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7話 皆一緒に

グリモワールに挟まっていた鍵を手にすると、目の前に薄く虹色に光る扉が出現した。

ドアノブには鍵穴がある所をみると、今手に入れたこの鍵を使用して開けてくれ、という事なんだろう。

元の世界に戻れる事を目標に当初は動いていた訳だけど、仲間が沢山出来た今は複雑な気持ちになってしまう。


「おにーさん・・・行っちゃうの・・・?」


「おにい、出来たらずっとここに居てほしい、一緒に暮らして私と子を成して。」


寂しそうにアリスとノワールが僕の事を引き留める、ノワールに関しては欲望がダダ漏れになってしまっていた。僕もなんだか考えているうちに元の世界に帰る意味なんてあるのかな?と思い始めてきた。ここで暮らしていた方が幸せな人生を歩める気がする・・・。そう悩んでいると。


「なら、私達全員で着いていけば良いんじゃないかしら?」


スピネルが何を悩んでるのかしら?と言わんばかりの呆れ顔で助言をしてくれる。


「僕は嬉しいけど皆が困らないかい?スピネルはお城はどうするの?ノワールもお母さんが・・・」


「お城はメイド人形の一人に私の代打で指揮をしてくれる存在を作ったから大丈夫。ノワールの母親に関してもメイド人形のフォローが毎日入るから問題ないわ。」


滅茶苦茶便利だなぁメイド人形・・・薬に関しても調剤場を作っておいてくれるから提供や供給にも問題は起きないらしい。


「おにい、そしたらちょっとだけ時間・・・いいかな? 最後にお母さんに旅立つ事を伝えてきたい・・・」


「分かったよ、僕たちはお城で待ってるから。気をつけていってらっしゃい。」


「なんだか今生の別れの様な気持ちで向かいそうだけど、多分ちょこちょこ戻ってこれると思うわよ」


えっ!?という顔で全員がスピネルを見つめる、もう2度と戻って来れないと思ってただけにびっくりだ。


「だって出る為の鍵なら入ってくる為の鍵にもなる訳でしょう?そもそも貴方様だって外からここの世界に来た訳なんだし・・・戻って来れない方のがおかしいわよ」


確かに、と思った。まぁ入ってきた時は鍵も無く本に飲み込まれた様なものだったのだが。


「ノワール!!よかったねっ お母さんにもまたすぐに会えるよっ!!」


「よかった・・・それなら・・・安心・・・」


それからノワールはアリスも行きたがっていたので二人で嬉しそうにしながら母親の家に向かって行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「所でスピネル、アリスとノワールが僕に着いて行きたい気持ちは分からなくもない、仲良い友達と冒険に憧れを抱く年頃だと思うからね。でも君はどうして僕たちと行きたいんだい?」


「私は・・・」


スピネルは僕に自身の生い立ちを全て語ってくれた。彼女が小さい頃に前の城主だった両親が亡くなった事。

それからずっと側で支えてくれた執事も昨年亡くなり、残されたのは古いお城と使えない人形達だけ。

そんな時に転がり込んできたのがノワールだった。彼女の献身する姿を見て、なんとか助けてあげようと頑張ったものの、スピネルもノワールもお互いに苦しい状況に追いやられていってしまった事。素直に手を取り合って生きていけば良かったのに、幼少期から家を守らなければいけないプレッシャーや弱みを見せないように磨いたプライドがそれを邪魔していた事。それらを全部話してくれたのだった。


「でも一番は・・・一番は独りになりたく無い・・・もう私は、孤独に耐えられない・・・。ノワールは外に行くべきだと思った。あの子は貴方様に好意を持っているし、アリスと一緒に居たいでしょう。」


孤独は辛い、失った部分を補ってくれたノワールがまた欠けるという事は、もう一度、心という器にヒビを入れる事に他ならない。


「でも、それなら私だって、一緒に連れて行って・・・?なんでもするから。裏切る事が心配なら刻印を入れてくれたっていい、毎晩慰み者になっても構わない。むしろそれはそれで・・・」


「そ・・・そんな事するわけない!!!・・・スピネル、君も一緒に着いて欲しい」


「貴方様・・・嬉しいです・・・ずっとお側に・・・」


スピネルは涙を流しながら僕に抱きつく。アリスやノワールとは違い、少し大人びた女性の香りが鼻をくすぐる。顔を見ると目に浮かべる大粒の涙が光に反射して紅い瞳が宝石の様に輝いている。鼓動が熱くなり、なぜだか目が反らせなくなってスピネルの顔が近づいてきて・・・そのまま・・・


「ただいまーーーーーーーっ!!!!!!!!」


アリスの声で二人とも吹っ飛ぶように離れるのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「それじゃ行こうか。準備はいいかい?」


「大丈夫っ!」 「問題ない、ドキドキするね」 「あともうちょっと・・・もうちょっとだったのに」


一人だけ魂が抜けかかってる人がいるけど気を取り直して・・・僕たちは鍵を開けて絵本の扉を開いた。


戻って来たのは僕が閉じ込められた書斎だった、ただ一点変わった事があって。


「あれ・・・?こんなドア・・・なかったよね・・・?」


最初来た時には存在しなかったドアがあり、開けてみると王国外の離れた高台の所に繋がっていた。

近くに川があるのでここに家でも建てて暮らすのも悪くないかもしれない。


そして変わった点がもう一つ、吸い込まれた本が無くなっておりグリモワールが唐突に「ヴィランの撃退・無効化を確認。新たな絵本を作成します。」と言い出し、本が置いてあった台座が光始めたのだった。

これがどういう事なのかは現状さっぱり分からないので、一旦そっとしておく事にした。


「おにい、これからどうする?」


「ふふん、貴方様の考える事は私にはお見通しです。ズバリ、ここに築城して貴方様へ無礼を働いた愚か共へ裁きを下しにいくのですわよね?私にお供させて下さいませ。」


「また剣を振り回していいの!?どこにどこに!?」


「アリスちゃんはもうそれしばらく使わない方がいいと思うよ・・・」


パーティー内に過激派・脳筋が居るので、こういう時は平和的なノワールだけが頼りだ。


「ん、とりあえずお城を建てて今夜はゆっくり寝たいな。おにいが居たお城には明日話をしに行くのがいいと思う。まずは言葉で解決できるか確認しようよ。」


ノワールの言う通りだ。僕はすぐにお城を創り出し、疲れた体を休めて明日に備える事にした。

いつも童話無双をお読み下さりありがとうございます。


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また、ブックマーク入れて頂ければ投稿時にお知らせが行くと思います。よければ追加して下さい。


次回も面白い話が書ける様に頑張りますので、何卒よろしくお願い致します。

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