ペンは剣よりも強し
ペンは剣よりも強し。この言葉が村山は昔から大好きだった。その言葉を実践しようと勉強を重ね、念願の新聞記者になった。
凶悪犯罪者や不正を行う政治家を、糾弾する記事を書こうとした。すぐに上司に諌められた。お前の記事は煽情的過ぎるのだ、もっと客観的に書けとのことだった。
政治家や刑事からネタを貰うことも多いから、下手なことを書くなということなのだろう。ならばと、大企業の不正を暴こうとした。それも上司に止められた。
何を考えているのだ。新聞の売り上げが右肩下がりの時勢に巨額の広告費や口止め料で、我が社を支えてくれている企業なのだぞ。書きたければ、ヨイショ記事を書けと変な説教をされた。
納得できなかった村山は新聞記者を辞めた。
一人で好きなようにやろうと、フリーライターとなった。海外に行き戦争の悲惨さ愚かさを、伝えようと思った。と言って常任理事国が隣国を攻め入っているニュースは、世界中で伝えているので特に伝える使命を感じなかった。あまり注目されていない、中東やアフリカの紛争や内戦などを伝えた。
だがほとんど彼の記事は読まれず、大抵の人は美味しいラーメン屋特集とか、楽しい遊び場紹介とか、かわいい動物写真などの記事に心を奪われていた。何だか虚しくなってきて、彼はライターの仕事も辞めた。
村山は小説家を目指す決意をした。なれるかどうか、売れるかどうかは分からないが、おれの今までの経験を生かし色恋を交えて書けば、面白がって読んでくれる人もいるかもしれないと思った。