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第五話 犯人はわかってる

「ず、ずいぶん早かったね」

 課長は安心した様子だ。なにも問題なかったからだろうけど、まあ、少しの問題はあるんだけど。

「すみません課長。鑑識に依頼書を書くのにここに戻るのも時間かかるんで私が押しといたので。すみません」

「謝ってるが完全にハンコ持参で行ってたよな。聞いて知ってたんだよな?」

 桜田さんが話に入ってくる。

「まあね」

「あ、あの僕のハンコ?」

「必要になると思ってたんで、ほら」

 と私の宮野ハンコを見せる。

「只野君、あのね、判子はそういうことには……」

「5年前の中鳥公園の事件です。死者はゼロですが、刺されたショックから社会復帰できない人から、障害を持った者まで様々です。犯行も被害者が追いかけられるという事も起きてはいません。が、犯人は捕まっていない。放っておくんですか?今も被害者達は苦しんでいるのに」

「あ、いや、僕はそうは言ってないんだよ。ただ……」

「じゃあ、いいんですね。ありがとうございます。」

「あ、え、いや。そう」

 もう課長は何言ってるんだかわかってないだろう。

 桜田さんは一応被害者や、被害者家族がきた時のためだろう、ソファーセットに座り込む。

 戸田君は先ほど名乗り出て選ばれなかった事にほっとしたのか、このやり取りを聞いてすぐにデスクに向かっている。


 待っている間に、次の事件を探す。なかなかいい証拠品を押収していない事が多くて突破口が探しにくい。


 そんな私を腫れ物でも触る? いや、見るように見ている16課の人々。


 そろそろ時間だ。

「桜田さん行きますよ」

「また、俺ですか?」

 私の担当を変えて欲しい願望丸出しの桜田さんは課長に聞いてる。

 戸田君は下を見ている。もう立候補する気はないようだ。村瀬さんは消えてる。いつのまに!


「ああ、よろしくお願いするね」

 なんか深く桜田さんにお願いしてるけど。まあいいか。

「じゃあ、いってきます」

「……」

 桜田さん無言ですけど。

 途中意地悪して私を先にいかせて、全く違った場所に行ったら後悔したらしい。苛立った声をあげて前に出てきた。意地悪するから悪いんだ。もちろんワザとじゃない本気で迷った。

 すぐに地上へ出て鑑識の元へ。

 扉が開くと、涼が待ってたとばかりに飛んでくる。

「ゆ、只野さん、これ。これですべて立証出来ると思うよ」

 私は鑑識結果を見て満足した。これであいつを潰せる。

「ありがとう」

 振り返ると桜田さんが腕を組んでいる。

「今度はどこ行くんだ」

「犯人のところです」

 桜田さんの横を通り過ぎ扉の外に出る。

「おい、犯人がわかった、いや、わかってたのか?」

 お、鋭いなさすが刑事。

「そうです。証拠もそろった。だから、逮捕する。当然でしょう?」

「だが、なんで、さっき資料を見ただけのお前にわかるんだ」

「さっき見たからわかったのかも」

 本当は違うんだけど、わかった理由を話ても信じてはもらえない。未来や過去が見えるだなんて。そして犯行の一部始終を見ただなんて。

「どういう意味だ」

「この犯行は最後の犯行で完結している。そこから見れば、見方を変えれば違って見える」

 私は助手席に乗り込み話を続ける。

「例えば桜田さんは模型を作りたそうにしてたけど、横に開封済みなのに箱のふたが数センチ浮いてる箱があった。あれは作るのに失敗した模型だから、箱に戻したけれど形になってるから元の通り箱の中には戻らない」

「それは…」

 運転席に乗り込んでエンジンをかけた桜田さんは反論しようとした

「それに失敗したのは戦闘機のプラモ、今は戦国武将のプラモ、確かに戦争繋がりではあるけど、時代もそして人と飛行機じゃあ違いが大きすぎる。プラモ作りもイヤイヤなんでしょう?」

「俺の分析はいい。それよりも、行き先は?」

「ああ、そうでした」

 手帳の住所を見せる。

「なんでここに?」

「答えは最後にある。早く行ってください」

「なんで俺が」

 と、言いつつ桜田さんは向かってくれた。

「いったいなにをやらかしたんです?」

「何の話だ?」

「一課あたりから来たんでしょ?」

「……」

 図星のようだ。

「まあ、いいですけど。私に当たるのやめてください」

「お前と違って積み重ねて上がって来たんだ」

「いいじゃないですか。私もここなんだし」

「経験を積んだら、いや時間が経てばすぐに異動だろう!?」

「いいえ。私はこの課にいますよ。自分で希望出したし」

 これは本当だ。私の能力を使えるのはこの課以外にない。

「なんでこんな課に」

「さっきも言いましたよ。苦しんでいる人がいる、捕まってない犯人がいる。って、それが理由です」

 これももちろん本心。

「お前変わってるな」

「人は皆他の人と変わってます」

「あのな」

「あ、これヒントですよ」

「はあ?」


 なんて会話の間に着いた。急いでいたのには訳がある。犯人に逃げられたら捕まえられないから。私の能力でも無理だろう。証拠が意味をなさなくなるかもしれないから。

「ここだけど。本当にここに行くのか?」

「はい。行きましょう」

 車を降りる。

 捕まえるには桜田さん居ない方が都合が良いんだけどなあ。話しやすいから。

 インターフォン押す。

「はい。どちらさまですかあ」

 インターフォンのカメラに警察手帳を見せつける。

「警察のものですが、今よろしいでしょうか?」

「あ、少しお待ちください」

「只野!俺は知らんからな」

 ガチャとドアが開く。

「何のご用でしょうか?あのもしかして犯人が…」

「いえ、今それを捜査中でしてもう一度お話いいでしょうか?できれば中に入れていただければ…」

「あ、そうですか。はい、どうぞ」

 というわけで家の中にお邪魔する。狭いマンション暮らしなので部屋もあと一つといったところか。

「刑事の只野と言います。こっちが桜田です。今日、お伺いしたもは是非見ていただきたい証拠が出てきたものですから」


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