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プロローグ:悪とは何か?

シックなラウンジ風の会場。

落ち着いた照明が、深紅のカーペットと黒い革張りの椅子を照らしている。

壁には古びた世界地図と、いくつかの不穏な歴史的写真が飾られている。

テーブルの中央にはクリスタルのデカンタが置かれ、ウイスキーグラスが3つ並べられている。


司会のあすかが、微笑みを湛えながら舞台中央に立つ。彼女の姿は洗練されており、落ち着いた黒のスーツが知的な印象を与える。


「皆さん、ようこそ。今夜の対談は、人類が長きにわたって問うてきた問題――『悪とは何か?』について考えていきます。

私たちは日常的に『悪』という言葉を使いますが、その定義は人それぞれ異なります。権力を振るう者が悪なのか、暴力を用いる者が悪なのか、あるいは道徳の枠組みそのものが幻想なのか――。

そこで、本日は特別なゲストをお招きしました。彼らはそれぞれの時代で『悪』として名を刻んできた人物たちです。」


あすかは、ゆっくりと視線を巡らせながら、一人ずつ紹介していく。


一人目:アドルフ・ヒトラー。

舞台の右手、やや硬い姿勢で座っている。端正な顔立ちに小さな口ひげ、軍服風のグレーのスーツ。背筋は真っ直ぐで、鋭い視線を向ける。


「まず紹介するのは、20世紀最大の独裁者と称される男、アドルフ・ヒトラー。

彼はドイツを統治し、かつて世界を戦争に巻き込みました。カリスマ的な演説と戦略的な政治手腕を持ち、歴史において比類なき悪名を刻んだ人物です。」


ヒトラーは頷き、低く静かな声で短く言葉を添える。


「私が行ったのは、ただ国家を立て直すことだった。それを悪と呼ぶかどうかは、歴史が決めることだろう。」


あすかは表情を崩さず、次の人物へと視線を移す。



二人目:アル・カポネ

中央の席には、大柄で風格のある男が座っている。白いスーツに赤いネクタイ、葉巻を指で回しながらリラックスした様子を見せる。顔には古傷があり、その傷跡すらも堂々とした雰囲気を醸し出している。


「あらゆる犯罪組織の頂点に立ち、禁酒法時代のシカゴを支配した男、アル・カポネ。

賄賂と暴力を駆使し、警察や政治家すら手中に収めた伝説のギャングです。彼の名前は、今でもアメリカン・マフィアの象徴として語り継がれています。」


カポネは葉巻をくわえ、笑いながら肩をすくめ、気怠そうに語る。


「悪って言葉はよぉ、使い方次第だろ? 俺はただ、ルールが曖昧な世界で一番うまくやっただけさ。悪とは何か? ビジネスってもんよ。」


あすかは微笑みを浮かべつつ、最後のゲストを紹介するために、ゆっくりと左へ視線を動かす。



三人目:ジョーカー

最も異質な存在が、左手の席に座っている。紫のスーツに緑の髪、真っ赤な唇に大きな笑みを浮かべた男――ジョーカーだ。彼は足を組み、リズミカルに指を鳴らしながら、こちらを見つめている。


「そして、最後に紹介するのは、ゴッサム・シティが生んだ――この男。

彼は犯罪の概念そのものを破壊し、無秩序と混沌を体現する存在、ジョーカーです。

善悪の基準を嘲笑い、人々の恐怖と狂気を楽しむ、最も予測不可能な犯罪者でしょう。」


ジョーカーはゆっくりと体を乗り出し、ニヤリと楽しそうに笑いながら言う。


「いやぁ、まさか俺がこんな高級な場に呼ばれるとはね!あんたたちは面白いなぁ、悪について語るんだって? いいねぇ、いいねぇ!悪ってのは、もっとこう……楽しくなくちゃ!」


あすかはジョーカーの言葉に軽く頷き、場を整えるように続ける。


「さて、これで今夜の登壇者がそろいました。

皆さんには、それぞれが考える『悪とは何か』について語っていただきます。悪は力か?恐怖か? あるいは、秩序の反逆なのか?

さらに、この対談の途中では特別ゲストにもリモートで参加していただきます。

特別ゲストが語る『悪の起源』とは、一体どんなものなのか……。」


あすかは、ひと呼吸置いてから続ける。


「では、まず最初のテーマから始めましょう。『悪とは、力なのか?』

権力を持つことが悪なのか、それとも力を行使することが悪なのか? それぞれの立場からお聞きします。」


深紅のカーペットの上に静寂が広がる。

ジョーカーが笑い、カポネが葉巻をくゆらせ、ヒトラーが鋭い視線を向ける。

――対談の幕が、ゆっくりと開かれた。

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