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【詩集】日常から

鹿

作者: につき

興福寺や東大寺の境内の所々に

鹿せんべいが売られていますが

鹿せんべいは専売だから

一般では売ることはできません

でも鹿は結構なんでも食べるので

鹿せんべいでなくても寄ってきます

でも、鹿の身体にとって最適なおやつとは

やっぱり鹿せんべいなので

それを食べている鹿を見ていると和みます

大きな鹿はどんどん来るので

ついついたくさん食べさせてしまいがちですが

小さな鹿にも食べさせてやりたいのです

まだ角も生えない小鹿にこそ

そっと食べさせてやりたいのです


朝靄の中で群れが芝生の新芽を食べています

やがて塊となって大通りを渡ります

中央分離帯を越えて車線を跨いでいきます

車両は鹿に遠慮しなければなりません

彼らは天然記念物ですから

もしも轢いてしまったら

高額の罰金を支払わなければなりません

でもそういうわけでなくても

あの人慣れしてしまった美しい獣を

傷つけたくはないのです

長い睫毛の下の黒く濡れた瞳は

何を見ているのでしょう

すっと伸びている鼻筋の先にある

やっぱり黒く濡れた鼻先で

何を感じているのでしょう


その背にそっと触れてみました

鹿は少し身じろぎして嫌がるようでした

臆病で繊細な生き物です

毎年生え変わる角を持っています

瘤のようなものから

袋角となって

やがて鋭く枯れて

角切りで切られてしまいます

それは一年に一つ枝が増えるのです

枝の数が鹿の年齢なのです

彼らにすればそれは当たり前の角ですが

わたしたちにとってそれは鹿の象徴であって

その鹿が確かに生きていた証でもあります

お読み頂いてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 拝読しました。私は中学校の修学旅行で奈良公園で鹿を見て、お辞儀するのが可愛いなぁと思ったぐらいで、鹿について殆ど何も知りません。でもこの詩を読んで無性に鹿に会いたくなりました。特に二連目を…
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