1話 禁書庫
図書館に侵入した後はとても簡単な作業だった。なぜなら図書館関連のセキュリティは網羅しており
禁書庫の管理も僕が行っていたからだ。
「ここをこうして・・・っと」
最後の錠を解錠して禁書庫内に侵入に成功した。僕の事を追放する癖に鍵を変えておかないお前らが悪いんだ、と心の中で思った。
禁書を持ち去るにしても禁書は全部が全部有用なものな訳ではなくて、中には持ってるだけで持ち主に被害が出る危険なものもあるから、あらかじめリスト化しておいたのだった。
「最初はグリモワール・・・これは絶対に必要だよね。 創造系や医療系も持っていかないと」
グリモワールは魔術書の中でも最上級の能力を持っており、これを読むだけで大賢者レベルになるんだとか。
ただし伝承の中だけの話であって実際には読んでも何も起きない事がほとんどなんだけどね。
効果は無いけど禁書指定の中ではその伝承のおかげでかなり高価なコレクター品になっているから
他の町で売れば大金が手に入るだろう。それをしばらく糧にさせてもらおうかな。
「よーしっ!欲しいのは手に入ったしもういいかな。 こんなにたくさんの本から離れるのは寂しいけど・・・」
そう、僕は本当はまだここに居たかった。 ここにいて本に囲まれながら好きな本を読んで掃除して綺麗にしてあげたり、眺めて鑑賞する生活がとても大好きだった。
でもそれはもう叶わない。あのひどい上司や王のせいでここから離れないといけなくなってしまったから。
もうここに戻れない事を考えると、残して行ってしまう本に対して裏切ってしまってごめんなさいという
気持ちが心の底から湧いてくる。
「ごめんね書庫の皆、今までありがとう。どうか次に管理してくれる人も愛情がある人でありますように・・・」
別れの言葉を告げて、禁書庫から出ようとしたその時おかしなことに気がついた。
「あ・・・れ・・? 出口の扉こんなのだったっけ・・・・?」
入った時には普通の木製の扉だったはずが、今はとても奇抜なものに変わっている。
それははっきり言って鍵穴だった。扉の形をした巨大な鍵穴が目の前に存在していて、穴の先を覗こうにも
真っ暗で先が見えないから少し恐怖を覚えた。
「もしかして僕も知らないトラップなのかな? もしくは禁書に触ってる内に何かの魔法が発動したのかも」
パニックにならない様に冷静に分析しながらこの状況をどう乗り越えようか考えていると
「おい・・・で た・・・・けて」
今度は穴から微かに声が聞こえてきた。 もう勘弁してほしい、出られない上に唯一の出口(?)からそんな声が聞こえてくるなんて怖くておかしくなりそうだ。
「誰っ!? 誰かいるのっっっっ!?」
返事をするが向こうからは返ってこない。それどころか鍵穴に声が吸収されていて向こう側に届いている気がしなかった。
「くそっ!!!落ち着こう・・・落ち着いて・・・考えよう・・・。禁書の効果だったら本を閉じれば停止するはず。 !? 開いている本が1冊もない・・・?」
禁書を閉じて魔法を解除すればこの状況から脱出できると思いきや開いている本が1冊もなかった
もう考えている内に段々と「この鍵穴に飛び込むしか先に進む手段はないんじゃないか?」
と思い始めてきた。
通常であれば自殺行為に等しい内容かもしれないが僕はどうせ追放される身で、禁書の盗難が早期にバレたら
追手に殺されるかも知れない・・・行くも地獄引くも地獄。それなら
「行って・・・みるしかないか・・・」
冒険の扉はいつも、一握りの勇気で開いていくのだから。
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