8話 もしも言葉で解決できるなら
僕は一晩ゆっくり休んで、翌日の朝になった。ノワールから助言を貰った通りまずは話し合いで解決出来ないか試してみようと思う。当初は酷い事をされ僕の心は復讐で満たされて居たが、皆と温かい時間を過ごしているうちに気づけば毒抜きされてしまっていた。
僕が今一番求めているのは皆と仲良くして暮らす事で争う事ではなかった、グリモワールの力を見せれば共存の道もあるかもしれない。
「ん、あっ!!!!貴様っ!!!!逃げ出してたのに、のこのこ戻って来たのか!?!?」
書庫の近くでガーベイとばったり遭遇した、タイミングとしては悪くない。
「ガーベイさん、この前は本当に申し訳ございませんでした。本当に反省してます、御目通り叶うか分かりませんが王様にもお許しの弁をさせて頂ければと思います。よければこちらをどうぞ、逃亡先で見つけました」
謝罪に加えて機嫌を取り王とも話す機会を得る為に貢物を渡してやった。グリモワールで作成した金のリンゴのインゴッドだ。
このとんでもない貢物にガーベイは大喜びで王への謁見を取れるようにお願いをしてくれる事になり、今晩は一緒に酒の会を開いてくれるそうだ。
「なんとかなりそうで良かった・・・。皆にいい報告も出来そうだ。」
和解をしに行く事に対してノワール・アリスは好印象だったのだが、スピネルに関しては最後まで反対していた。
「貴方様は絶対にその者達を許してはいけません・・・万が一、何か危険な目に会ったら私は飛んで行き、その者達を皆殺しにするので覚えておいて下さいませ・・・」
何か起きたらすぐに来ても良いという約束を条件になんとか許して貰えたけど・・・迫力が凄くて怖かった。
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それから待ち合わせをした酒場でガーベイと酒を飲み交わす僕。特に盛り上がる話を持ち合わせてなかったが、ガーベイは自分の自慢話ばかりして来たので一方的に話を聞く感じになっていた。
酒を飲んで少しすると、段々足取りがおぼつかなくなってきた。飲み過ぎたかな?と最初は思っていたがまだ2杯目だった為、普段ではなんともない量だった。そして段々視界も暗くなっていき。
「おっ、早速効いてきたか、やっぱり強力な薬は違うなぁ。しかし、やっぱり馬鹿だなぁお前は、そのまま逃げてりゃ良かったものをよぉ。」
騙された事に気づいた時にはもう詠唱も叶わない程に意識が遠くなってしまっていた。
目が覚めるとそこは暗い場所だった。目の前には檻があり、手足を縛られて動けない。
「目覚めたか?ここはな、拷問部屋だよ。酒場の地下にあってな、上は大騒ぎしてるから大声出しても聞こえねーから変な希望持つなよ?、ところで王様がお前が今まで汚したり無くしたものの対価を払って欲しいんだってさ」
無くしたもの・・・?そんな馬鹿な。汚したものは多少はあったが紛失は一切していないぞ。
「グリム・・・貴様が働いてる間に色々盗んでいた事、知らぬとは言わせぬぞ。それを密売して、利益にしていた事もな」
王様は僕に向かってありもしない事を告げてくる。
「このリンゴはその証なんだろ?、さぁ吐けよ、もっと財宝を隠してるんだよなぁ?」
ガーベイはその後僕に近づいて小声で、「まぁ今まで盗んでたのは俺なんだけどな?金のインゴッドとお前の財宝の情報を伝えたら許してくれたよ。だから、死ぬ前にさっさと吐いてくれよな」
そう告げた後に、ガーベイは持っていた鞭を僕に向かって打ちつけた。
「ぎゃああああああっっっ!!! あ・・・あぁ・・・・」
一発打たれただけで意識が吹き飛びそうな痛みを感じた。あまりの衝撃で全身の筋肉が縮こまり、体が痙攣しかけてきた。その光景を王様は、ニヤニヤしながら酒のつまみにしている。
「ほら、早く言わねーと死んじまうぞ? まぁすぐもう一発行くけどな、あぁ、あと安心しろよ?死亡してもシスター呼んでるからそのまま処刑扱いでやっとくから」
「えへへ・・・良いですねぇ・・・人が苦しんでるのは・・・。おぉ・・・神よ・・・貴方の苦しみはこの罪人が代わりに受けて下さります。ところで私もやっちゃって良いですか?」
「おぉ!!いいですとも!!ぜひよろしくお願いします!!」
「では・・・私は爪でも剥いでましょうかね〜・・はーい、一本目〜」
「があああ・・・・うぎゃああああああっっっ!!!!!!!!!!!!!!!」
それから何発も鞭を打たれ、爪を全て剥がされ絶叫を上げ続けた、そして思った、なんて自分は愚か者だったのかと、なんで信じようと思ってしまったのかと。
こんな奴らに・・・こんな奴らなんか・・・最初から・・・そう
「うーん・・・声が出なくなっちゃいましたね〜?死んじゃったんですか〜?アーメンアーメン」
「やり過ぎちまったかな?おいゴミ!!!死ぬ前に早く隠し場所を教えろ!!!」
最初から殺してしまえば良かったのに
「グリモワァァァァァァァァルッッッ!!!!!!!!!!!!!」
僕は衝動に身を任せた。
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「おかしい・・・グリム様があの酒場に入ってから時間が経ち過ぎてる・・・やっぱり何かあったんじゃ・・・でも迂闊に乱入すると怒られてしまいそうだし・・・うーん・・・」
ソワソワしながら酒場を遠くから見ているスピネル、地下で何が起きてるか見えてたら彼女は全てを滅ぼし尽くしてしまってただろう。
「っ!?この大きい魔力は・・・まさかグリモワール!?」
やっぱり何か起きてしまった。嫌な予感がスピネルの頭をよぎる。あの優しい人の笑顔を失わせる訳にはいかない。その一心でスピネルは飛び込んでいった。しかし、酒場の中にグリム達は見つからない。
地下から魔力を感じたので地下室がある事を察知したスピネルは、バーテンダーに詰め寄った。
「命が惜しければ正直に答えろ。地下室はどこにある?」
血のような紅い目に殺気を迸らせて詰め寄るスピネルに、バーテンダーは腰を抜かしながら地下室の場所を答えた。急いで地下室の扉を開けて中へと突入するスピネル。
扉を開いた先に待っていたのは、地獄の様な状況だった。
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