なんか死んじゃったポイ
こんにちは。ブッポウソウです。
なんかいろいろあってこんな感じの作品ができました。
至らぬところもあると思いますがよろしくお願いします。
気が付いたら真っ白な部屋の中にいた。というか、空間?
とにかく真っ白な何かの中に。
「落ち着け、こういう時は素数を数えるんだ!1、3、5、7、9、」
「あの、ちょっといいですか?」
ぶつぶつとジョ○ョネタをしていると後ろから声をかけられた。
はっきり言って美声である。透明感のある声といえばいいのだろうか。
(これは、美女女神様キタ―――――――\( ゜∀゜)/――――――――!)
勢いのままに振り向くと!
そこには!
クトゥルフばりの怪物がいた。
「……………は?」
「あ、間違えちゃった。これじゃダメじゃん」
(いや、怪物がテヘペロとかしてても恐怖しか感じねぇ!)
大声で突っ込みたいが怪物が怖いので自重する。
ちなみに現在進行形でSUN値はバリバリ減っている。
「ちょっと待っててくださいねー」
怪物がぬらぬらとした触手で宙をたたくと何枚かのパネルが出現。
それを操作し始めた。
待つこと二分半。
「やー、お待たせしましたー。深き者ども用の設定と間違えちゃいましたよ」
「あ、そ、そうすか」
肌は透き通るような白色(決して青白くなんてないのだ)。瞬くような銀色。そして整った小顔!
……これでクトゥルフの格好をしていなければ………。
「わたしは生命管理官のナァカァラ・テーヤと申します。あの、まずあなたのお名前と年齢、誕生日を教えていただいてもよろしいでしょうか?」
「あ、はい。名前は生野藤助です。年齢は16。誕生日は○○年の6月9日です」
「生野藤助、16歳で検索っと………って、え?『NOT FOUND』?マジですか?」
なにやら不穏な言葉が聞こえた気がする。
「あの、俺って死んだんですよね?」
「あー、はい、そのはずなんですが……。えー、なんでー?」
まさか、もしかして、たぶん、
「人違い、じゃないですか?」
必死で探し物をしていたテーヤさんが固まった。
「あは、いや、そんな馬鹿な。うちの死神部隊はミスが少ないことで有名なんですよ?そんなことがあるわけが」
てーれーれーれー……
その時、ぼうけんのしょが消えたときの音が鳴り響いた。
「あ、すいません。ちょっと電話が……。もしもし?」
着メロだったらしい。……着メロ!?
パネルから、というよりは耳に直接響くような感じでデーザイさんの声が聞こえる。結構ハスキーな感じだ。
『あ、もしもし?テーヤ?』
「デーザイ課長。いま、ちょっと取り込んでおりまして……」
『時間は取らせないからー。テーヤんとこに人違いで死んじゃった子が行ってないかなー、と思って』
「やっぱ人違いだったの!?」
ショックだわ。これでは死に切れん。
『後ろでなんか叫んでるうっさいのって、その死んだ子?』
「あ、はい。そうです」
『ちょっと変わってくんない?』
「いいですけど。いくすけさん、でしたっけ」
「生野藤助です!」
この人本気で真面目に調べてたのか?
テーヤさんに言われるとおりにパネルを操作、デーザイさんとつないでもらう。
『どうも、生命管理官のデーザイです。今回はごめんねー?』
「いや、あの、はい」
『でさー、ほんとだったら君を生き返らせたいんだけど、君の体ってもう灰になってんだよねー』
「え、じゃあどうするんですか?」
まさか、このまま地獄行きとか……。
『さすがにこっちのミスで地獄送りにすんのも気が引けるしねー……。どうしよっか?』
いや、俺に聞かれても。というか地獄行きは確定なのか。
『テーヤ、なんか良い案ないー?』
「えーと、じゃああの、あれ、なんでしたっけ、今流行のめんどくさかったり、手違いは他の世界に丸投げしとけ!みたいなやつ」
『異世界転生のことー?』
「そう、それ!」
衝撃の事実!
異世界転生は問題の丸投げだった!!
なんか転生のロマンがなくなった……。
『そんな幻想はをぶち壊すー!』
「めちゃくちゃひでえ!」
そんな幻想○しを持ったフラグ建築士みたいなことを言われても。
「それで、転生、しますか?今回はこちらの手違いということでボーナスも付きますが」
「なんか焦ってません?」
「いかんせん異世界転生は初めてなものですから緊張してしまって」
「本音は?」
「そろそろ定時なので早く帰りたい」
「え、生命管理官てそんなにゆるくて大丈夫なの!?」
『なんかー、あたしんとこの係りだけ異様にゆるいんだよねー。なんでだろ?』
「類は友を呼ぶ、ってことわざ知ってますか」
『似た者同士はひかれやすいって意味だよねー。それがどうかした?』
「………いや、何でもないっす」
「あの、どうするのか決めてもらっていいですか」
「ちなみに異世界に行かない場合って天国に行けたりするんですか」
「せいぜいよくて煉獄での強制労働、3500年ですね」
「煉獄ってなんですか?」
『煉獄ってのはね、簡単に言うなら地獄のちょっとだけ甘いバージョンだねー。血の池地獄の血がトマトスープになってたり、針地獄の針が錐サイズから待ち針サイズになってたりとか』
「なんですかその地味に嫌な地獄」
『詳しいことは地獄ツアーズ社長のダンテさんに聞いてみて―』
「え、ダンテさんて神曲で有名なあのダンテさんですよね?今そんなことやってるんですか」
「活字離れが進んで神曲読んでない人が多いから神曲の宣伝と善意でやってるんですって。もちろんお金はとってますけど」
「せちがらいなぁ……」
地獄の沙汰も金次第ってガチだったんだ。
「あの、そろそろ本気で決めてもらっていいですか」
そういえばそんな話もあったな
「忘れてたんですか!?」
「いや、地獄事情が思ったより面白くて」
「え、えー……」
「あの、それで転生なんですが」
テーヤさんがやっとか、という感じに居住まいを正す。
「はい」
そして俺はとても爽やかに
「お断りします」
と言い切ったのだった。