目標の高校
中学2年に壮真と離れ、もう会えないかな?とも思ったけれど、中学3年になると行動範囲が広がったお陰か壮真と偶然出会う確率が増えた気がする。
「これぞラブ引力……!」
「なんだそれ」
「もしかして壮真さん?」
達哉と春菜に頷き、壮真に駆け寄ろうとしても、壮真も気が付いているのかすぐに逃げられてしまう。
その行動に胸はズキズキと痛むけれど、壮真が元気でいてくれて良かった……と思えた。
気分を変えて近くのファーストフード店に入る。
最近、時間があったら3人でこうして何かを食べながら話すのが日課になっている。
「春菜は今日も塾?」
「うん。18時からね」
「井川はすげぇな。テストでも上位じゃん」
誉める達哉に春菜ははにかんだように笑っている。
その姿は小学生の頃から変わっていなくてやっぱり可愛らしい。
「そういう白野くんも、陸上凄いよね」
「おお、それもっと誉めて!」
ワクワクした様子で春菜に笑いかける達哉と、おずおずと頭を撫でてあげる春菜。これで付き合っていないとなると、見ていてもどかしい気分になる。
達哉は昔から変わらず運動神経が良いようで、陸上以外にもバスケやサッカーなど、体を動かすスポーツ全般が得意だ。
そして光希自身は……というと、小学生のうちに様々な格闘技を見学し、練習に参加させてもらい……としていった中で、空手が気に入り以来ずっと続けてきている。
「光希は今日も空手?」
「うん!」
「お前どこまで強くなる気だよ」
「えー、達哉と壮真くん守れるくらいって言ったじゃん」
「それまだ有効なのかよ!?」
「何それー」
クスクスと笑う春菜に昔のことを伝えると、更に笑い声を上げている。
「光希に守ってもらう白野くん……」
ツボに入ったのかひたすら笑っている春菜に釣られて皆で笑う。そんな日常が楽しい。
でも後1年もしない内に卒業だ。
進路もきっとバラバラだろうなと思うと何だか物悲しくなっていく。
これが壮真の言っていた、全員変わっていく……ということだろうか。
それは寂しいなと考えながら、高校について聞く。
「空手が強い高校に行きたいんだよねぇ」
「俺は陸上かバスケ……かな」
「うーん……」
成績優秀な春菜は鞄の中から、高校についての資料をバサリと出し考える。
陸上、バスケ、空手……とブツブツと言いながら調べていた春菜は、1枚の資料を2人に見せてきた。
「ここの高校。陸上で全国行ってる人がいるって。で、空手は顧問の先生が元国体選手だって」
渡された資料を隅々まで読むと俄然興味が出てくる。
ここに行きたい!と思ったものの、達哉に示された部分を見てうげぇ……と声をあげる。
「偏差値高い……」
春菜なら問題なく入れるだろう。でも自分達は……と考えると、必死に勉強をし続け漸く行けるか行けないかくらいな気がする。
唸りながら悩んでいると、春菜が1つ提案をしてきた。
「先生がスポーツ推薦してくれたら良いんじゃない?」
「実績は十分ある……?」
「2人ともバッチリだと思うよ。私もここなら無理なく通えると思うし……」
春菜の言葉に、やった!と言いながら達哉とハイタッチをする。
3人で通える高校が見つかるとは思わなかった。
受験はまだ先だけど、もう3人で同じ高校に通っている未来しか見えない。
2人で春菜の手を握りお礼を言うと、顔を赤くして恥ずかしがってしまった。
「……」
その様子を優しい瞳で見ていた達哉の姿に、春菜はいつ気が付くのか。
気が付いたら気が付いたで面白そうだな……そう考えながら、楽しい時間は過ぎていった。




