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第九話 デモンストレーション

 二人で鑑識へと向かう。

「只野どこへ行くんだ?」

 歩きながら桜田さんは聞いて来ます。

「城東大学です」

「今度は大学ねえ」


 鑑識に入ると涼が待っていてくれた。

「はい。これ結果だよ。すべてに残されてたよ」

「ありがとう。じゃあ、いってきます」

 あ、ついいつものくせで言っちゃった。

「あ、はい」

 涼はなんとかしのいでくれました。

 まあ、いいんだけどね。優先的に鑑識してるのを何か言われるのが嫌だから、一応私たちのことは秘密なんだけど。


「ほら行くぞ只野!」

 桜田さんはだんだんと刑事魂に火がついてきたみたいです。くすぶってたのが嘘のよう。



 桜田さんの横で事件を整理。この事件の犯人落とすのは難しい。

 大学についてから、学部の案内を求めたところもう講義は終わっていてサークルなどが活動している時間だと言われた。

「陸上関係は?」

「あ、ああ。そこのグランド使うんであの赤い屋根ですよ。今日は活動してなかったような」

 という警備員さんの話は聞き流しそちらに向かう。今映像が来た。あの中だろう。私には映像の日付も時間もわからない。間に合えばいいけど……とにかくまだ事件にはなってない! 間に合いますように!

 突然走り出した私に桜田さんも一緒に走る。この人は本物の刑事だ。説明は後でということがよくわかっている。


 途中から桜田さんが私を抜いて行く。

「中に入って下さい。一刻も早く」

 という、息切れしている私を置いて桜田さんは赤い屋根の建物へと向かう。



 部室なのだろう。たどり着いた時、桜田さんは女の子を抱きかかえるようにしていた。良かった間にあった。息を整え女の子を見ると少し首に跡がある。

「間に合いました? 跡が」

「ああ、少し足を離そうと体重をかけていたからだと思う。持ち上げて首から外したから大丈夫だとは思うが」

「救急車を呼んだ方がいいですね。お願いできますか?」

 桜田さんには聞かせたくない話ができる、本人と。

「わかった。外に連れていくよ」

 桜田さんは部室の外に女の子を抱きかかえて連れ出した。


 天井には針金それもかなり硬いと思われる針金で首吊り台が作られていた。太さはかなり細い。体重を少しかけて赤い跡がつくぐらいだ。殺傷能力はかなり高いだろう。

 その向こう側に男がいる。この大学の学生だ。

「あ、あの僕は偶然見てただけなんです。その帰ってもいいですか?」

「冗談。雨宮君。君がやったのに帰せないよ」


 雨宮の顔色が変わる。

「あのどういう事か」

「君は高校時代にも自殺を目撃してる。高1の夏に同じクラスの男子生徒が屋上から飛び降りた。手すりを検証したら、あなたの汗からだと思われるDNAと掌紋が検出された。そして、目撃者もいた。あの時あなたの真似をしてその生徒が飛び降りたと証言があたった」

「あれも偶然なんです。やれと脅したんじゃない」

 雨宮は一瞬焦ったが飛び降りの話には自信があるのか不安な様子が消えた。

「そうね。あなたは脅したんじゃない。命令したのよね。こうするようにって。で、さっきもあの子にも、ここに首をいれるように命令した」

 私は針金で作られた首吊り台を指差しいった。

「誰がそんなこと言われてするんですか? 彼女の薬物検査でもやってくださいよ」

「薬物は検出されないわ。だけど、これ」

 とまた私は首吊りを指差す。

「これにはあなたの何かが残されている。あなたはデモンストレーションを行ったでしょうからね」


「デモンストレーションって」

 といいつつ男の子が首もとを触る。傷がないか確かめているんだろう。

「そうなのよね。あなたの力は弱い。とっても弱い」

 弱いという言葉に過剰反応しているようだ、雨宮の顔が赤くなる。

「力って」

「弱くて遠隔で操ったり言葉だけでは操れない。だから、いつもデモンストレーションをする必要があった」

「いつもって」

「あなたの高校で起きたさっきの飛び降りを含めた4件の自殺とここの大学生3名の自殺。すべてあなたが命令した」

「なんで!」

 ムキにはなっているが証明は不可能だと思っているんだろう、どこか余裕がある。

「一回目の時にあなたは目撃されてしまった、その時にその場に掌紋とDNAを残していた。そして検証のためにあなたの掌紋もDNAも警察に取られていた。だけど、あなたはバカにしてるよね? どうせバレないって」

「な、何を」

 まだまだ余裕があるな。


「さっきいった残りの6件の自殺したロープやナイフなんかにもあなたのDNAや指紋や掌紋がついてる。デモンストレーションする時や自殺道具を用意するのに、どうせバレないって手袋をしたりしてないんでしょ?」

「触ってたって証明出来ないよ!」

「だよねえ。無理なんだよね。でも、今のは?」

「は?」

「今の子が意識を取り戻したらなんて証言するかな?」

「……」


「自分でもわからないよね? 命令されている子がどういう記憶で動いてるのか。ただねえ。この子のことよほど恨んでるのか酷い自殺方法だねこれ」

 私はまたまた上を指差しいう。

「一言、言っとくと女の子は首吊り自殺を望まない。汚い死に方だって知ってるから。その上、これ、これじゃあ首が切れるか中途半端に残って最悪な死にざまだよね。自殺に誰も望まない死に方。憎しみのこもった者がする殺害方法だよね」


「だから、って俺は手を触れてない」

 自信がまだあるか。

「まあ、状況的には今回は完全に被害者が生きていて刑事に現場に入られた。今までも様々な自殺に証拠を残してきた。ただ見てたは通用しない。あなただと私が目をつけたんだから、それなりの状況証拠がある。一人目は自殺するタイプではなかった。成績優秀、人気もあり、彼女もいた、自殺理由なんてなにもなかった。あなたが彼を恨む理由はあった。日頃から言葉の暴力があった。その他の人も調べれば出てくるよね。自殺動機ではなくあなたに殺害される動機が」


 男の目が変わった。自分を愚弄されるのが我慢できないタイプだ。

「死ね!」

 と目の前で首吊りに自ら首を入れる。

「さあ、こうやるんだ。やれ、やるんだ」


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