼馴染みを思う気持ちはいつも変わらない。




