16話 幸せに、なるんだよ
街に着いた僕達は早速聞き込みを開始した。すると何個かヒントになる情報を得る事が出来た。
①精霊はごく稀に人の前に姿を表す(火倖祭の最中のみ)
②精霊は質の高い薪を求めているらしい
③赤い頭巾を被ると好かれるらしい
④精霊の祭壇は祭の時だけ開かれる
やはり祭の時になんとか探し出すしかないみたいだ、薪はリュコのを使えばいいとして赤い頭巾は作らないといけないな。
「貴方様、赤い頭巾を作るならうんと魔力を注いだ方がよろしいかもしれません。精霊は魔力の源、マナの味が大好きなのですわ。」
「分かった、じゃあ作ってみるよ。クリエイション!」
出来た頭巾は魔力を帯びすぎてバチバチ光ってしまった・・・まぁ問題ないと信じよう。
「流石ですわ、この魔力を爆発させたらここら一帯は何も残らなくなる量が入っておりますわね。」
「おにーさんやるねっ 今度私のワンダーソードにもやって欲しいな〜」
絶対にしないぞ、と思った。
「おにい、薪の方は大丈夫?」
「あぁ、薪ならディメンションポケットに入れてあるよ。だから祭壇にもすぐ置ける」
「それなら良かった、お祭りの時間までどうしよう。皆のお手伝いをする?」
「祭壇に先に行こう、忍び込む形になるけどね・・・ 魔力感知したら僕の魔法でワープするよ」
僕は集中して魔力を町中に巡らせる、少しすると僅かながら魔力が漏れ出している場所を見つける事が出来たので、全員でワープした。
こんな所に祭壇があるのか?と思うほど普通の家の中に着く。中を探索すると2階に確かに祭壇があった。
「本当にあったね・・・。でも今はまだ出てこないか」
「試しに頭巾と薪を置いてみませんこと?、降霊や召喚の知識は浅いですが、条件が揃っていれば呼ぶことができるかもしれませんわ」
スピネルに助言をもらって早速頭巾と薪を設置して、家の中に魔力を浸す。
常人なら余りの魔力濃度で即発狂するレベルだが、彼女達はなんでも無さそうだった。
チリチリと火の粉が出現し始める、その内薪に着火して大きく燃えるが決して家には火が燃え移る事はない。
大きい火柱が上がった先には、備えた頭巾を被る金髪の少女が現れた。
「お前かしら?私を呼び寄せたのは?」
はいそうです、と答えると少女の顔色が変わった。
「お前・・・お前・・・さいっこうっ!!!かしら!!!!」
突然目を輝かせながら火の精霊が突っ込んできた
「なんという芳醇な魔力・・・新鮮なマナを直接頂いているような風味・・・そして味わい切れないレベルの量・・・!合格かしら、私との契約を許可するかしら、末永くよろしくお願いするかしら」
「ちょっと待って、かしらかしら話が進んでるけど、少し話を聞いて欲しいんだ!」
とんでもないスピードで進んでいく話に一旦区切りを付けて、状況を説明する事ができた。
「なるほど、その狼の呪いを浄化したいと。」
「出来るかな・・・?」
「余りに簡単すぎる、これでこんな魔法使いと契約できるなんて、ヘレはなんてラッキーな女の子なのかしら!!!」
予想外な展開が続いたものの、精霊からの楽勝宣言はとても心強かった。
「あなたの名前はヘレっていうの?よろしくね、私はアリスだよっ」
「あら、ごめんなさい。名前も名乗ってなかったわね、皆様宜しく、私はヘレ、最強最カワの火の精霊かしら。」
精霊は勝手にもっと荘厳なイメージがあったけど・・・とても元気とノリが良さそうだ。
すっとノワールが僕の腕にしがみ付いてくる。
「どうしたの?もしかして意外と人見知り・・・?」
「大変・・・またロリが増えた・・・もう供給過多・・・3人同時に相手してたらおにいが死んじゃう・・・」
この兎っ娘年中発情してるのかな?
その後ヘレとの契約を済ました僕達は再度リュコの家にワープした。
「こちらがその呪いにかかった娘かしら?」
「うん、一度暴走してしまって・・・今は深い眠りについてる」
「そう、では早速始めるかしら。」
そう言って小さい木の枝を箱の様なものに擦り付けて燃やし始めるヘレ
「これはマッチかしら、幻や夢を現実にする力を持っているの。この力を使えば呪いとか憑依見たいのも
現実に映し出す事が可能かしら。さぁ、出てきなさい。」
ヘレはそう言ってリュコの顔の前でマッチを振る、すると煙の様なものが上がってきて・・・狼の形に変化していく。
「あああああ、なんだテメェらは!? そろそろ腹減ったから体乗っ取ろうとしたらヨォ 全然入れ替われなかったのは・・・もしかしてお前らのせいだな!!!!」
「出たかしら、それでグリム、こいつをどうするのかしら?」
リュコがされた事を思い出しながら答える
「地獄を味合わせながら殺したい、なるべく苦しめて欲しい」
「分かったかしら」
ヘレはそういうと、先ほどのマッチを再度点火し始めた。少し振ると別の狼が出て来て・・・喰らい始めた。
「ぎゃああああああ!!おい!!!やめろおおおお!!!クソがあああああ」
「はい、じゃあやめてあげるのよ。傷も治してあげるのかしら」
「あ?どういうことだ・・・?まぁいいや!よくもやってくれたな、テメェらぶっころ・・・」
言い終わる前に体の半分を喰われる、そのまま絶叫しながら首らへんまで喰われた所で回復魔法をかけられる。喰われては治され喰われては治され。何回もいつまでも死に続ける装置が出来上がっていた。
「それじゃあ後は楽しんで、私が死んだら解除されると思うかしら、まぁ・・・1000年くらいはかかるけど」
それを聞いた狼は精神が壊れてしまったのか白目を向いて声も上げなくなってしまった。
「ありがとうヘレ、リュコは・・・大丈夫かな・・・」
「それは大丈夫かしら、今から活力の炎を体に打ち込むから。さぁ、起きるのよ。貴女を皆待ってるかしら。」
ヘレが青い炎をリュコの胸辺りに置くと体に入っていき・・・リュコが目を覚ました。
「リュコ!!」「リュコさん!!」「良かったっ」皆でリュコへと駆け寄る。
「あれ・・・ボク・・・そうだ、ボク・・・思い出したの・・・私が何をしたのか・・・思い出したの・・・」
やはりリュコは全てを思い出していた。
「おばあちゃん・・・ごめんなさい・・・謝りたいのに、もう謝ることも・・・出来ない」
「ふうん、特別にお前の願い事叶えてやろうかしら。」
どういうこと?と僕が質問するとヘレはまたマッチを振り始める、すると・・・
「おばあ・・・ちゃん・・・」
リュコのおばあちゃんが目の前に現れた、死者を蘇らせた?そんな大魔法使えるのか?そう考えていると
「生き返らせたわけじゃないかしら、あれは魂の残り香。死者の魂は全部マナへとゆっくりと還っていくの、それの少し残ったものを私のマッチで実体化させただけかしら」
そんな事もできるのか、でもここまでしてくれて優しい精霊だと思った。
「でもまぁ、そのおばあちゃん本物だから。最後に話したい事あったら話すといいかしら」
「精霊様・・・ありがとう・・・。おばあちゃん、ごめんね・・・痛かったよね・・・苦しかったよね・・・どうしてこんな風になっちゃったんだろう・・・ただ普通に暮らしてただけなのに・・・」
「おばあちゃん、ボクの事を恨んでくれて構わないからね。ボクも自分の事を一生許さないから・・!!!!」
「・・・リュコ、あたしは何にも恨んだりしてないよ」
おばあちゃんがリュコへと語りかける。
「ただ、一人にしてしまうのが心配でね。これから一人で朝起きれるかい?ご飯も作らないと。着替えを済ませて洗濯も行く前に終わらせて干してかないとねぇ、お皿も洗わなきゃ。 ・・・一人で出来るかい?・・・ごめんねぇ・・・まだお世話してあげたかったのに・・・」
「おばあちゃん・・・」
リュコは涙を拭いながら伝える
「大丈夫だよ!!今はボク一人で生活してたんだよ!!おばあちゃんが居なくても一人で生活出来てた!!
だから」
「心配しないで、大丈夫だから」
にっこり笑いながらそう伝えるとおばあちゃんは安心した顔になり・・・そして消え始める
「時間かしら、具現化するのにもマナが結構消費するのよ。後は頭巾に込めとくから安心するかしら」
「リュコや、元気でね、歯磨き忘れちゃダメよ、友達は大切に、後は・・・幸せになるんだよ。」
「うんっうんっ・・・絶対幸せになるから!!だからおばあちゃん、今までありがとう。」
大好きだよ!!!!そうリュコがそう伝えるとおばあちゃんは消えてしまった。
「あ・・・れ・・・これは・・・」
ただ、おばあちゃんが居たところにはリュコがいつも着用していた、おばあちゃんからもらった、大事な赤い頭巾が置かれていた。
「う・・・うぅ・・・おばあちゃん・・・うわぁぁぁぁぁぁぁん」
頭巾を被るとまだ温かい、優しい温もりを感じながら、しばらく涙を流し続けた。




