第十一話 希望の光
今日も課長はめげずに私に小言を言い続ける。まあ、あの事件の後じゃあ……って、あれからもう何ヶ月も経ってます。暑い夏も過ぎ木枯らし舞う季節も過ぎてすっかり冬になってる。だんだんと事件解決が難しくあれから3人逮捕できたものの一人には証拠不十分で逃げられてしまった。
今日もファイルと手帳の格闘してる後ろで課長の小言は止まらない。もう何言われても何も聞こえないぐらいになってるけど。
あの証拠不十分は痛かった。犯人に逃げられてしまった……というだけでは済まない。今後の犯罪をもっと巧妙にする可能性がグッと高まったから。それもあってか最近動く決断が取れずにいる。どうすれば確定出来るのか、犯罪者が犯罪者なだけに今の司法の元で裁くのは難しい。
今日も空振りで家に帰る。あ、今日は涼が先だ。
「ただいまー」
「おかえり」
いつものこのやり取りで疲れが飛ぶ。ん? なんかサラリーマンのお父さんみたい?
夢をみた。過去か未来の映像を私はたいていは夢で見る。この間の事件のように白昼、急に入って来る事もある。最初は大変だった。あまりの映像に倒れたこともある。
どこだろう。雪が降ってる。冬だな。あ、クリスマスツリーが飾っている家が見えた。クリスマスシーズンか。
一軒の家に急に映像が動く。女の子、高校生くらいかな雪の中グルグルまわっている。嬉しそうなのに目からは涙が止まらない。彼女を見てしばらくなぜか幸福な気分になる。と、そばに二人の男の子が見えた。ん? 手紙。男の子の一人が持っている手紙にズームされる。
朝の光。
目が覚めた。
「唯、大丈夫?」
私は頬に手をやり、泣いていた事に気づいた。
「唯?」
「大丈夫。なんか夢とシンクロしたのか、夢の中の子が泣いていて。でも、悲しい涙じゃなくて嬉し涙」
「そう、ならいいんだけど。唯の夢でいい夢って珍しいね」
「そうだね。珍しいっていうか、はじめてかな」
そう、はじめてでそして終わり。世界の終わりの終わりは、それはいつのことだろう。朝の光が希望の光にみえた。




