サレマ・ポーギーの血
華麗なる
アフリカの死魚サレマ・ポーギーの死骸を
俎板の上で切り刻み、
うっかりと自らの手指を切ってしまう。
俎板は、私の
不吉鮮やかな血で染まっているが、
それは切断された
サレマの臓物の間質液と交じり合い、
神に肉体を取り上げられた者達の
ダンソンが奏でられるのだ。
そして、私は昨夜より
口内からストレプトコッカス菌が
50アローバ程、脳内に入り込んでおり、
熱に浮かされながら、
サレマ・ポーギーの処刑場を見つめる。
さて、サレマと言えば、
これは、世にも無惨な死体であり、
見放され、遺棄された肉だ。
ふやけて蟬脱した水死人の様な
サレマの膨れた腹から出る死の奔流が、
私の血と、連鎖球菌の頭痛と交じり合い、
フォーブルドンを混濁させた
歪な対位法を奏でる。
そうだ。世界は
[孤独な痛み]という主題を繰り返し、
[穢れ]のフーガは模倣し合い、
誰も辿りついた事のない
解決へ灌流し、向かう。
諸君、我々の日常は
神という作曲家と、
愛という奏者によって作られるが、
死が!!
死が指揮を振っている為、
それを永遠に聴き続ける事は叶わぬ。
それに、サレマは死んでいる。
既に事は遥か昔に
十字架の上で成されたのだ・・
ああ!!
それを認識しようがしまいが、
我々もまた
心臓に血を逆流させ、
虚血性の僧帽弁の病を患いながら、
腐敗した臓物を曝け出し、
この地上の痛みと共に
俎板という墓地を見つめ、
デシマを歌い続ける・・