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第七話 はじまる

「ただいまー」

 出勤初日にいきなりの逮捕。やっぱり疲れるよ。

 返事のしない家の中。仕方ないかお風呂にでも入ろう。




 ***




 明かりのある我が家ってやっぱりいいよな。もちろん人のいる明かりだ。ずっと人のいない大きな家にいたあの頃は誰もいない家に帰るのが当たり前だった。

 お、いい匂い。よその家かな? さすがに出勤初日に逮捕だ、疲れてるだろうしな。

 ドアの鍵を開けて中に入る。

「ただいまー」

「おかえり」

 あの、匂いはうちだったみたいだ。

「いい匂い。腹減った」

「じゃあ、食べよう、涼。私もお腹ペコペコだよー」

「唯、疲れてたんじゃない? こっちにまで噂きてたよ。あの16課が動いたって」

「まあ、でも、上手く行ったからね。なんかテンション上がって」

 食卓を見て、おーい!

「唯、テンション上がりすぎだ。二人でこんなに食べられないぞ」

「まあ、いいじゃない。初出勤お祝いしてよ。先に研修終わって勤務してた涼をずっと見てたんだから」

「はい。はい」

 二人とも席につく。

「じゃあ、唯、念願の16課出勤おめでとう。それと初逮捕も」

「うん。ありがとう」

「じゃあ、いただきます」

「いただきます」


 しばらくお腹の空いていた僕らは食べ続けた。が、やっぱり多いよ唯。

「もう無理。明日食べるから」

「私も無理」

 一瞬の間の次に笑い声。

「とうとうこんな日が来るなんて」

「結構、長かったあ」

「うなされる事はなくならないけど、まだ救われる?」

 唯に聞く。未来や過去を夢で見てうなされる唯を見ていて、一緒に住もうと言い出したのは僕だ。少しでも唯の救いになったらと思ったからだ。まあ、唯の父親の許可が出たのはつい最近、大学を卒業して、僕の研修が終わってからなんだけど。



 7年前に唯に出会い僕は救ってもらった。唯は他の人も救うため、刑事になると言った。

 僕はその唯の未来に乗って、鑑識官となった。僕たちはいつしか唯の秘密を共有しているからか、目標が同じだったからかまあ、こういう関係、恋人同士になった。

 あの頃の僕には考えられない事だ。そして、唯が僕を選んでくれたことも。まあ、これが最大の疑問なんだけど。



 朝、目覚ましに手を伸ばし止める。また唯がうなされている。唯には起こすなと言われている。大事な証拠を見逃しては困るから。僕はそっと唯を抱きしめるしかない。唯が目覚めるまで。


「おはよう」

「おはよ」



 今日がまたはじまる。唯の未来と過去を見る力を使って誰かを助けるために。


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