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第40話 浪岡具信の決断


 具信は条文を何度も繰り返し読む。その意図を恐らくしっかりと理解して、それからため息をついた。

「盟約か……」

「そのような大層なものではござらん。ただ藤崎に我らの兵がおれば、浪岡以外の周囲にも睨みを利かせる事になる。それは浪岡領の安定にも寄与すると儂は思っておる」

 高信が補足する。

「……儂に浪岡を裏切れというのか?」

「めっそうもない。河原様はこれからも浪岡の重鎮として忠義を尽くされるがよかろう。むしろ河原様が浪岡に圧迫された時にお助けできるようにしたいと申しておるのです」

 うわぁ。原案を提案した身だけれども、ぬけぬけと言うものだ。

「……この三つだけでも、いかほどの費えがかかるか、なかなか途方もないな」

 具信は苦い顔だ。城や寺、街道の整備には膨大なカネが必要だ。銭だけでもどれだけ吐き出さなければならないものか。

「気前が良いと評判の河原様には期待しておりますぞ。我らもそれなりには提供いたしますゆえ」

 高信、本当にノリノリだ。


「……寺の再興はまだ大丈夫かもしれんが、溝城から先の街道整備は我らに権限があるわけではない。具運がそれを認めると思うか」

 具信は渋い顔で懸念を漏らす。

「認めさせますとも。これは浪岡御所にとっても利益のある事なのですからな」

 高信は諭すように語る。

「勘違いしないでほしいのは、我らは浪岡が安東と友誼を深める事自体には反対しているわけではない、という事だ。それで地域が無事(へいわ)になるならそれに越したことはない。儂の願いは津軽の無事ですぞ」

「……それはあくまで南部の、いや、石川の元での無事であろうが。それが気に食わない者たちは浪岡どころか津軽の南部者でも多いぞ」

「ふ、ハハハハハハハハハッ!」

 その言葉に高信は歯もむき出しに哄笑する。

「それを叩き潰すために津軽郡代がいるのよ。大乱を起こしかねぬ真似を止めるためなら、嫌われるくらい安いものだ」

「ふん、大乱を起こしかねぬ真似をしているのはどっちなのやら」

「大体だ、この俺が浪岡の動きを歓迎しているとでも思っていたか。それに、浪岡御所の動きを苦々しく思っていたのは御身も同じであろう」

「ふん」

「さて、話を戻すが。鶴」

 高信がこちらに話を振る。


「はい、では残る技術の提供について」

 四条目と五条目は、俺自身が提案できる領内振興策だ。前の三条を補強するための、おまけのようなものだ。

「稲作技術の提供をまず行います。これによって、米の生産力を底上げし、溝城領内の地力(じりき)を高めます」

 これについては、今まで石川領でやってきた農業技術―保温折衷苗代・正条植・乾田化・種子消毒等々―を、溝城にも提供するものだ。これ自体は去年やっていた農業指導と大して変わらない。今なら指導員も少しずつ増えてきたし、他領でも実施できるだろう。

「合わせて蜂蜜の採取とそれを使った各種商品の製造法も提供いたします」

「ほう、蜂蜜を……」

 具信がちょっと反応する。蜂蜜好きだったものね。

「蜂蜜が溝城の地でも生産できるとなれば、それを買う商人の往来も増えましょう。良い稼ぎになるのは我らの領地で実証済みです。さらに興福寺が再建され詣でる人々が溝城を通るようになれば、詣でる際に菓子にでもして売れるかもしれませんな」

「菓子とな?」

「ええ、といっても大層なものではありません。小麦に蜂蜜を練り込んで焼いた程度の簡易なものです。それ以外にも幾つかの料理のレシピ、ええと作り方の書付を別にお渡しします」


 いわゆるビスケットとかは菓子や保存食としてちょっとした需要があると思うのだよなぁ。もちろんそれ以外にも蜂蜜を使ったレシピは多岐にわたる。別に〝現代〟でも料理が好きであったわけではないけど、ちょっとした料理くらいは提案できるし、この時代の人だって馬鹿ではないのだから、それなりの利用方法を考えるだろう。


 いずれにせよ、溝城の土地で蜂蜜の生産がうまくいくかは分からないけれども、軌道に乗れば年数十貫もの利益になる。その益が溝城を潤す事は出来るだろう。元々流通に強い具信が商うならば、もっと利益が上がるかもしれない。

 加えて稲作技術が提供できれば、元々からの実入りも良くなるだろう。


「で、この五条目の『牛を使った新製品』とは一体なんだ?」

「ああ、これは具信様の御屋敷で牛を見かけて思い浮かんだのですが……」

 俺は持ってきた木箱から包みをひとつ引っ張り出した。

「今が寒い時期で助かりました。暖かい時期だとどうしても日持ちせずに腐らせてしまうものなので」

 それは乳白色の塊だ。ほのかに柔らかく、ほのかに弾力がある。

「牛の乳を酢で固めて水を抜き保存したもの、南蛮では『チーズ』と呼ばれ、本邦でも『醍醐(だいご)』と呼ばれる食べ物です」

 そう、チーズ。数千年もの前から人の歴史に寄り添ってきた動物から得られる滋養だ。正確に言うと醍醐はチ―ズとはちょっと違った食べ物らしい(〝現代〟では記録があんまり残ってないらしい)のだが、まあそういう事にしておこう。

 弘宗に牛を――出産した母牛とその子牛を、他の牛とあわせて買ってこさせたのもこれが必要だったからだ。今回提供するのは水分をなるべく抜いたハードタイプだ。


「ちーずとな……醍醐は、話には聞いたことはあるが」

 具信は興味深げにチーズを手に取り矯めつ眇めつしている。牛は弘宗が市でわざわざ妊娠して子牛がいる牝牛を買ってきてもらった。冬場だったので牛の乳の出が悪かったり、〝現代〟と違って牛乳採取専用の牛――乳牛などはいなくて、乳房が小さくて搾りづらかったり、乳搾り自体に牛が慣れてなくて暴れたりと少々苦労したのだが、それでもなかなか良い出来のものが作れたと思う。

 チーズはこの時代ではほとんど食べられてもいなければ、作られてもいない。色々な理由があるのだろうけれども、保存の問題と、多分宗教観が影響しているんだろうなぁとは思っている。


 具信が差し出されたチーズを手に持ち、匂いを嗅ぎ、かじる。

「……案外匂いが無いな、しいて言うなら乳の匂いだ。濃い餅のようだが、塩味が強い。ほのかに甘みもある。くせはあるが、美味い」

 食うてみろ、と、具信は息子の顕重に渡す。顕重は渋い顔をして少しためらった後、意を決したように口に放り入れて食べる。

「……うーむ、どうも食べ慣れないですな。不味くはないのですが。なんというか、味の濃い豆腐みたいな」

「牛の乳を酢で固めたものなので、確かに作り方はちょっと似ていますね」

「酒のつまみには良いかもしれん」

「秋冬の食糧としていいですよ。むしろそれを想定しています。あとは参詣の名物として提供するなどもいいかもしれませんね」

 日本は湿度と気温が高い。そのため、牛乳等の乳製品は夏場など暑い時期には保存がきかない。冷蔵庫などない時代だから仕方ないし、きちんとした熱処理等をしないと雑菌も多い。

 だが、この食糧が普及して少しでも食糧が生産できるようになれば、飢えを避けられるかもしれない。それを考えれば、今広める価値はあると思うのだ。


「そもそも牛の乳自体が栄養に富んだものです。ただそれだけでは日持ちしませんし、幼児や、大人も人によっては腹を下してしまう場合があります。そのため、熱を入れて殺菌し、このように酢を使い固める事によって腹を下す成分を分離し、さらにある程度保存できるようにできます」

 牛乳から作れるのはチーズ、ヨーグルト、バター、クリームなど、パッと思いつくだけでも多岐に及ぶ。乳製品を食生活から除外するのは、あまりにももったいないのだ。

 ただし、〝現代〟のように機械でなく人力でやるとなるとその労力はかなりのものになる。人のやりくりも大事になるのでそこは要相談だ。それを押してもやる価値があると、個人的には思っている。

「牛乳は、チーズのみならず様々な食べ物に加工出来るのが大きな強みです。その食い物は目新しく、耳目を集めましょう。その技術を、俺は提供します」


「しかし、牛の乳を食うなど……」

 顕重が少々抵抗感を示す。動物から出たものを人が食べるものではない、という観念は強い。正直抵抗感は大きいだろう。

 今回のチーズは米酢で固めている。本来ならレンネットという子牛の胃から採取される成分を使うのだが、つまりはレンネットを使うには子牛を屠殺しなければならない。この点がかなりネックだったりする。この時代、牛に対しては『聖獣』という意識があり、また一般的に畜産動物を殺す事に対する抵抗感はかなり高いため、それは断念せざるを得なかった。

 代わりに米酢などの酸を使った凝固法を使う事になった。米酢で固めるとどうしても少々ぼそぼそになるので、同じように牛乳から作ったクリ―ムを混ぜて固めている。

 まあ、そういう配慮もしなければならない程度には、ハードルがある事業ではある。


「お釈迦様は牛の乳粥を呑み修行を成し遂げました。それどころか、牛の肉を食う事すらも禁じていないのですよ」

 牛乳はともかく、牛肉を食べる事に抵抗感を持つ人は〝現代〟にもいる。父が畜産をしていた関係でそっち方面の話もちょくちょく聞いたものだ。牛乳や牛肉を広めるのにも様々な苦労があったという。

「牛の乳を固めて食うのは唐国などではよくあることです。何より体をよりよく成長させることに武家が、いや、どんな身分のものであれ、躊躇してはならないと思うのです」


 前々から考えてはいたのだ。飢えをしのぐには米の技術だけでは足りない。

 様々な食品が作れることで食を多角化し、いざという時にそれが少しでも食べられるように備えないといけない。米の技術を普及させることと同じくらいに、この畜産の技術は飢饉を凌ぐために重要になる。

 忌避される食糧を少しでも食べられるようにする。そうしなければ、飢饉が来た時に死ぬ人間の数が増える。

 だから飢え死にを少しでも減らすために、具信様を利用する。

 無理強いする気はない。けど、同意してくれるなら、遠慮なく巻き込もう。


「なぜ俺がこれを目玉としたのか。この食糧が普及すれば、文字通り食の体系が変わるからです。そして、それを最初に握ることが出来るなら、具信様にとって大きな利益になるでしょう」

 乳製品が多くの人々に広まれば、それだけ具信の懐も潤うだろう。

「牛を飼える家は多くはないと思いますが、河原御所では牛も飼育している様子。牛を飼う技術はお持ちでしょうから、具信様にとっても馴染みやすいと思います」

「お前、よく見ておったな……」

 具信が呆れたように言う。

 〝現代〟では父が畜産をしていたのでその手伝いをしたことがあるけれども、牛を育てる事に関してはやはりこの時代にもいる本職に任せたいのが本音。その点も具信様はクリアしてる。

 あとまだ具体的な話はしていないが、普及に関しては福王寺玄蕃様にちょっと話をしてみたいと考えている。あのひと、実は坊主のくせして肉も食うし卵も食う人だそうなので、その辺の理解も得られないだろうかと思っている。


 あと、個人的な目論見としては、これから牛の数自体を増やしたい、というのも思っていたり。いわゆる耕耘に使うために、牛は馬と合わせてやっぱり欲しいんだよなぁ。

「『農耕技術の開発』の部分は、いわゆる犂を用いた牛馬耕を広めるために、新しい(すき)の開発と普及を、具信様に協力していただきたいのです」

「新しい、犂?」

「はい、より深くより細かく土を掻き掘ることが出来る犂を作るのです」

「深く土を掘ることで何が変わるというのだ?」

「より深く土を掘ると、作物がそれだけ通気性や通水性がよくなって根を伸ばしやすくなり、また肥料の養分も吸収し易くなり、結果として収穫が大きく伸びます。また牛馬を使うことで耕作時間の短縮なども見込めるのです」


 より深く耕すことが出来れば、それだけ植物は根を伸ばしやすくなる。この根を伸ばす、というのが、冷害に対しても重要な点だったりする。

 根をきちんと伸ばせる稲であるほど、冷害にも強い傾向が強い。東北北海道の農家が語り草にする平成五年(一九九三)の冷害の際にも、より健全でしっかり育った稲ほど、冷害を避けることが出来た。それらの稲は、根の育ちもがっちりとしたものが多かった。

 もちろん根の育ちだけで冷害を避けられるわけではないけれども、耕起の状態も冷害対策に関わってくる。そのためにも、犂の導入と開発は不可欠だと考えている。


 ちなみに乾田化と牛馬による犂耕を行う方法は、明治期には『乾田馬耕(かんでんばこう)』として大々的に取り入れられた方針だったりする。ただ今まで犂の開発に手を出せていなかったのは、その余裕が(主に時間的に)なかったからもあるけれども、この地域がそもそも湿田が多くて牛馬犂耕が難しい、という点もあった。乾田化や施肥などの土地改良とセットでやらなければならない事が多いのもあり、実施に時間がかかり後回しになっていた。

 それを、牛の飼育と合わせて具信と一緒にやってみよう、と思ったのだ。

「幾つかの犂を開発するつもりです。具信様には牛馬によってそれの実践をお願いしたい」

 目標は近代になってできた、取り回しが比較的容易な短床犂タイプだが、この時代だとポピュラーな長床犂なども、場所に応じて使えるように作れるようにしたい。


「これらの技術がどれかひとつでも成れば、具信様の領地は豊かになりましょう。もちろん、石川も協力します」

 怒涛のプレゼンに、具信はじっと言葉もなくただじっと唸っている。目の前に提示されたものに対して、ひどく戸惑っているようだった。確かに技術提供については判断しかねるかもしれない。けど、少なくとも領内振興になると確信しての提案だった。


「……父上、これは良い案だと思います」

 顕重が横から意見を言う。

「石川の協力が得られるなら、我が家が生き残れる道が作れるかもしれません」

「……我が家が石川に食われるかもしれんぞ。この小僧の言う技術提供とて、上手く成るとは限らん」

「しかし父上、このままでは浪岡の中で潰されるしかないではないですか」

 これをきっかけに、浪岡家中の面々が様々な意見を出す。喧々諤々、利を挙げる声も多いが、石川に対する反感の声も多い。こちらも時々議論を補足する。

 しばらくして、具信はゆっくりと手を挙げる。

 周囲が静まるのを待って口を開く。

「……かような重大事、すぐに決めるわけには――」


 俺はその言葉をさえぎって、最後のダメ押しのために口を開く。

「具信様、あとひとつ、お願いしたき事がございます」

「……この際だ、全部言うてみい」

「では……鉄砲を二十挺ほどご注文されておりましたよね、それを南部に売っていただきたいのです」

 具信は立ち上がった。顔に浮かんでいるのは、明確な焦りだ。

「何故それを知っている!」

「そちらの商人が我らの関守に捕まったのですよ」


 出陣の直前、高信に相談された件がこれだ。具信の手の商人が、鉄砲を持って津軽境を越えようとしたところを、普段よりも警戒していた関守が見とがめ拘束したのだ。

 この鉄砲の使い道は、容易に想像できた。

「具信様。この鉄砲、浪岡御所様に使うおつもりでしたね?」

「――何を根拠に言うか!」

 ひときわ大きな怒鳴り声に、さらに踏み込む。

「この商人、わざわざ安東殿の領地を避けてきたそうです。安東殿の領地は商売の盛んな場所、そこで買い付ければ、いえ、仮に能代湊や秋田湊で買い付けられなくても海路を使って行けば鉄砲の確保は容易なのに、その商人はわざわざ安東領を避けた。なぜか? 安東殿を通じて浪岡に伝わることを恐れたのです」

 浪岡家中の者が鉄砲を求めていると知れば、安東とて浪岡に問い合わせをかける。自分たちのあずかり知らない武具の購入を知れば、浪岡とて河原に疑念を抱くだろう。

 鹿角衆が南部氏には秘密で、南部氏に知られない安東氏のルートを使って武具を集めていたのと同じだ。

 未来を知るからこそ、俺はそれが謀反の徴だと分かってしまった。この鉄砲を使って、浪岡具信は浪岡具運を殺すつもりなのだと。


「なんならうちの森宗を使って浪岡御所に問い合わせをかけてみましょうか? 河原御所様が武具を買っているのだが、浪岡はそれを知っているのか、と」

「小僧……!」

「とはいえ」

 こちらの軽い脅しにいきり立つ具信を手で制する。

「具信様は鹿角衆のようにどこかに内通をしているわけではない。武威に拘る具信様が武具を買っただけのこと。それひとつだけで謀反の徴などとは言えません。俺の言葉もあくまで想像にすぎません。そう、想像で終わらせるべきなんですよ」

 具信の鉄砲の件を浪岡に報告したら、浪岡はおそらく警戒はするだろうがそれ以上の事は出来ないと思う。鹿角衆の時とは違い、内通相手と連絡を取っていたわけではないし。

 だが、浪岡と河原が対立するこの時期に、無用に緊張を高める要素にはなるかもしれない。


「だから、『具信が石川鶴に依頼されて懇意の商人を紹介して鉄砲を買ってくるよう依頼した』とでもすればいいのです。ちょうど我々も鉄砲が欲しかったところです、それを売っていただければ我らも武具を準備できる、具運様も鉄砲に使う銭を浮かすことが出来る、良い事だと思うのです」

「ぬけぬけと言うわい……」


 俺は、膝ひとつ前にせり出て、具信に語りかける。

「具信様が具運様との間に確執があるのは承知しております。煮え湯を飲まされてきたことも。ですが、これがうまくいけば具信様の領地はまた富み栄えるようになりましょう。少なくとも、その端緒を手に入れることが出来ます」

「…………」

「武士としての体面が傷つけられてきたこと、お察しいたします。ですが、ここは呑み込んでくださいませ。自分は具信殿が所領を豊かにしたいと願っていることを知っております。俺も力を貸します。ですから、どうか」

 具信は表情を消して、こちらをじっと見つめてくる。

 内心では様々な思いが荒れ狂っているのだろうか、彼の呼吸だけが大きく、荒い。


 ふと、具信が呼吸を整えた。

「……鶴殿、そなたは、甘い」

 その言葉は鋭く、重い。

「だが、今回はそなたの蜂蜜の様な甘さに騙されてやろうではないか」

 具信はふっと力を抜き、微笑ましい年少を見るような父親の顔で笑った。

 具信は周りの家臣たちを見回す。今まで警戒していた家臣たちははっとしたように揃って威儀を正す。

「石川殿の良きように計らってくだされ。その代わり、甘き夢を正夢する手伝いをぜひお願いいたす」

 そうして河原御所・浪岡具信は深々と頭を下げた。

「承知した」

 高信は短い言葉でそれを受け取り、それから笑った。

「さて、次は浪岡御所だ」


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具信殿と高信殿の会談、圧がすごすぎる。 デカさと貫禄的な面で。
熱を入れて殺菌し この時代にはまだ細菌の概念はないはず?
ワクワクします 次は具運ですよね
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