3話 私の名前はアリス
「う・・・ううん・・・はっ!!! ・・・僕は寝ていたのか?」
随分長い間眠っていたのか体が重く感じる。それに加えなんだか頭がクラクラする感覚を覚えた。
「僕は確かあの本を読もうとしたんだったはずだ。でもどうしてここに・・・?そしてここはどこなんだ・・・?」
見渡してみるとそこは森の中と思われる場所で、王国周辺にも思えなかった。というより違う世界に入ってしまったんじゃないかと思った。なぜならとんでもなく大きいキノコが生えていたり木がゆらゆら動いていたり極め付けは太陽に顔がついていてこっちをニヤニヤ見ているからだ。
僕の前には非現実的な光景が広がっていて困惑していたが一つの仮説に辿り着いた。
「もしかして、僕はあの本に飲み込まれて本の世界に入ってしまったのか?」
にわかには信じがたいが原因はあの本の可能性が一番高いのでそう思わざるを得なかった。それにしても本の世界に飲み込んでくる本なんて聞いた事ないぞ。あの書斎の持ち主ももしかしたら本の世界に飲み込まれてしまったんじゃないか?
そう思うとあの書斎が無人で本が特別視されていた理由も解る気がした。
僕はとりあえず町か何かを探さないと脱出する前に死んでしまうので散策する事にした。
「なんだろう・・・太陽もおかしいけど地面もおかしい気がする・・・。本当の草や土じゃない様な・・・」
この世界に迷い込んでしまってから一番感じている違和感。それはこの世界にあるものが全部本物に感じない事だった。行ってしまえば作り物感がすごい
この世界が本物ではない事を感じながら歩いていると
「急がなきゃ・・・ 急がなきゃ・・・遅れちゃう・・・」
黒いスーツを羽織った少女が突然飛び出してきたので驚いたが、それよりも一番気になったのは
少女の頭にウサギの耳が生えてる事だった。
「ちょっ!!ちょっと待ってっっっ!!!!!」
通り過ぎようとしている少女に向かって声をかけたものの、よほど急いでいるのか見向きもせずに
僕の目の前から居なくなってしまった。
でも僕はこの世界に言葉が通じる人間が居る事がわかったので少しホッとしたのだった。
もしかしたら近くに町があるのかも知れない、そう思ったりしていると。
「あぶなーーーーーーーいっ!!!!!!!!!!!」
ドスンと背中に強い衝撃がかかり、そのまま吹っ飛ばされてしまった。
「お兄さんごめんね・・・大丈夫・・・?」
受け身も取れずに地面に叩きつけられて体がとても痛かったけど振り向いてみると
金髪碧眼の女の子が僕の体に乗っかっていた。正直初めてみるレベルの美少女だったので女性経験が
全くと言っていい程ない僕はドギマギしてしまった。
「ううん、大丈夫だよ。それより君はケガとか無かった?」
「私は大丈夫だよっ 普段鍛えてますから!」
シュッシュとボクシングパンチみたいな動きをして彼女は無事をアピールしてくれた。
「ところでさっきウサギさん通らなかった? 私は今その子を探していて・・・」
「その子ならこっちの方へ走って行ったよ。僕も声を掛けたんだけどよっぽど急いでたのか無視して行っちゃったんだ」
「そうだったんだ・・・全く! ノワールったら・・・」
『ノワール』・・・あの子の名前だろうか?それよりも僕が知りたい事は
「君の名前はなんていうの?」
少女は答える
「私の名前は『アリス』だよっ よろしくね! おにーさんっ」
太陽みたいな笑顔を輝かせて僕に自己紹介をしてくれるアリス。元いた世界でも最上位に入るレベルの
可愛さに入るだろう。
「おにーさんはなんて名前なの?? 教えて教えてっ!!」
「僕の名前は・・・」
僕は名前を言いかけて少し悩んでしまった。この世界に来たことで前の世界の僕は死んで生まれ変わって
生きていたいと思ったからだ。どうせ戻った所でひどい目に遭うだけなんだったら、こんな可愛い子が
いる世界の方が絶対にマシだと思う・・・
名前をどうしようかと思った時に足元に落ちている本が目に入る。それは禁書庫から持ってきた本で
先程アリスがぶつかった時に落としてしまったのだった。
グリモワール・・・ちょっと言いづらいな・・・ちょっと略してみよう。
「グリム」
「僕の名前はグリムっていうんだ。よろしくね、アリス」
僕がそう自己紹介するのだった。
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