4
みんなは見たことがあるだろうか。三途の川の向こうで手を振る自分の祖先らしき姿を。手招きをした…あれは…キレイなお姉さん?今そちらに行きまああす!躊躇なく川に飛び込もうとした僕にお姉さんが一言。
「あなたクラスは?」
「Fクラスです!」
「来ないで」
ガバッ 目が覚めた。先祖にすら拒否された。Fクラスってだけでそんなに拒否しないでも…。
____キーンコーンカーンコーン____
あれ?気づいたら僕は十字架に縛られている。僕…何かしたっけ?ってかそもそもこの十字架どこから出したの?
「起きたか。峰久。三途の川は見えたか?」
教壇で腕を組む男。鈴木圭、隣には秋山和彦を中心に野郎どもの輪ができている。ああそうだった。Fクラスだからって合コン拒否されたことを伝えたらなぜか殺されかけたんだ。
「渡ろうと思ったけど拒否されたよ。Fクラスだからって…」
なぜこんなにもFクラスは拒否され続けるんだろう。たしかにこの学校ではFクラスってのは落ちこぼれなのかもしれないけど、それはあくまでこの学校だからであって他の学校では優秀ってやつもこの中にはきっといる。ここまで嫌われる理由はないはずだ。
「なぁクズ野郎。お前は俺たちをバカにしているのか?」
もうクラスのリーダーになりつつある鈴木圭に早速クズ野郎宣言された。
「そのクズ野郎呼びはやめてくれないかな?僕には峰久って名前があるんだから」
「ゴミクソ人間臭男。いい加減にしろよ?」
「わかった。クズ野郎でいい。ぼくはそんなに臭くないからね。風呂にだってちゃんと…きちんと…たまに…入っている…。でもなんでみんなFクラスだからって理由であそこまで嫌うの?おかしくない?仮にも僕たちはエスバコール魔法学園の生徒なんだよ?」
「お前は何も知らないのか?」
「知らん。」
僕はこの学校を美人が多くて近いからって理由で選んだ人間なんだから、学校なんて大まかにしか調べていない。有名魔法学校ってことぐらいしか…
「俺らが言うのもなんだが…この学校のFクラスってのはな‥‥‥誰でも入れる落ちこぼれ集団の集まりなんだよ。魔法に才を持たないやつも勉強のできないやつも、本当に文字通り誰でも‥‥‥な。このエスバコール魔法学園は魔法学校としての最高と最低のどちらもある学校なんだ。」
「つまりお前はほぼ全ての魔法学校で最最最底辺だ。これからの俺らの足を引っ張るなよ。」
「お前らのどこに引っ張る足があるってんだ。もうどうしようもないでしょ。」
「本当に知らないのな。この学校にはクラス替えシステムがあるんだ。もしくは個人のクラス変更とか。だから成績で底辺クラスは上がろうとするように、上位クラスは下がらないようにここの人間は魔法と勉強を頑張るんだ。それに時折あるイベントも加味されるんだとかなんとか。他にも魔法バトルだったり学力勝負だったり色々…」
「なるほど!つまりまだ俺達には合コンの可能性は残っているってことか!!」
「まだそんな話してんのか!?」
『そういえばそうだな』
『たしかにそうじゃん』
『俺達にもまだ美女と合コンできるチャンスが!?』
Fクラスって誰でも入れるってのは本当のようだ。だって見るからにバカしかいないんだもん。まぁその最たる例が僕ってことなんだけども。
「それで?クラス替えってのはいつからできるの!?イベントはまだなの!?」
「一番早いイベントは…先生なんでしたっけ?」
後ろの方で十字架にくくられている僕の隣にはクラスの担任水野一郎ことゴリラがいる。巨漢でこの魔法世界に物理攻撃という名の暴力を持ち込んでいる怪物。
「あぁ今のところ新入生歓迎魔法大会かな?2週間後だ。」
「よし!その2週間後の新歓魔法大会で好成績を残せばきっと俺たちのクラスアップへの光が見えてくるはずだ!その時みんなにFクラスの強さを俺たちの存在を見せつけてやろうぜ!!」
「あぁ…でも別にクラスごとじゃなくても個人だったら時間があればいつでも出来る魔法学術対戦ってのがあるぞ。勝った方の要望を可能な限りかなえることができる契約がある。一度やったら期間を空けなきゃいけないがクラス変更も可能だ。」
「それを早く言わんかあああああい!!」
Fクラスの人間みんなが外に飛び出した。混雑しながらもその目には何者にも止められない意思が宿る。
なんてかっこつけた言い方をしてみたけど実際は‥‥‥
「「「「どけっ!!どけええっ!!」」」」
男どもの欲望の顔はひどく醜い。さっきまでのカッコつけた「俺たちの光が見えてくる!」的な一致団結コメントはどこに行ったのやら。
ちなみにこの学校はクラスごとに教室ではなく棟が与えられる。なにしろ有名魔法学校、金はある。落ちこぼれと言われるFクラスにも棟が与えられるんだ。上位クラスともなるとなんか設備が豪華らしいとも聞いた。ってそんなことよりも____
「だれか僕の縄を外してえええ!!僕もいきたああい!」