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負けるな、ブサメン  作者: 音子
1/9

書き始めてから終わるまで1年かかってしまいました。

合間合間に書いたので、途中文章体がおかしくなったりします。

『負けるな、ブサメン』~北極星(ポラリス)に導かれて~


1

これはお茶を楽しむという名のお見合い。

それをお互い理解してここにいる。

侍女がお茶の用意を終えて下がると、二人しかいない空間に何とも言えない空気が漂った。


・・・すごく気まずい。


お茶はきっとおいしいのだろう。だけど、何の味もしない。お土産にと持ってきてくれたお菓子に手を出していいのかもわからない。おいしそうだが、きっと今食べても味なんかしないに違いない。

どうしていいのかわからないので、お茶を飲む。

だが、かわいらしいティーカップに注がれたお茶はあっという間に底が見えてしまった。

それを見て、何とも優雅な立ち振る舞いで新しいお茶を注いでくれたお見合い相手に、少なからず驚く。

「あ、ありがとうございます」

「いえ」

会話が続かない。

こういう時は、こちらが話をふって相手を楽しませるのだろうが、いかんせん、自分は引きこもりで世間に疎い。ついでに女性受けしない面をしていることは自分自身自覚している。女性と話すのもいつ以来かわからない。


・・・アニメの話とかならたくさんできるんだけどね。


さすがにこの場で話すことじゃない。わかっているから口をつぐむ。するとさらに言葉は出ない。

相手をちらりと盗み見る。

目を合わせてはいけないのではないかと思わせるような美貌に、洗練された装い。ついでに、一つ一つの動作までが美しく、人間じゃないのではないかと思ってしまう。いや、むしろ人間じゃないだろ。彼女はきっと自動人形だ。

それにくらべ、自分は。用意された椅子も茶器も子供用のおままごとと思わせるような躯体に、普通の人間の3倍ほどある横幅(ほほ脂肪)。

今日はこの席のために身だしなみを整えたが、普段はとても見られたものではない。

外に出ないから、日に焼けず無駄に白い。そして、不摂生をしているから、吹き出物がひどい。少々長めの髪は目をほとんど覆っている。

自分が「白豚」とか「キモ男」とか呼ばれているのは知っていたし、それを甘んじて受けている自分もいる。そんな自分が自動人形のような彼女とお見合いしていること自体が問題だと思うのだ。・・・いや、お見合いと言いつつこれは決定事項の顔合わせ。もう結婚が決まっていると言ってもいい。なぜなら王命だから。

身分の釣り合いのみが、自分と彼女のつなぐものだ。

彼女はきっと、心の中で嘆いているに違いない。こんな男と結婚なんて、と。

そう思うとますます萎縮して言葉が出ない。

小さく縮こまっていると、彼女が口を開いた。

「いいお天気ですわね」

「へっはっ、そ、そ、そ、そうですね」

どもりすぎだろ、俺。

自分でも情けなくなるぐらい挙動不審だ。再び彼女を盗み見ると、扇で口元を隠しながらじっとこちらを見ていた彼女と目があった。慌てて目を伏せる。さっきから彼女の入れてくれたお茶しか視界に入ってない。


そのあと、一言二言話したと思うが、まったく記憶になく、彼女が帰る時間となった。

思わず安堵の息が出てしまい、彼女の視線に気づいてまた挙動不審になってしまった。

彼女の何とも言い難い視線が突き刺さる。

「では、閣下。またお茶に誘ってくださいませ」

そう言って優雅に礼を取る。

「はははははい、是非またいらしてください・・・」

次何てないだろ。

そう思いながら自分もどうにか彼女に挨拶をする。

去っていく彼女を見送って、車が見えなくなるとよろよろと自室に戻った。


結婚?彼女と??

「ははっ。いやまじでないだろー・・・ないよねー・・・?」

お気に入りのアニメのキャラであるフィギアを相手に話す。いつだって、自分の話相手は2次元だ。ついでに、嫁も2次元で終わると思っていた。

だが、兄が行方をくらまし、両親が相次いで亡くなって姉が嫁いでしまうと、跡取りが自分だけになってしまった。だから、一応爵位をついでいる。故に彼女は自分を「閣下」と呼ぶ。

名ばかりの当主なのだが・・・。


彼女の名は、レイラ=ユーテグス=リーフという。

自分より爵位が上の、大公家の人間だ。

大学時代、同じ学校に通っていたので、彼女の事は知っている。とても有名だった。彼女は王太子の婚約者だったのだ

彼女は本来公女(こうじょ)と呼ばれるところを、公女(ひめ)と呼ばれていた。その理由は、王家、大公家に暫く女性が生まれず、男性ばかりの中、生まれた彼女がそれはそれは大切にされていたからだ。

彼女と直接話したことはないが、非常にわがままで、気位の高い人だと聞いていた。彼女を見かけるときは、いつも周りに人が囲んでいて、人が少ないときは王太子といるときぐらいだった。

だが、こうして俺と結婚する羽目になったのは、王太子は彼女ではなく別の人を選んだからだそうだ。

彼女は、王太子の選んだ人に嫌がらせをしたのだという。

そして、どんな思惑が存在してたかは不明だが、自分と結婚をしろという王命が下った。王命だから、どうしようもない。 

噂では、彼女の高慢な態度に我慢の限界が来た王太子が、春の陽のような柔らかい笑顔をもつ女性に心移りをしたとかなんとか。

彼女のキツイ印象を与える顔立ちを思い出す。扇の向こうからじっと俺を見る瞳。確かに、怖いなとも思ったけれど、なんか思ってたのとも印象がちょっと違う。

色々と考えたが、何だかひどく疲れて、そのままソファーで寝てしまった。


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