表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
十国十魔剣伝  作者: 禄之羽礼
序章
5/8

序章5話

カグツチは廃れた街を走っていた。

その街はクリオネッタ王国城下町。

辺りには人々が氷漬けにされて転々と転がっており、建物も崩れかけで、空も終末のように紫黒くなっている。

その中を走る。

「姫!!!姫!!!」

周囲を見渡しながら姫のことを探す。

走っている最中、国王、ハッセル、ラムチも氷漬けにされて転がっているが、それに気づかずにひたすらに走り続ける。

そして広場に着くとそこには大量に転がる氷像と、氷漬けにされたロスカがいた。

「姫!!!」

カグツチはそれを見て氷像に急いで走るが氷像には一向に近づくことができない。

それどころか前にも進まない。

加えて進まない走りに反比例するように氷像が空高く上がっていく。

恐怖と不安で汗が噴き出て、走るが一向に前に進むことはない。

そして氷像が豆粒ほどの高さに上がったタイミングで氷像は勢いよく落下する。

カグツチは驚愕しさらにスピードを上げるしかし前に進むことはない。

「何で!?何で!?」

氷像との距離は一向に縮まらずに少しずつ氷像のロスカは落下していく。

カグツチの中でスローモーションで時が進んでいきそれが更なる恐怖と汗を生む。

そしてスローモーションで氷像は地面へと接触し、中身のロスカごと氷像が勢いよく砕け散る。

その破片がカグツチに当たる。

「あ、あ、」

状況を飲み込みきれずに呆然と立ち尽くすカグツチ。

「うわあああああっ!!!」

状況をようやく理解し絶叫とともに崩れ落ちる。

「あ、あぁ………あぁ」

嗚咽とともに地面に這いつくばり涙を流すカグツチ。

しばらくうずくまった後にカグツチは腰の剣を抜く。

「………姫。あなたとは違い私は地獄に行きます。どうか私の命を持って姫を生まれ変わらせて………」

勢いよく剣を腹に突き立てるが、何者かがその剣を制止する。

カグツチが顔を上げると笑顔のロスカがいた。

手のひらで剣を掴んでいるため手からは血が流れている。

そしてカグツチに剣を持たせたままその剣を操り自分の首にその剣を当てる。

少しずつ剣は進んでいき、ロスカの首筋にも赤い線が出来ていく。

カグツチは自分の意志で体を動かすことができなかった。

スローモーションで進んでいくその光景に、言葉も出ずにただただ過呼吸を繰り返すカグツチ。

そして剣が進みきりロスカの頭がポトンと地面に落ちる。

そしてロスカの綺麗な瞳が鉛筆で塗りつぶしたかのようにぐるぐると黒いもやもやで覆われていく。

何かを言いたげにロスカの生首がじっと、塗りつぶされた眼でカグツチを見つめていた。



「うわあああああっ!!!」

カグツチは大声を上げて、目を覚まし勢いよく起き上がる。

白い濡れタオルがポトンと布団に落ちる。

その目には涙が流れていた。

体中から悪い汗が噴き出ている。

ふと横を見ると、窓から見える外の景色は明るくなっている

そして辺りを見渡し何かを探す。

そして居間の方に視線を止めるとハッセルとロスカが食卓を囲み座っており、ロスカの近くにラムチが立っている。

その光景を見てカグツチは昨日の出来事を思い出した。

カグツチら立ち上がり姫の近くにヨロヨロと近づいていく。

「姫………。姫………」

ゾンビのように進んでいく。

ハッセルは仏頂面で座り、ラムチはロスカの口元にスプーンでシチューを運んでいる。

ロスカは口元に運ばれた物を、小さく口を開け食べる。

「姫!?」

その姿を見てぼんやりした表情はすぐに変わり、姫のもとに駆け寄る。

「あらカグツチおはよう。大丈夫?うなされてたけど。」

「ずいぶんと回復したようだな」

ハッセルは席を立ちキッチンの方へ向かう

「姫!?今ご飯を!?」

「えぇ。口元に近づけるとちゃんとご飯は食べれるみたい。あと手を握ると握り返してもくれるよ」

ラムチはロスカの手を握るとロスカはゆっくりと手を握り返す。

「カグツチも握ってみれば?」

ラムチはニヤニヤとしながらカグツチは見る。

カグツチはビクッと驚き、固まる。

「………い、いえ。遠慮しておきます。ってそんなことより姫の状態は?何で2人ともそんなに冷静に!?」

カグツチはソワソワとしていた。

「うーん。」

ラムチは腕を組んで考えるように俯く。

「分からないのよね。今話したたこと以外は特に」

「………」

「まぁひとまず姫様はまだ生きてるってこと!カグツチが絶対に守り抜かないとってことだね!」

「………俺は………」

「カグツチ。今はまずは飯を食え。」

ハッセルは机にシチューとパンを置く。

「………ありがとう。いただきます」

2人の説得に応じカグツチも座り、食事を開始する。

「すまないが、今日から早速チューン王国へと向かってもらう。」

「………俺に姫のお側にいる資格なんてあるんだろうか?」

カグツチは俯き話し続ける。

「姫様を守れなかった。昨日と今日の夢の中で。2回も。今まではこんなこと………。こんな俺に姫を守る資格なんて………」

「なら姫を守らずにこのままにしておくか?」

「………え?」

「お前が動かなければ姫はこのままだぞ。」

「でも………」

「確かに姫を守れなかったのは護衛としては失格だろうな。」

ラムチがおいおいという顔をするのと、カグツチはさらに俯く。

「だがな。姫をこうした以上姫を元に戻す責任も一番あるのがお前だ。これは護衛であるお前の責務だ。」

「………」

「それに護衛騎士の任命権は姫にある。姫はお前を外す判断をしていないだろう。」

「………」

「お前が姫と同じ権限を持つなど………おこがましい。相応しくないと思うのなら責任を果たしたうえで姫に直接聞け。それが今お前がやる最優先事項だ。」

カグツチの脳裏にロスカの笑顔が浮かび意思を固める。

「………分かった。」

改めて意思を固めるカグツチ。

「旅の準備は進めてある。」

そう言って大きな布袋を取り出した

「馬車に乗って、チューン王国へと向かえ。遠征に必要な物は大体入れてある。」

そしてハッセルは物置へと向かい、木でできた車輪付きの椅子を持って来る。

「姫はこちらの椅子で移動をさせる。今は姫は自力で歩けない状態だからな」

ハッセルは止まらずに、布袋から地図を取り出し、机に広げる。

カグツチとラムチは食事をしながらその地図に注目する。

「城下町の西口を出て、道なりにまっすぐ進めばチューン王国だ。道も整備されているから迷うことはないだろう。」

「分かった」

カグツチは話を聞きながらシチューとパンをかきこんでいく。

「道中ノンストップで進むのは難しい。適当な村や街に入り街に入り宿は取ること。」

「分かった」

「それと」

再びハッセルはクリオネッタ王国の国章が入った封筒を取り出す。

「チューン国王向けの書状だ。これを国王に渡してくれ」

「分かった」

「飯を食べたら、準備を整え、すぐに出発するぞ」

「ごちそうさま。食べ終わった。すぐに準備する」

「早いな。」

「燃料だけ急いで拾ってくる」

カグツチは立ち上がるが、腰に着けていた布袋がないことに気づく。

「あれ?袋が?」

ハッセルは何かがたくさん入った、小さな布袋を机に置き、ジャラジャラとした音がなる。

袋を開けるとそこには樹の実が一面に入っていた。

「燃料は準備してある。」

一同は食事を終えて、馬車の中に積み込み出立する。

ロスカとラムチは荷台の中馬側に座り、カグツチが馬車の運転を行う。

またハッセルも城下町までは同行を行う。

森を進み、城下町へと出る。

昨日と変わらず、辺り一面凍らされた人々や建物、氷柱が町中に存在している。

馬車の音だけが城下町に響く。

城下町への西口へと進んでいく。

「そういえばラムチさんのご家族は?」

「多分皆凍ってる。私がここにいたって、何か出来るわけじゃないから、出来ることをやるよ」

「すまないな。ラムチ」

「いいのよ。遠出の旅とかしてみたかったし。チューン王国のグルメも気になるわ。あそこはシュワシュワのゼリーが美味しいって」

「おい。旅行じゃないぞ」

「少し位いいじゃない。こんな状況なんだし、姫様に美味しいものを食べさせてあげなきゃ。ねぇカグツチ」

カグツチは苦笑いをする。

「姫の幸せが最優先です。」

「おい」

「むしろハッセルこそ心配よ?一緒についてくれば?」

「国が不法に占拠される可能性がある。だから国は空けられん。今の俺とて大抵の奴らには遅れは取らん。」

「おー。流石はかつての騎士団長様。遅れ取られないようにね」

「誰に物を言ってる」

「ふふっ。再開できるのを楽しみにしてる」

「お前こそ。気をつけろよ」

ハッセルと馬車の中のラムチが微笑む。

カグツチは苦笑いをして、馬車を進める。

そして馬車は城下町の西口へと到着する。

西口にも立ったまま氷漬けにされた兵士が2人立ち続けている。

一旦馬車を止め、ハッセルとカグツチが馬車から降りる。

「さて。この国の未来はお前たちにかかっている。無理はしすぎずに。頼んだぞ。」

「うん。爺さんも気をつけて。」

ハッセルは敬礼を行う。

カグツチもその少し後に綺麗に敬礼を行う。

そんな姿を見てフフッと微笑むハッセル。

「立派に………いや。何でもない。」

「最後まで言ってあげなさいよ!」

馬車から野次が飛び、バツの悪そうな表情をする。

「じゃあ行ってきます」

西口の先にはうっすらと雪の積もった雪原が広がっている。

カグツチは馬に乗り、地図を片手に広げ、城下町を出立する。

馬は調子よく駆けていき、整備された道を陽陽と進んでいく。 

そんなカグツチ達を少しだけ不安げな表情でハッセルが見つめる。

ハッセルの様子も気にせずに、馬車はどんどんと進み、カグツチたちの姿は小さくなっていく。

カグツチ達の姿が見えなくなるまで、ハッセルは見つめ続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ