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第十三話 涼のお手柄

 ファイルは持って帰れない。何かのヒントはないか、家で手帳を見る。

「唯、それ何の事件?」

「え? 8年前の夏に起きた連続ビルの壁落書き事件」

「ん? あ! それ確かビルの中の壁が真っ赤に塗られてるって事件だろ?なんかの噂かと思ってたら、友達のお父さんの会社もやられてさ、直すのにもう一回上から塗り直して大変だったって。夏場だし匂いが室内だから凄くって仕事どころじゃって……唯聞いてる?」

「涼、最高!!」

「うわ! 何だよ飛びついてきて」

 涼の首に絡みつき

「絶対に捕まえてやる」

「え? 僕を?」



 翌日は涼と桜田さんと三人で被害にあったビルをまわった。

「只野あと何箇所だー?」

「えーっと16ですね。まだ半分ですね」

「……唯キツイんだけど」

「頑張って涼!」

 もうこの際、名前だなんだ気にしない。ひたすら証拠探しにビルを回り、その場所から証拠になる物を採取する。数も多いし、年月も経っている上に、確実に全ての場所から証拠を取らないといけない。思っている以上にハードな一日だった。涼を一日中借り切ってるんで文句言われそうだなあ。


 そして、いつもは動かない二人にも動いてもらった。村瀬さんと戸田君にも証拠の回収を頼んだ。

 途中で課長が小言を言いながらも証拠の受け取りと鑑識への配達を繰り返してくれる。


 こうして16課総出でやったのは時間が問題だったから。犯人にこのことを知られる可能性が高いから。


 鑑識に戻り愚痴を言われながらも、鑑識の人ってなんだか職人気質だからかみんなムキになってやってくれてる。難しい程燃えるのかな? そして村瀬さんたちが持ち帰った物と比べる。あちこちで歓声があがる。まさかの繋がりに驚いている。私と涼以外は。何とか出来上がった証拠!

「いってきます」

 鑑識のみんなが固唾を飲んで見守る中、私と桜田さんは向う。この8年前の事件を解決するために。



 コンコン



「社長、刑事さんがお見えになりました。どうしてもとおっしゃ……」

 もう後は言わせない。ずかずかと中に入って行く。桜田さんも同じようにする。


「失礼します。只野といいます」

「桜田です」

 やせていて課長と同じぐらいの年配の男性がいる。

「なんでしょう?急に」

「8年前の事件でお伺いしました」

「8年前? ほうなんでしょう? かなり前だ。うちで警備してたビルの事でしょうか?」

 そうここは羽田警備会社。目の前にいるのはそこの社長だ。

「そうです。8年前に起こった連続落書き事件です」

「ああ、あれですか。そうなんですよ。それで契約を切られたビルが多くてあの後困りましたよ」

「被害にあったビルの数は覚えてますか?」

 羽田社長は遠くを見る目である。

「確か12でしたかな」

「正解です。記憶が薄れてたようですが正解です」

「言われて思い出しましたよ」

 まだニコニコ笑顔を貼り付けてる。

「では、16年前の事は覚えてますか?」

 ここで貼り付いた笑顔は凍りついた。

「あの、なんのご用で?」

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