出会い
「それで、ウッドストーンか?颯太さんか?どっちの情報だ?」
「あぁ、その前にこれを渡しておくよ。」
市長は、懐から手紙を取り出した。
「これは?」
「私の古い友人が書いたものだ。読んでみるといい。」
ライトは、手紙を受け取り読んだ。
『初めまして、私は異世界で鉱石を研究している者だ。もし、ウッドストーンについて知りたかったら、異世界にあるクアッド山に行くといい。その山にならきっとあるだろう。健闘を祈る。
著者:K.T』
「なんだこりゃ?」
ライトは、首を傾げた。
「まぁ、とにかく行ってみたまえよ。場所は私が知っているから案内しよう。準備をしたらすぐに行こうじゃないか。」
「わかった。ウェルも連れて行くぞ?」
「もちろん構わないさ。ウェルちゃんにもよろしく伝えておいてくれないか?」
「了解。じゃあ、準備してくるわ。」
ライトは、自分の部屋に戻り、荷物をまとめた。「ウェル、これから出かけるぞ。」
「はい?どこにですか?」
「異世界のクアッド山だ。市長から情報があった。」
「わかりましたよ……」
ウェルは、ライトの準備を手伝った。
数分後、ライト達3人は市役所にいた。
「それでは、市長お願いします。」
「任せてくれたまえ。転移魔法を使うよ。」
市長が詠唱すると、足元に魔方陣が現れた。ライトとウェルは魔方陣の上に乗っている。
「よし、では行くよ。」
市長がそう言うと、2人の視界は真っ白になった。数秒経つと、景色が変わった。
「着いたよ。ここがクアッド山だよ。」
ライトとウェルは周りを見渡すと、辺り一面が草で覆われた森が広がっていた。
「ほぇ〜、なんかすごいところですね。」
「確かにな。てか、ここに本当にウッドストーンがあるのか?」
「それは分からない。わたしの友人の情報も当たる確率は20%くらいだ。でも0よりマシだろう?」
「それもそうだな。よし、行くか。」
ライトは、一歩踏み出した。その時、地面が揺れた。
ゴォーン……
「ん?」
ライトは、足を止めた。そして、ライト達の目の前に巨大な影が出現した。
「なんだ!?」
ライトは、その影の正体を見た。それは、岩のような皮膚を持ち、体長は約5メートル程のドラゴンの姿だった。
「あ、あれは!ロックドラゴン!!」
「なんだよ!あいつは!」
「くっ!逃げるしかない!」
3人はすぐに逃げ出した。しかし、その巨体からくるスピードは尋常ではなく、あっという間にライト達に近づいてきた。
「やばい!追い付かれる!」
ライトは、咄嵯にポケットに手を入れた。
「ウェル!市長!目を伏せてれよ!」
「はい!」
「あぁ!」
ライトは、ポケットから銃のようなものを出した。そして、引き金を引いた。
バァン!! 乾いた音と共に、眩しい光を放った。
グオォォォォッ!!!
ロックドラゴンは、光により怯んだ。
「今のうちに逃げろ!」
ライト達は、一目散に逃げた。
「ハァ……ハァ……ここまで来れば大丈夫か?」ライト達は、森の中で休んでいた。
「ええ、そうみたいです。」
ウェルは額の汗を拭いながら答えた。
「ふぅ……なんとか逃げ切れたようだね。」
「ライト…助かった…ありがとう。」市長は、息を整えながらお礼を言った。
「いえ、無事で何よりだ。」
ライトは真顔で返した。
「まさか、あんな化け物がこの世界にいるとは思わなかったよ。」
市長は苦笑いしながら言った。
「まったくだな。」ライトも同意した。
「あのー、さっきのは何ですか?凄い威力でしたが……」
ウェルが質問してきた。
「ああ、あの武器のことかい?あれは『閃光ガン』といって、強力な光を放つことができるんだ。」
「へー、便利なものがあるんですねぇ。」
そんな時、近くの茂みからガサガサという音がした。
「誰だ!」ライトは声をあげた。
茂みの中から出てきたのは、一人の男だった。「君たちはここで何をしているんだ?」
男は、ライト達を見て不思議そうな顔をして聞いた。
「あんたこそ、こんなところで何を?」
ライトは、男の格好を見ながら言った。
「俺は、この山の調査に来た研究者だ。」
「調査?」
「あぁ、最近この付近でモンスターが出るという噂を聞いてね。本当かどうか確かめにきたのだ。」
「なるほど、そういうことか。」
ライトは納得していた。
「君は、この辺の人間ではないな?」
「ええ、まぁちょっと色々ありまして。」
「そうか。君達はなぜこの山にいるんだ?」
「実はな……」ライト達は、事情を説明した。
「な、なるほど。そんなことがあったのか。」
「それで、ウッドストーンって鉱石を知らないか?俺達はその鉱石を探しているんだが。」
「ウッドストーンかぁ。噂で聞いたことはあるけど、よく知らんのよなぁ。」「そっか……。」ライトは少し肩を落とした。
「あぁ、すまない。役に立てなくて。」
「いやいや、気にしないでくれ。」
「あぁ、そうだ。せっかくだし、山頂まで一緒に行かないか?そこにも何かしらの情報はあるかもしれないしな。」
「おお、それはいい考えだ!」
ライトは、手を差し出し握手を求めた。すると、男は手を握った。
「よし、決まりだ。」
ライトと市長はウェルの方を振り向いた。ウェルは、呆れた表情をしていた。
ウェルはため息をついた。
「わかりましたよ。」
ライト達4人は、山頂を目指して歩き始めた。
ライト達が山を登り始めて1時間程経過した。ライトは疲れ果てていた。
「もう無理……休憩させて……」
ライトは、その場に座り込んだ。
「情けないですね。これくらいで弱音を吐いてどうするんですか?」
ウェルは、ライトを叱った。
「だって、結構登ったぞ?」
ライトは反論した。
「まあまあ、ライトくん。ウェルちゃんの言う通りだよ。休むならもう少し行ったところにしようじゃないか。」市長はライトをなだめて先に進むことを提案した。
「それもそうだな。」ライトは立ち上がった。
「それじゃあ、行きますか。」
ライト達は再び進み始めた。しばらく進むと、大きな湖が見えてきた。
「これは……すごいな。」ライトは、湖の光景に見惚れた。
「綺麗ですね……」
ウェルも見入っていた。
「ふむ、なかなか壮観だね。」
市長も関心していた。
4人は湖畔の近くで座ることにした。「いや〜、しかしすごいところだなここは。」ライトは辺りを見渡した。
「そうだな。」市長は相槌を打った。
「本当に、絶景ですよね〜。」ウェルは、空に浮かぶ太陽を見た。
すると研究者の男は、この場所の説明を始めた。
「ここが、この山で一番景色が美しい場所だよ。ここから見える景色は、私のお気に入りなんだ。」
「そうなのか。」
ライトは、改めて周りを見渡すと、木が一本もないことに気づいた。
「そういえば、ここには植物がないんだな?」ライトは聞いてみた。
「あぁ、それはこの山には『風竜』が住んでいるからだ。」
「『風竜』?」
「あぁ、風の魔力を持ったドラゴンだ。」
「ロックドラゴンとは違うのか?」「そうだな。似て非なるものだと思ってくれて構わない。」
「なるほどな。」ライトは理解した。
その時、突然強風が吹いた。
ビューーーーーーー!!!!
「うわっ!!」ライトは吹き飛ばされそうになったが、なんとか耐えた。
「なんだ!?」ライトは、前を見た。そこには、巨大なドラゴンの姿があった。
そのドラゴンは、体長約10メートル程の緑色のドラゴンだった。
「これが、風竜!?」
ライトは驚愕した。
「そうだ。私が言っていたドラゴンだ。」
市長も驚いていた。
「こいつが……」ライトは、銃を取り出した。
「おい!やめろ!」
ライトは制止された。
「なんで止めるんだよ!ドラゴンからは逃げなきゃやばいだろ!」ライトは男に怒鳴りつけた。
「あいつは、人を襲わないんだ!だから大丈夫だ!」
「そんなわけないだろ!現にあいつはこっちに向かってきてるだろ!」ライトは、銃を構えた。
すると、ウェルが立ち上がって叫んだ。
「ライトさん!落ち着いてください!このドラゴンは人を襲ったりするモンスターじゃないです!人を襲う目をしていません!」
「ウェル……?」ライトは、構えるのをやめた。
「どういうことだ?」市長は尋ねた。
「私は、モンスターの目は見れば危険かどうか大体分かります。このモンスターの目はとても穏やかです。」
ライトは、ウェルの話を聞いていた。
「ウェル……お前、そんな特技があるのか?」ライトは、ウェルを見て言った。
「はい。一応。」
ウェルは胸を張って言った。
ずっと一緒に仕事をしていたが知らなかった。
ウェルにこんな才能を持っていたなんて……ライトは、ウェルの意外な一面を知った気がした。
「確かに、敵意のようなものは全く感じられないな。」「市長も分かるのか?」市長もドラゴンの様子を見て言った。
「ああ、私も長年色々なモンスターと接してきたが、こんな目は初めて見た。」市長も同意した。
「それにしても大きいですね。あのサイズのドラゴンは、初めて見ましたよ。」ウェルは言った。
「あぁ、そうだな。」ライトも同意した。
すると、風竜はライト達の目の前で止まった。そして、ゆっくりと喋りだした。
「人の子よ、何用でここに来たのだ?」
低い声だった。「えーっと、俺はこの山にあるというウッドストーンという鉱石を探しに来たんだ。」ライトは答えた。
「ウッドストーンだと?なぜそのようなものを?」
風竜は不思議そうな顔をして聞いた。
「それは俺もよく分からないんだが、この世界で行方不明になっている男がこの鉱石を探しているそうなんだ。だから、行方不明者を探すために、その鉱石を追えば見つけられると思ったんだ。」ライトは説明をした。
「そうか……そういうことか……」
風竜は何かを考え込むように黙ってしまった。
「どうかしたのか?」ライトは心配になって聞いた。
「……」風竜は何も言わなかった。
「おい、どうしたんだ?」ライトが再度聞くと、風竜は口を開いた。
「実は、ウッドストーンについて知っていることがあるのだが……」
ライト達は驚いた。
「本当か!?教えてくれないか!?」ライトは身を乗り出して聞いた。
「だが、条件がある。」
「じょ、条件って?」ライトは聞き返した。
「我の願いを聞いてくれたら教えることを約束しよう。」
「わかった。どんなお願いだ?」ライトは覚悟を決めて聞いた。
「我が友となって欲しい。」
「「「「は?」」」」
ライト達は困惑していた。
「へ?それだけでいいのか?」ライトは拍子抜けしていた。
「あぁ、それだけだ。」
「本当にいいんですか?もっと他に要求してくると思っていたのですけど。」ウェルは疑問を口に出した。
「そんなことはしない。この山だと話し相手もいない。一人でずっと過ごしてきた。誰かが来れば、攻撃されたり逃げ出されたりしてきた。だから、寂しいという思いもあるのだ。」ライト達3人は顔を見合わせた。
「どうしますか?ライトさん?」ウェルはライトに意見を求めた。
「まあ、別にいいんじゃないか?何か問題あるか?」ライトはウェルに聞いてみた。
「いえ、特に問題はありませんけど……。」ウェルは戸惑っていた。
「よし、じゃあ契約成立だな。これからよろしく頼むぞ。」風竜は手を差し出してきた。
ライトは手を握った。
「こちらこそ、よろしくな。」
「うむ、ではまず自己紹介からしようではないか。」
「そうだな。」ライトは納得した。
「じゃあ、私から。」ウェルが名乗り出た。
「おぉ、君が人間側の代表者だな。」
「代表者……ですか?」ウェルは首を傾げた。
「違うのか?」風竜も首を傾げていた。
「いや、多分違いますね。」ライトは苦笑いをしながら言った。
「ウェルちゃん、とりあえず自己紹介した方がいいと思うよ。」市長はウェルに声をかけた。「あっ、はい!わかりました!」ウェルは慌てて返事をして、咳払いをした。
「コホンッ!それでは改めまして、私の名前はウェルと言います。職業は何でも屋レイズの助手です。よろしくお願いします。」ウェルは一礼した。
次に市長が自己紹介をした。「次は僕かな。僕はこの国の市長をしている者だ。名前はルイ・エルディアスと言う。」
「私は、ヴァン。研究者です。」
「最後に俺だな。俺は、ライトだ。どんな依頼も引き受ける、何でも屋レイズの所長をしている。一応、ウェルの上司だ。」ライトは簡潔に挨拶をした。
風竜は、ライトの方を見た。
「ライトと申すのか。覚えておこう。」
人間側人は風竜も同じように挨拶を始めた。
「我は、この山で暮らしてきた『風竜』のドラゴニアと言うものだ。長い名前なので、ドラドと呼んでくれて構わない。それと敬語もいらない。」
「分かったよ。よろしくな。ドラゴ!」ライトは了承した。
「うむ、それで良い。」
こうして、ライトは『風竜』のドラドと友達になった。
「しかし、まさかこんなところで新しい友人ができるとは思わなかったな。」ライトは感慨深く言った。
「そうだな。私もドラゴンは話せると思っていなかったよ。」市長も同意した。
「そうですね〜。でも、ライトさんはドラゴンともすぐに打ち解けることが出来ますよね。やっぱりすごいですよ。」ウェルも同意した。
「そんなことはないさ。」ライトは謙遜した。
「ふっ、お前は面白い奴だな。」ドラドはライトを見て笑った。
ライトもつられて笑顔になっていた。そして本題を切り出した…
「ところでドラゴ。本題に入りたい。ウッドストーンについてだ。」ライトは真剣に尋ねた。
すると、ドラドの顔つきが変わった。
「そうであったな……では、ウッドストーンのことを教える前に一つ聞きたいことがあるのだが……」
「なんだ?」ライトが聞き返す。
「お前は、ウッドストーンについてどこまで知っている?」
「どういうことだ?」ライトは眉をひそめた。
「お前は、ウッドストーンの正確な場所を知っているのか?」
ライトは言葉が出てこなかった。
「え?どういうことなんですか?」ウェルが尋ねた。
「つまり、ウッドストーンがどこにあるのか分からずに探し回っているのではないか?」
ライトは、何も言い返せなかった。
「それは……その通りだ。俺は市長の知り合いから、この山にくればウッドストーンについて知ることができると聞いて、やってきたんだ。」
「ほう……。しかし、残念だな。それは違うぞ。」
「どういうことだ?」ライトは怪しんだ。
「簡単なことだ。ウッドストーンはこの山にはない。」
「え?」
ライト達は驚愕していた。
「ちょっと待ってくれよ。じゃあ、どこに行けばウッドストーンがあるんだ?」ライトは混乱しながら聞いた。
「それは、ここから南に行ったところにある森だ。」
「森だと?」ライトは驚いていた。
「そうだ。だが、そこの森にはモンスターが生息している。危険だから近づくでないぞ。」
「モンスターが生息するところだと?そんなところに鉱石があるわけないだろ?」ライトは反論した。
「確かに普通なら鉱石があるはずはない。だが、稀にだが鉱石が見つかることもある。」
「え?本当なのか!?」ライトは再び驚きながら聞いた。
「ああ、本当だとも。」
「なぜ、今まで見つからなかったんだ?」ライトは不思議に思った。
「そのことについては、我にもわからない。だが、そういうことが起こるということだけは言えるだろう。」
「そうか……」ライトは考え込んだ。
「ライトさん、どうするんですか?行くんですか?」ウェルが聞いてきた。
「もちろんだ。」ライトは即答した。
「そうですか……。」ウェルは心配そうな顔をした。
「ウェル、心配してくれるのはありがたいが、大丈夫だ。それに、何かあったら守ってやるから安心しろ。」ライトはウェルの頭を撫でた。
「は、はい……//」ウェルは照れくさそうな表情をしていた。
「ライトさん、ウェルちゃん、イチャイチャするのは後にしてくれないか?こっちまで恥ずかしくなるからな……。」市長が呆れたように言ってきた。
「はいはい。にしても、市長よ。その古い友人とやらは全然違う情報をよこしたなぁ。結果論として、ドラゴに会えたからなんとかなったけどよ。」ライトは皮肉を込めて言った。
「あぁ、全くだ。僕も少し腹が立ってくるよ。」市長も同意していた。
「まあ、過ぎたことを言っても仕方がない。それよりもこれからどうするかを考えようではないか。」
「そうだな。」ライトは相槌を打った。
「まずは、その森に行く準備をするべきだと思うのですが……。」ウェルが提案してきた。
「あぁ、そうだな。じゃあ、一旦帰るか……。」
3人で盛り上がっていると、蚊帳の外だった研究者の男、ヴァンが話しかけてきた。「あのー、私を置いていかないで欲しいのですけど……。」
「あっ、ごめんなさい。すっかり忘れていました。」ウェルは謝った。
「まあ、別にいいですが。それより、私も同行していいでしょうか?クアッド山の調査より、その鉱石の調査のほうが面白そうですので。」男は頼み込んできた。
「危険かもしれないけど、いいのか?」ライトは確認した。
「はい!」
「わかった。じゃあ、一緒に行こうか。」ライトは承諾した。
こうして、ライト達は一度下山することにした。
「下山途中には、ロックドラゴンがいるかもしれない。私の背中に乗りなさい。行きたい場所まで連れて行ってやろう。」
ドラゴの提案を4人は受け入れた。「では、失礼しますね。」4人はドラゴの背中に乗りください下山した。
「もし何かあれば呼んでくれ。力になろう。」
そういうと、ドラゴは青く光り輝く石の埋め込まれた腕輪をライトに渡した。「これは何だ?」ライトは尋ねた。
「この石には、私が使える魔法が込められている。これがあればいつでも連絡することができるはずだ。」
「ありがとうな。」ライトは礼を言い受け取った。
「うむ、ではまたな友よ。」
そういうと、ドラゴは飛び立った。
「じゃあ、とりあえずその森に向かってみるとするか。」
「今日はもう遅いので明日ですね。皆さん、事務所からの出発にしましょう。ヴァンさん。事務所は〇〇街の外れにある青い屋根の建物ですので、よろしくおねがいします。」「わかりました。」ヴァンは返事をした。
こうして、ライト達はそれぞれの帰路についた。ライトとウェルは、市役所に着いた。