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第一話 ゲームの終わりと、異世界のはじまり

第一話 ゲームの終わりと、異世界のはじまり


 世界格闘ゲーム大会、決勝前日。

 タケルはホテルの一室にこもり、無言でコントローラーを握っていた。


 勝ちたい。

 それだけを考えて、何時間も練習を続けていた。


「……もう一回。あと一戦だけ」


 目の下には濃いクマ。

 限界はとうに越えていた。それでも手は止まらない。


 だが次の瞬間、視界がぐにゃりと歪んだ。


 音も、光も、すべてが遠のいていく。

 最後に浮かんだのは一緒に遊んでた仲間たちの笑顔だった。


◇◇◇


「……ここは?」


 気づけば、真っ白な空間に立っていた。

 目の前には、光をまとった女性が浮かんでいる。


 女神——そう呼ぶしかなかった。


「タケルさま。あなたは、死んでしまいました」


「……は?」


 理解が追いつかない。思わず自分の手を見つめる。


「嘘だろ……? 決勝、明日なんだぞ……! まだ……やり残したことがあるのに……!」


 喉の奥から、嗚咽が漏れた。

 涙がこぼれ、ホテルの練習部屋、友人たちの笑い声が脳裏をよぎる。


 女神は静かにタケルを見つめていた。


「タケルさん。あなたには“この先の旅”が必要です」


「旅……?」


「はい。あなたが栄光を掴むために」


 そう言うと、女神は右手を掲げた。

 光がタケルを包み込む。


「授けましょう。《コントロール》という力を」


「コントロール……?」


 その言葉を最後に、視界が白に染まった。


◇◇◇


 ——風の音がした。


「……森?」


 タケルは見知らぬ大樹の下で目を覚ました。

 土の匂い、鳥の鳴き声、肌を撫でる風。どれも現実そのものだった。


「夢……じゃないのか……」


 状況を整理しようとする中、ふと女神の言葉を思い出す。


「《コントロール》……」


 呟いた瞬間、目の前に光のような“コントローラー”が現れた。


「うわ、マジか……」


 試しにレバーを倒したりボタンを押す。

何も起きない。


「……ゲームみたいだな」


 そう呟いた時、前方の茂みから“ぷるん”という音がした。

 青いスライムがぴょこぴょこと近づいてくる。


「スライム?……可愛いじゃん」


 タケルが油断して覗き込んだ瞬間、スライムが飛びついた。


「うおっ!? ちょ、やめ——!」


 反射的に手でガードする。

 すると、光のコントローラーから“糸のような線”が伸び、スライムと繋がった。


「……?、もしかして、これって——」


 レバーを倒す。スライムが同じ方向に動いた。

 ボタンを押すと、ピョンと跳ねる。


「操作できる……! そういうことか!」


 スキルの意味を理解し始めたタケル。

スライムで遊んでいると——


「グルルル……!」


 森の奥から、オオカミのような獣が現れた。


「やっば……!」


 咄嗟にスライムを操作して戦おうとしたが、オオカミの爪がスライムを一撃で貫く。

 スライムは光の粒になって消えた。


「マジかよ……!」


 逃げるしかなかった。必死に走る。

 しかし、走った先には崖。足を止めたタケルの背後から、唸り声が迫る。


「……助けてくれえええ!!」


 叫んだ。森の中で誰もいないのは分かっていたのに。

 

叫ぶのと同時にオオカミがこちらに向かって全速力で走ってきた。


 死を覚悟して目を閉じた——


「大丈夫ですか!」


 声がした。

 タケルが振り向くと、20歳前後の青年が、オオカミを押さえ込んでいた。


「今のうちに、逃げて!」


 タケルは立ち上がるが、オオカミは暴れ出し、青年の拘束を振りほどいた。

 茂みの奥から、さらに五匹のオオカミが姿を現す。


「うそだろ……増えてる……!」


「まずいな……!」


 青年が腰の剣を抜こうとする。だが、その手は震えていた。


 タケルは思い出す。

 ——やり残したことがあるのに。


「おい!」


「えっ?」


「説明してる時間が無いが俺を信じてくれ!」


 タケルの覚悟を受け取った青年が頷くと

 タケルはスキルを発動した。


「《コントロール》!」


 光の糸が青年へと繋がる。

 そして、タケルの手が動くと——青年の身体も動いた。


「なっ……!?」


 レバーを前へ。青年が踏み込み、剣を振る。

 オオカミが一匹、二匹と倒れていく。

 ボタンを押すたびに、斬撃が閃いた。


「一体これは……身体が勝手に……!」


 最後の一匹を斬り伏せ、戦いが終わる。


「……はぁ……君は、一体何者なんだ……」


 青年が息を荒げながら呟いたその時、森の奥から叫び声と地響きがした。


「……まさか、オーガ!?」


 青年の顔が青ざめる。

 木々をなぎ倒して現れたのは、体長八メートルはある鬼のようや化物。


「流石に厳しいか……」


 青年が震える中、タケルの目の前にはウィンドウが浮かんでいた。

 矢印とボタン、そして“技名”が表示されている。


「なるほど…見せてやるよ。——練習の成果を!」


そう呟くと同時にオーガは青年に向かって拳を振り下ろす


 タケルは瞬時にレバーを回し、ボタンを押す。

 青年の剣が光を帯び、オーガの拳を弾き返す。


「な、何が起きてるんだ……!」


 さらにタケルが追加入力。

 剣が眩い光を放ち、オーガを斬り裂いた。

 轟音と共に、化物は光に包まれ、消滅した。


 静寂。森の風だけが吹き抜ける。


「……一体、どうなってるんだ……」


 青年が呟くと、タケルは笑って言った。


「俺のスキルはコントロール。これで誰かを操作することが出来る」


 青年はしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。


「名前をまだ言ってなかったね。僕はジョッシュ。よろしく」


青年は続けて話す——


「……すごいな、君のその力。僕のスキルはまだ分からないけど——」


 ジョッシュは少し視線を落とし、呟いた。


「でも、僕の“職業”なら分かる。……《勇者》なんだ」


 タケルは目を見開いた。


 こうして、格闘ゲーマーの俺と勇者を名乗るジョッシュの冒険が始まった——。

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