4話 グリモワール起動
お互いに自己紹介が終わった僕たちは少しの間歓談をしていた。
「っ!! そうだっ!!! 私はお話してる場合じゃないんだった!!!」
そういえばこの子はさっきのノワールと呼ばれる子を追いかけてる最中だったっけ
アリスはおしゃべりが大好きなのかずっと自分の話をしてくれていて目的を忘れていた様だった。
「ごめんねおにーさん、用事が終わったら絶対またお話しましょうね!」
そう言って走り出そうとするアリスに
「待って!!! 僕も一緒に着いて行ってもいいかい? 君の手伝いをしたいんだ」
正直アリスと別れた後にまた再会できるか分からない。元いた世界にしばらく戻れない可能性がある以上
この世界の住人と仲良くなっておく必要があってなんとしても引き止めたかった。
断られたらどうしようかと不安で一杯だったが
「ほんとにっ!? 嬉しい・・・ おにーさんありがとう! 大好きっ!!!」
協力してくれると聞いて心底嬉しそうに抱きついてくるアリスに、心の中の狼が暴れないよう必死に抑える僕だった。
・・・・・・・・
「所であのノワールっていう子がどこに向かったか見当付いてるのかな?」
「それは大丈夫、きっとお城に向かったはずだから。あの子はお城で働いているんだけど遅刻が多くて
次遅刻したら罰が与えられるって聞いてたんだ・・・だからすっごい急いでたんだよ。でもねあの子が全部悪いんじゃなくて・・・最近寝れてないみたいなの、夜遅くまで働かさせてたから・・・」
アリスはここ最近のノワールが仕事に追われすぎていて過労状態だった事を心配していたらしい。
だから今日はなんとしても引き止めて仕事を辞めるように説得しようとしたものの、逃げられてしまった様だ。
「所でおにーさんは魔法使いなんだよね?なんだか難しそうな本を沢山持ってたし」
「違うよ、僕はただの司書をやってただけ・・・何も能力がない無能な男さ。」
そう、もしも僕に魔法が使えたらあのいけすかない上司や横暴な王様に対して一矢報いてやれただろうに。
僕が居た世界では魔法使いはごく僅かしか居ないから、使える人は国を統治したり、もしくは魔術書を作成して功績を残したりするらしい。グリモワールを作成した人は全魔力を本の中に込めて生き絶えた、なんて逸話も残ってるくらいだ。
「そうなの?じゃあその本はなんで光ってるの?」
そう言って背中に背負っていた禁書を入れていた袋を指差すアリス。僕はびっくりして袋を下ろすと確かに本が光っている。
「いやっ えっ・・? ごめん、僕にも分からないや。 この本はえっと・・・グリモワール・・・」
そう言ってグリモワールを持った瞬間に「起動」とグリモワールから声がした。
「承認。あなたを童話世界救世主と確認。全魔術権限解放。魔力供給をマナへと接続、完了 外界での魔法発動許可。」
突然の出来事にあたふたする僕たちをよそにして、グリモワールは起動を開始してしまった。
童話世界救世主ってなんだろう??童話世界ってやっぱり今いるこの世界の事だよね・・・?
と色々考えているうちにグリモワールから光がなくなって、僕の手元に落ちてきた。
「おにーさんっ!!!何今の!!!やっぱり魔法使いだったのねっっっっ!!! 何か見せて! あっ私ジュース飲みたい! クッキーも出せたらお願いしたいなっ!!」
興奮のあまり鼻息をふんふんさせながら詰め寄ってくるアリスだったが、それよりもとんでもない力が自分の中に湧いて出てくる感覚がわかってそれどころじゃない。さっきグリモワールが言ってた『魔力供給をマナへと接続』というフレーズ、これが本当だとすると途轍もない魔力が僕の中にある可能性が高い。というのも一般的に魔法使いは自身の体内に存在する魔力から魔法を生み出すらしいのだが、マナ、いわゆる星の息吹とも呼ばれる無限の魔力が蓄積されているという伝説の地へ接続されたということは実質無限に魔法が使える事と代わりないのだ。
「アリスお城の方面はどっちかな?」
試してみたい
「あっ えーっと あっちだったかな」
本当にそんな力が手に入ったのだとしたら
「よしじゃあ捕まって、振り落とされない様にね」
僕は世界最強なのだから
「なにか分からないけど・・・わかったっ!!!!」
アリスをしっかりと抱きしめたので僕は心の中で飛ぶ事をイメージした、するとふわっと地面から足が離れていきそのまま猛烈な勢いで数10メートルほど上昇することが出来た。
やった!!! 思った通りに出来た!!! 本当に魔法が使える様になったんだ 元の世界に戻ったら見返してやるぞ!!!とアリスに悟られない様に心の中でガッツポーズをして。 ふとアリスを見ると
「おーい、アリスー。 ・・・・・失神してる・・・」
刺激が強かった様でアリスは白目を向いて失神してしまった様だ。
ごめんね。と思いながらさっきアリスが教えてくれた方向に向かって飛んで飛んでいく事にした。
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