第十六話 飛竜の洗礼
「クェェェェェェッ!!」
イャンクックが地面を蹴った。
予想以上に速い。
ナインはすぐに横へ回避した。
次の瞬間。
巨大なクチバシが先ほどまで立っていた場所を貫く。
ドゴッ!!
土が吹き飛ぶ。
「うわっ!?」
ナインは思わず目を見開いた。
重い。
速い。
そして大きい。
アオアシラとは全く違う相手だった。
だが。
戦える。
そう感じた。
熊牙刀を構える。
イャンクックが再び突進してくる。
今度は冷静だった。
身体を半歩ずらす。
通り過ぎる瞬間。
ザシュッ!!
後ろ脚へ一撃。
「クェッ!?」
イャンクックが鳴く。
確かな手応え。
ナインは距離を取った。
その時。
イャンクックが大きく口を開く。
喉の奥が赤く光った。
「えっ?」
直感が警鐘を鳴らす。
次の瞬間。
ボォォォッ!!
火球が飛んできた。
「うわぁっ!?」
慌てて前転回避。
火球が背後の木へ直撃する。
ドンッ!!
爆発。
木の表面が黒く焦げた。
「火吐いた!?」
資料では知っていた。
だが実際に見るのは初めてだった。
飛竜種。
その危険性を改めて理解する。
イャンクックが追撃してくる。
突進。
尻尾。
クチバシ。
攻撃が途切れない。
ナインは回避に集中する。
だが。
ただ避けているだけでは勝てない。
攻撃しなければ。
イャンクックが再び火球を吐こうとした。
その瞬間。
ナインは踏み込む。
「そこ!」
熊牙刀を振り上げる。
ザンッ!!
クチバシへ直撃。
「クェェェッ!?」
イャンクックが怯む。
さらに追撃。
ザシュッ!!
ザシュッ!!
首元と脚を斬る。
飛び退く。
欲張らない。
アオアシラ戦で学んだことだった。
数分後。
イャンクックの身体には少しずつ傷が増えていた。
ナインも無傷ではない。
肩を掠められた。
腕にも擦り傷がある。
だが戦える。
むしろ。
少しずつ相手の動きが見えてきた。
「なるほど」
ナインは息を整える。
「火球の前は必ず口が光る」
「突進の前は首が下がる」
癖が分かる。
戦いながら学習していた。
それがナインの強みだった。
イャンクックが怒る。
耳が大きく広がった。
「クェェェェェェッ!!」
地面を蹴る。
今までより速い。
怒り状態だ。
ナインの表情が引き締まる。
ここからが本番だった。
だが。
その口元には笑みも浮かんでいた。
強敵だ。
だから面白い。
熊牙刀を構える。
飛竜種イャンクック。
新人ハンター最大級の試練は、まだ始まったばかりだった。




