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第十二話 都市伝説

 今日もファイルと手帳で格闘してる。あ、これ……そういえば。ここには殺人、殺人未遂、失踪、自殺など大きな事件ばかりで、そういえば手帳に該当するものがないものがあった。

「すみません。器物破損とか落書きとかはどこにファイルあるんです?」

 課長ではなく桜田さんに聞く。

「あ、こっち」

 桜田さんに聞きに行ってはじめて気づいた。プラモデル作りからパソコンで何かやるってるんだと思っていたら、さっき覗いたら過去の事件を独自に洗い直していた。課長が私に気を取られてる隙に桜田さんは桜田さんで頑張っていたんだ。

 また、迷子になりそうな道を通り、25課って書かれたところに来た。いったいここには何課あるの?


「失礼します!」

 え? 人いるの?

「失礼します」

 と、私も言って入ると奥の方に一人。え! 一人? 辛い課だ。

「ファイル拝見させてもらいます」

「はい。どうぞ」

 うわ、喋った。いや人だけど、固まってるかの様に見えて。

「只野、何年前だ?」

「あ、はい」

 手帳を広げ見る。

「8年前です。多分夏。落書きです。会社の壁が一面真っ赤に塗られている。それが毎夜の様に続いて。警備を強化しておさまると、近くの別のビルに移る。夏が終わる頃になくなったっていう事件なんですけど」

「なんだよ、その都市伝説っぽいのはそんなのあったか?」

「ありました。確かに都市伝説って言われてましたけど」

 私が高校生の頃だ。夢に見るまでは友達が噂していたただの都市伝説だった。

「ああ、それね」

 と、奥の25課、課長? が立ちあがり一番奥からファイルを持ってきた。かなりの量だ。

 桜田さんが慌てて取りに行く。私も。

「凄い量ですね」

「ああ、ビルが何件もやられてその度に届けられてるからね」

「これ、お借りしてもいいですか?」

「あ、いいよ。じゃあ、書いておくから。16課の桜田君と只野さん」

 あれ? 名乗ってないよね? 私達。

「行くぞ。只野。」

 何か言いそうな私に、桜田さんがすかさず言います。


「失礼しました」

「失礼しました」

 両手がふさがってるので何とか扉をあけて廊下へと出る。

「あのー」

「しっ!」

 まだダメなようだ。



 また迷路のような道を行く。

「あの人は謎なんだ。ずっと一人でいるのに署内全部にやたらに詳しい」

「いかにも謎って感じだった」

 わからないものは怖いんだよな。


 16課に山のようなファイルを持って帰り、また課長の小言を聞きながら、いや聞き流しながら、ファイルと手帳を見る。手帳に整理し今度はこの課のファイルへと。

「まだ、広げるのかな? 只野君?」

 という課長の声は私に届いてるけど、関係ない。見つけた! やっと一人。

 時間がどんどんと過ぎて行く。肝心なピースはどこだ? あ、そうか。

 膨大な量に膨れ上がったファイルを後にして、パソコンに向う。

「唯野君? これは終わったのかな?」

 私が広げたファイルの山を指して課長は言う。

「まだです。触らないでください」

 見つけた。最後のピース。だけど、どう証明しよう。全ては消えてる……

 ん? もう一度! ファイルを見直す。あー、何処かにないの?

「只野君。もうそのへんで時間も時間だし」

 ああ、もう時間切れ。

 ファイルを広げたまま帰る。

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