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婚約者(偽)。

こんにちはこんばんはおはようございますいい加減この始まりも飽きましたのでこれで最後にしようと思いますどうも朝倉透です。


ただいま私は大変困惑しております。


というのも、大好きで優しくて可愛らしいマジ女神な彩香さんが私の腕に抱きついて勇者様に対峙しているからです。

その視線の先では勇者様がぽかーんと口を半開きにしています。っぷ、だっさ…すみませんこれはどうでもよかったですね。


えーと、状況を整理しましょう。


まず、勇者様が一目惚れしたとかふざけた事を抜かして彩香さんに求婚しました。禿げろ。

当然彩香さんは断りました。はっきりばっさり真正面から拒絶しました。

なのに勇者様はなんともおめでたいスルースキルを爆発させて押し問答が続く事しばし。

突然彩香さんが自分には婚約者がいると言い出しました。

私は大ショックでした。大好きで大切な彩香さんが恋人を作り、しかもそれを私に隠していたなんて。

あまりの出来事に軽く泣きそうになりましたが、次の瞬間彼女は私の元へ駆けよってきました。

そして現在。私の腕は彩香さんに抱え込まれています。




え、どういうこったい?




正直内心驚きすぎて大混乱というか恐慌状態に近いのですが、顔面筋は常の如く一ミリたりとも動いていません。




「私は、この人が好きなんです!ですから貴方の求婚は受けられません!」




横で彩香さんの必死な叫び声が響いて、ようやく私は現実に戻ってきました。

ちらりと彼女に視線をやれば「話を合わせてお願いお願いお願いお願い!」という視線を頂きました。

なるほど。つまり勇者様の求婚を断るために偽婚約者を演じてくれと。

確かに私は見た目男。しかも彩香さんの同居人。仮に勇者様が私達が恋人同士である証拠を見せろと言ってきても山ほどありますね。この間買ったばかりのおそろいのマグカップなんていいかもしれません。勇者様はさぞかし悔しがる事でしょう。考えるだけで愉快です。

それに村の男性を頼るのは無理がありすぎました。なにせ彩香さんは村のマドンナ。むしろ女神。

そんな彼女が下手に『この人が好きなんです!』なんて言ったりしたら相手は天まで舞い上がるに決まっています。勇者様を追い返した後で別の求婚者が爆誕する事請け合いです。厄介です。

その点からいっても私は最適ですね。なにせ彩香さんの事は大好きですが恋愛対象にはもちろんなりません―――合点です。

目だけでそう答えて視線を元に戻せば、勇者様は明らかに不機嫌そうに突っ立っていました。

その向こうで村の人達が驚きに固まっています。そりゃーそうでしょう、全員私が女であると知っていますからね。そんな彼らを、勇者様の取り巻き御一行様が訝しげに見つめています。

…まずいですね。村人たちのリアクションについて彼らを納得させるだけの理由を考えないといけません。


「恋人が求婚されているというのに止めにも入らないとは、情けない。こんな男に貴女を任せてはおけません」


人が考えを巡らせている途中だというのに無遠慮にくっちゃべってんじゃないですよコノヤロウ。というか貴方、村人たちのリアクションスルーなんですか。どこに目ぇ付けてるんです。

思いっきりやれやれみたいな顔してますが貴方の方が…いえ、そこ突っ込まないほうがこちらとしても都合がいいのでスルーしましょう。


「失礼。私が名乗り出なかったのは、私達の関係がつい先日成ったばかりで、彼女が正式に婚約するまで村の方達には秘密にしたいと言ったからです。もちろん、本気で貴方が彼女を連れていこうとしたら是が非でも止めに入るつもりでしたよ」


そして掴まれていた腕をそっと外し、代わりに彩香さんの腰を抱き寄せました。


「私は彼女を愛しています。たとえ相手が勇者様であろうと、渡すつもりは毛頭ない。どうぞお引き取り下さい」


その台詞に視界の端で彩香さんが頬を染めているように見えるんですが、気のせいですよね。

村娘さん達からは黄色い悲鳴があがったんですが何故でしょう。

頭に疑問符を浮かべながら勇者様を真っ直ぐに見つめていると、彼は一瞬悔しそうに顔を歪ませ、そして呟きました。


「…そういう事なら仕方ない」


あ、なんだ良かったやっと話が通じ―――


「彼女をかけて決闘を申し込む!」


てませんねそうですよね期待した私が馬鹿でしたサーセン。



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