7.武器
"ザシュッ"、刃が狼の背中に食い込む。
そのまま狼の息は途絶えた。
「とりあえず間に合わせとしては使えそうだな。お前のほうはどうだ?」
「ああ、少し振り回されているが恐らくディオの考えは正しい思う。
まずは筋力を鍛える必要がある。」
今二人は王都アルキリアに向かう道中の森の中にいた。
話は旅の準備をしていた時までさかのぼる。
「お前剣習いたいって言ってたな。
なんでだ?カッシュはなぜお前に教えなかったんだ?」
「俺が断った。
一族の武器は刀が主流だ。
兄上に実際に見せてもらった動きでは魂鎮めに使えないことがわかったからだ。
兄上の剣の習得度にもよるがこの武器は必ず振った後に動きが止まる。
[舞]が途切れては魂鎮めが使えない。
今は魂鎮め以前に武器がこれしかないからアンタに頼んだんだ。」
「ってことはだ。本来の希望としては刀以外でその魂鎮めっつったか。
それが使えそうな武器の扱いを教えてほしいってことだな。」
「そうだが。可能なのか?
アンタは剣を使うんじゃないのか?
背中に背負ってるものは何やら大きいが。」
「基本は大剣を使うが扱える武器はそれなりにあるぞ。
だてに傭兵やってねえからな。
そうだな。
俺の見立てではお前さんは多勢を相手に戦うことに慣れていない。
実態のあるものを相手にしてなかったせいか、力の使い方も最小限だな。
その辺の弱点は早々に消す必要があるな。
別にわざわざ戦争しに行くわけでもないが死なれちゃ困る。
最悪は想定しときてえ。とすると・・」
ぶつぶつ言いながら考えを巡らせているディオをシバは見つめる。
今のディオの容姿は出会ったころとはまるで変っている。
長かった黒い髪はバッサリ切られオールバックに、髭もキレイに剃られている。
大柄な体に羽織ったマントは相変わらずボロだが黒のレザーの鎧に身を包んでいる。
出会った時の悲壮感は既にない。
まさに歴戦の戦士のたたずまいを醸し出していた。
シバは写魔と接してきたため、相手を知ろうとする場合は会話ではなく観察からという癖がついている。
それが元の性格の無口さに拍車をかけている。
(兄上に剣を教えた男)
心の中でも無口な彼は今何を思うのか。
「よし、とりあえずこれだな。」
考えがまとまったディオは続ける。
「この世界に青龍刀というものがある。
簡単に作りを言うと長い棒の先に片刃がついたものだ。
この武器は本来えらい重くてな。
扱いの難しい武器の一つだ。使い手も少ない。
だが扱えればこれほど強力なものもそうないぞ。
使い手は手強いヤツらばっかだしな。
お前には扱えない。
だがらお前用の特注を作る。
鍛冶屋にちょっとしたアテがある。
どうせこれからの予定も何も考えてないんだろ。
目指すは王都アルキリアだな。
街道じゃなく森を行くぞ。
慣らしには丁度いい。
道中の武器については俺が間に合わせを造ってやる。
大したもんはできないがこの武器を置いてる店はほとんどないからな。」
「アンタ武器も造れるのか。
その俺用の武器に木は使えるか?」
「棒の部分は木製にするぞ。
重量は抑えたいから金属は使えねえしな。
造る武器は青龍刀の特性を基にしたお前オリジナルの武器ってことだから使えりゃ何でもいいさ。
この背中にあるもんも元はガキの遊び道具だしな。
丁度いい機会だから言っとく。
傭兵ってのは使えるもんは使う。
それを怠るやつは早死にするだけだ。
戦場で武器が壊れたらわざわざ店に買いに行くのかって話だ。
俺が武器を造れるのはそういうことだ。
死体から頂戴することもあるがな。
俺が言いたいのは心構えの話だ。
いつもそうである必要はないが、いざって時には使えるよう頭の引き出しにしまっておけ。」
「わかった。使いたい木がある。
一旦アンタと出会った場所辺りまで戻りたい。」
「まあいいだろ。そう遠くないしな。」
シバの感想を聞いてディオは説明する。
「どうせそれはまだ相棒じゃねえんだ。
細かいことはいい。
扱い方だけ叩き込め。
筋トレがてら進んでくぞ。
もう一度言うが初動以降は武器の流れに逆らうなよ。
お前の最大の武器はすばやい体さばきにある。それを活かして遠心力でお前の非力を補填する。
速さと威力の調節は棒を持つ位置で調節しろ。
防御は考えるなよ。攻撃は避けろ。
武器が持たねえからな。
魂鎮め云々は俺にはわからん。
自分で気づいて聞いてこい。
材料があれば考察くらいはできるだろうよ。」
その後も戦闘しながら森を進む。
ディオは距離をとって見てるだけ。
(カッシュ、お前の見立て全然だめじゃねーか。
つくづく馬鹿だなてめえは。
まあ、才能はお前より上ってのは同感だがな。)