序章2話
全速力で森を駆け抜け街の入り口まで到着する。
街の姿を見てカグツチは驚愕の表情を浮かべ立ち止まる。
薄暗い街を見ると建物が全て氷漬けにされている。
町の中央にそびえ立つ城だけが、氷漬けにされず残っている。
人もドアを開けようとする人、街を歩く人など各々の生活の場面の氷漬けにされて、水色で透明な氷の中に覆われてしまっている。
入口にいる兵士2人も槍を持ち、直立不動のまま氷に覆われ、まるで時が止まっている。
カグツチの顔がみるみる青ざめていく。
「おい!大丈夫か?」
カグツチはきのみを取り出し、手に火を付けてを氷漬けされた兵士に当てる。
しかし氷は水すら流さず形も変わらず、まるで調理に使うフライパンのように微動だにしない
「何でだ………?全く溶けない」
カグツチは腰に携えた布袋から大量のクルミやどんぐりなどの実を取り出し氷漬けされた兵士の下にばらまく。
すると下から炎が出て氷を包む。
しかし氷に一切溶ける兆候はない。
やがてカグツチは炎を当てるのをやめた。
「………申し訳ない!」
カグツチは苦渋の表情を浮かべ城に向けて城下町を駆け始める。
カグツチは走りながらも周りを見渡すが、城下町にある建物や人など全てが氷漬けにされており、動く気配も全くない。
何も分からないまま氷漬けにされてしまったかのように、ただ静かに氷のオブジェクトとして街に点在している。
つい今日通った子どもたちとロスカの交流の場も凍りついており、今までの日常が壊れたことを暗示していた。
そして轟音と共に城の上の方に大きな氷の柱が
「クソ………!何でこんな!」
明らかな異常事態に段々と焦りの表情を強めながら城へと向かう。
「姫………!姫………!」
その瞳には焦燥からか、涙が浮かんでいた。
数刻前 クリオネッタ城玉座前。
王座までにはカーペットの一本道があり、その傍らに多数の兵士達が倒れ、氷漬けにされている。
そして今玉座前にいるのは怯えた表情を見せるロスカ
何か水色の剣を持つ国王。
妖艶で杖を持った白髪の美女の3人であった。
「奇襲成功♪これで後はそこの2人だけ」
「貴様………!よくもこの国の民たちを!この裏切り者めが!氷の魔剣ニヴラムにかけて…」
国王が腰に携えた剣を抜き、水色に煌めく若干歪な形をした氷のような剣を構える。
「はいはい」
妖艶な美女は杖を振るう。
国王の右腕は凍りつき、剣を床に落としてしまう。
「ぐっ…」
国王は一瞬うずくまるがすぐさま左腕で剣を取ろうとする。しかし
「がっ」
氷の塊が直撃し、国王の体が宙を舞う。
そして後ろの玉座にぶつかり、玉座の前に落下した。
「お父様!!!」
ロスカは玉座の国王に駆け寄る
「これで任務完了。流石は私。これが最強魔女ってことなのよね」
そんな姿に目もくれず、目の前に落ちた水色の剣をを手に取る氷の魔女。
手に取ると魔剣が水色に光輝く。
国王はゆっくりと顔を上げ、驚愕の表情を浮かべる
そんな魔剣を見つめ、にこりと笑う氷の魔女。
「綺麗な光。魔剣に選ばれたのかしら?嬉しい」
ロスカに補助されながら、痙攣しながらも辛うじて国王は起き上がる。
「貴様………!」
「あぁ。もういいわよ。これ持って帰って帰るから。国全部氷漬けにするのってやっぱり疲れるわ」
美女は剣を持ったまま手を振る。
「………魔剣を返せ」
「やだ」
「魔剣をどうするつもりだ………」
「集めるの」
「貴様………!魔剣を集めることがどういう意味を持つのか分かっているのか!」
ロスカは状況が分からず困惑の表象を浮かべる
「うん。だから私たちは魔剣を集めてるの。」
純粋な笑みを浮かべる氷の魔女。
「これから先、世界中に散らばる10個の魔剣を集めてね。今の世界を滅ぼしたいんだ!滅ぼした後にね。私氷の帝国を築こうかなって思ってるの」
まるで子供のように語りだす。
「私国王やったことないから、色々教えてくれる?」
無垢な表情で問いかける。
「ふざけるな。そんな戯言を。民を元に戻せ!」
「嫌よ。1回世界滅ぼした後に私の帝国の民になってもらうから。もうあなたのものじゃないのよ。」
「ふざけるな!民を何だと思ってるんだ!」
「私が凍りつかせたんだから私のものでしょ?」
「ふざけるな!お前は何を言っているんだ!」
美女はめんどくさそうな表情を浮かべる。
「あなた話が通じないね。もういいや」
そう言って手に持った剣を天に掲げる。
「氷の魔剣ニヴラム。全てを凍りつかせる魔剣。とんでもない魔剣って聞いたことあるけど、私の魔法とどっちが強いのかしら?」
玉座の床に大きな魔法陣が浮かび上がる。
「!」
「カグツチ………!」
目を瞑って怯えるロスカを国王は精一杯の力で突き飛ばす。
ロスカは突き飛ばされる刹那、国王がうっすらと優しい笑顔を浮かべているのを見て床に倒れる。
何かによって天井が突き破られ砂煙が上がる。
砂煙が止むとそこには玉座ごと大きな氷で氷漬けにされる国王がいた。
大きな氷は天井を突き破り外に露出する。
起き上がり、氷漬けになった国王を見て驚愕するロスカ。
「お父様………?」
フラフラと凍り付いた玉座に近づく。
「………いや。いやぁ!」
氷に縋り付いてポロポロと涙を流すロスカ。
「この魔剣凄い。私の魔法以上かも。」
そんな妖艶な歩き方でロスカの背後まで近づく。
ロスカは振り向き、悲しみと怯えとそして怒りの入り混じった複雑な表情を浮かべて氷の魔女を睨みつける。
「あなたは凍らせない。一人ぼっちで孤独を味わってみて」
振り向いて城の外へと歩く氷の魔女
「ま、待って!」
そんな魔女を震えた声で呼び止める。
氷の魔女は振り向く
「声震えてるわよ?ちょっと寒い?」
「ま、魔剣を返して!み、皆を下に戻して」
「やだ。私のものって言ってるでしょ?話聞いてた?あ、そういえば」
邪悪な笑みを浮かべる
「カグツチって誰?」
明らかに動揺の表情を見せるロスカ。
「カ、カグツチは………い、今はその、遠くに行っちゃった…私の幼馴染…」
「ふぅん。じゃああなたまだ一人ぼっちではないのね。今はどこにいるの?」
「………分からない」
「本当に?」
無言で頷くロスカ。
「ふぅん………。………じゃあ世界中を探して見つけ出して、氷漬けにしてこの国に送ってあげる。楽しみにしててね」
ロスカはゾッとした表情を見せるが、次の瞬間何故か少しだけ安堵が混じった表情に変わる。
そんなロスカには一切気づかず、表情を見ずに話を続ける。
「世界中から人一人探し出すなんて、やりたくないけどね。じゃあまたね。またいつか」
氷の魔女が振り向き去ろうとすると、氷の魔女の面前にカグツチが飛びかかり、斬りかかってきていた。
「は?」
氷の魔女は首元に向かってくる剣を小さな氷の壁を出して止める。
そんな止まった剣を支点にカグツチは氷の魔女の後ろへと回り込む。
そして布袋から複数の樹の実を取り出し投げる
樹の実は火の玉となり氷の魔女に向かう。
氷の魔女はそれを氷の壁で守りながら後ろへとジャンプして移動する。
カグツチは氷の魔女から目線を離さず、姫の前に立つ。
「姫!遅れてすみません!」
「カグツチ………!」
カグツチは決意を固めた表情で氷の魔女と対峙していた。




