ぷろろ〜ぐ
シリーズ三つ目とか関係なく、これだけを読んでも楽しんでもらえるように、下手くそな素人ながら書かせて頂きます!
更新は遅くなりやすいと思いますが、よろしければ読んでみてください!
「はぁ、はぁ……これで最後だ!魔王!!」
目の前に立つ白い鎧を着た勇者が剣を構える。
「ふはは!望むところだ勇者よ!!」
勇者に剣を構えられ、満身創痍の魔王もまた、剣を構える。
「終わりにしてやる!全ての力をこの一撃に!!」
勇者は持ちうる限りの魔力を剣に注ぎ込んだ。
「死して散った者達のために、貴様を葬る!!はあぁぁぁぁ!!」
魔王も剣へと全ての魔力を注ぎ込む。
「トドメだぁぁぁぁぁ!!!」「オオオオオオオ!!!」
二人は相手めがけて剣を振る。
その強大な魔力が込められた剣と剣がぶつかる刹那…、二人の元に光の柱が落ちてきた。
「くっ!…この魔力は!?アァァァァ!!?」
光に包み込まれた魔王は目の前にいるはずの勇者の気配が無くなったことに気づく。だがこの光から感じられる魔力の違和感の方が魔王には気になった。
「…これは一体、この魔力は…?」
魔王は今まで感じたことのない魔力と、この状況に戸惑っていた。すると、上に何者かの気配を感じ取り、魔王は顔を上げた。
「…何者だ?」
「……女神です」
「女神…だと?」
その清らかな声と、ほのかに感じ取れる魔力からその言葉は嘘ではないと魔王は思った。
「これはあなたの仕業か?女神よ、説明してもらおうか」
「…魔力が強すぎたのかしら…それともタイミング…?勇者と魔王の魔力に共鳴したのかしら…う〜ん、どうしましょう…」
「…なるほど、あなたもなんらかの魔法を放ち、そのタイミングで私と勇者の魔力が重なり、この状況が出来た、と…。ですが、それだけではない…、この魔力は確実に強くなっている…。何が起きるのか説明してもらおうか、女神よ」
魔王は状況を考えて飲み込み、冷静に女神に問いかける。
「あーもう、うるさいですね〜!転生ですよ!転生!なんかもう、どうでもよくなっちゃったじゃないですか!…とにかく!異世界に行くんですよ!」
「異世界…ですか?それは困る…。私は魔王なのだ、世界を離れるなど…、せめて地獄に行かせてはもらえないだろうか?」
「うるさい、うるさーい!……異世界にて生きなさい。戻すことができれば、伝えますから……それじゃ!」
「それは、少し酷くないですか?上に立つものは責任を持つべきでは……ダメだ、もう魔力が濃すぎて存在が認識できない…」
激しくなった光に目を閉じて、魔王は収まるのを待った。そして、光が弱くなるのを感じてゆっくりと瞼を開けた。
「おぉ…これは…」
魔王の目の前には大きな海が広がっていた。そして海の上には見たことのない船がいくつも止まっていた。
大きな法螺貝から出るような音と共に、見たこともないような大きな船が、港と思われる場所からゆっくりと離れていった。
「ここが…異世界……どうやら山道に飛ばされたのか…」
魔王は自分が海の見える山の中腹付近にいることに辺りを見渡し気づく。
「黒く硬い地面だな…道がしっかりできている。
自分が踏んでる道を触り魔王は元の世界の石畳や土の道などとの違いに驚いた。
「あの船然り、この道然り、この世界は発展しているのか…」
物思いに耽っていると、下の方から何かが音を立てながら近づいてくるのが分かった。
「なんだ?敵か?…隠れるべきだろうな…」
魔王は山の木々が生えてる側へと向かい、木々の後ろで隠れることにした。
だんだんと近づいてきた音の正体は、車輪を4つ付けた白い乗り物のようで、後ろは荷車のような形になっていて、前は人間が2人乗れるようになっているのか、中に人間の老人が一人と、その隣は空いていた。
その乗り物はさっきまで、魔王がいたところで止まり、老人は外へと出てきた。
(…気づかれたか?先に倒すべきか…)
しかし老人は魔王の隠れている木々の方には目もくれず、海の見える方へと向いていた。
「…ふぅ、ここで小便出すのが最高に気持ちが良いのう…」
老人はどうやら用を足しているらしかった為、魔王は危害がないと判断した。
「…ん?あれは…」
老人を観察していた魔王は、老人が降りて誰も中に乗ってない乗り物がゆっくりと後ろへ下がっていることに気がついた。
「あ〜出る、出る〜。…ふぅ」
(あの老人、気づいていない?)
「ふぅ…って、ん?あれ!?ワシの車が!しまった!サイドブレーキ忘れておった!」
老人は乗り物がゆっくりと下に下がる音に気付き焦っていたが、どうやらまだ用は終わってないらしく
「待て!ワシの小便が終わるまで止まれ!あぁ!ワシの車がぁ!」
老人は大声を出した。
「誰かぁ!!ワシの車を止めてくれぇぇ!!ついでにワシの小便と、あとパジャマ着る時のボタンを留めてくれぇ!」
その老人の慌てように、魔王は驚きつつもこの隙に去ろうと後ろへと下がった。が、その時に落ちていた枝を踏み、音を鳴らしてしまう。
「っ!?しまった!」
「誰じゃぁ!誰かおるなら車を止めてくれええい!!」
その悲痛な叫びに耐えきれず、魔王は道へと出て行った。
「ええい!成すがままだ!!」
そう言って魔王は魔法を放ち、降っていこうとした乗り物 ”車” を止めて、さらには引き戻した。
用も足したらしく、老人はありがとうと言って、先ほどまで、男についている棒を触っていた手で、握手を求めてきた。
「ほんとにありがとう。ワシももうダメだと思ってたが、あんたのおかげで助かったわい…」
「…いえ、当たり前のことをしただけです」
握手は無視して話だけで済まそうとしたが、老人は積極的に手を握りにかかり、残念ながら魔王の手はガッツリと握られてしまった。
「いやいや、ほんとに助かった………ところであんた、見ない人だねぇ。……もしかして」
「…………」
「あんた外国人かい!?」