15話 おばあちゃん大好き
その日は怖い夢を見た。お腹が空き過ぎて気が狂いそうになっているボク。急にお腹の中が暴れ始めて、何かが出てこようとする。ボクは必死にそれを食い止めようとする、けども抵抗も虚しく、それはお腹を突き破って出てきた。それはあの日の狼だった、舌舐めずりしながらボクの所へ歩いてくる。喰い殺されると思って必死になってると急に顎に力が入る様になった、良く見ると口がいつもの3倍近く大きくなっていて牙も出ている。これなら食い殺せるかもしれない。死んでたまるか、その一心でボクは狼に喰らいつく。
・・・あれ・・・?なんで・・・?おばあ・・・ちゃ・・・
ガバッと布団を吹き飛ばして飛び起きる、余りに酷い悪夢に心臓の鼓動が破裂しそうなくらいに早くなっていた。うっ・・・ゲホッ!!ゲホッ!!気分が悪い、喉に何かへばりついている様な感覚がする。
少し落ち着いてからまた寝ようとしたけど、なぜか眠れない。とても興奮してる気がするので少し散歩して、落ち着いてから寝ようと思う。まだ夜だけど・・・少しなら怒られないよね・・・?
居間の方へ向かうとまだ灯りがついている、おばあちゃんはまだ起きてるのかな?もしかしたら何かに夢中で布団に入らずそのまま寝ちゃったのかもしれない。まったくおばあちゃんったら、ふふっ・・・
いつもの様に大好きなおばあちゃんに声をかける。「おばあちゃ・・・・え・・・・?」
お腹が裂けている、裂けた穴には何も残っておらず空洞に近い。大好きな優しい目が無い、目だけがくり抜かれていて、空虚な穴だけがこちらを覗いている。腕がない、優しく抱き締めてくれるあの腕も好きだった、ボクが学校で怒られて泣きじゃくった日には、家に帰るといつもあの腕の中に包まれていた。
どうしようもない目の前にある恐怖の出来事に腰が抜けてしまった、呼吸困難になって叫び声も出ない。
助けを呼ばなきゃいけないのに足が動かない。
ボクは必死に腕の力を使って外に這いずり出た、家から逃げようと必死に駆け出そうとするが、力が入らず転んでしまう。そして空がいつもより明るいことに気づいた、満月だった。それを目に入れた瞬間ボクの体がどんどん大きくなっていく。身長は今の2倍くらいになり、上半身の筋肉が膨れ上がり、口から牙が出てきて・・・まるで狼の化け物の様になってしまった。
「ヨォ、調子はどうだい?イカしてる格好になったなぁ」
誰かと思い顔を向けると、あの日の狼がそこに居た。
「人間ってうめぇよな、あの時の俺の気持ち分かってくれたんじゃないか?空腹時の辛さがよ、でもその分喰った時が最高なんだぜ。お前も心底嬉しそうだったから良かったよ。」
こいつは何を言ってるんだ、ボクは人間なんか食べた事なんてない。
「何言ってんだって感じか?俺さ、お前に呪いをかけただろ?あれ、俺自身をお前にコピーしたんだよな。
いわば投影って奴?お前はもう俺なのさ、だからお前に俺の代わりに人間を喰ってもらった。あのババアもな」
嘘だ
「この後も腹が減ったらちょこちょこ喰ってもらうからよろしくな、でもこの事を知ったら自殺するかもしれないから・・・今までの記憶をいじらせてもらうわ。」
嘘だ
「じゃあ、この事やババアの事は忘れて生きてくれよな、一緒にうまいもん沢山喰おうぜ。まぁ、もしかしたらお前の大事なお友達も食べちゃうかもしれねぇけどなぁ!! アーハッハッハッハッハッ!!!」
嘘だよ・・・、助けておばあちゃん。
私は意識を投げ捨てる事にした。
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「これが、リュコの過去の様ですわね・・・むごい・・・」
スピネルは余りに壮絶な過去を見て、涙が出そうになっている。僕はただ、あの狼への怒りと自分への後悔を感じていた。
「僕がワンダーアーツの力を与えてしまったことで呪いの力も強化してしまったのかもしれない・・・
それでリュコの精神は・・・」
呪いの増幅なんて考えてもいなかった、どれだけの負荷が彼女にかかったのか計り知れない。
でも、それを聞いたスピネルは。
「貴方様!!!!!しっかりなさい!!!貴方は私を、私達を救ってくれたでしょう!!!!この子だって・・・救えるですわ!!!」
あのスピネルが大きく僕を叱咤する、すぐに冷静を取り戻して話を続けるスピネル。
「あっ・・・ごめんなさい、大きな声を出してしまいましたわね。落ち着いて考えましょう。呪いの解除方法を探せばきっとリュコも元に戻りますわ。」
「ううん、大丈夫。諦めたわけじゃないよ。探し出そう、彼女を助ける方法を。」
僕達は眠るリュコにせめてもの回復魔法と、そして彼女が忘れてきた赤いフードをそっと胸元に置いて、精神世界から現実へ戻る事にした。
「リュコ、君の事を必ず助けるから、もうちょっと待ってて欲しい。」
約束するよ。そう伝えると少しリュコの表情が和らいだ様に感じた。
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「おにーさんおかえりっ」 「おにい、どうだった?原因分かった?」
起きると同時にツイン幼女が詰め寄ってきた。僕は刺激が強くならないように、内容を一部ボカしながら見てきた事を伝えることにした。
「リュコさん・・・そんな重荷を背負ってたんだね・・・」
「記憶を奪われてるから本人は覚えてないのが唯一の救いだったのだけど・・・、僕のワンダーアーツのせいで思い出してしまった可能性が高いんだ。だからなんとしても救わないといけない。」
「おにーさんなら助けられるよ、私もなんでもするから言ってね!」
「おにい、私もなんでもするからね・・・」
ありがたい、仲間達で協力し合えばなんでも出来る気がする。でも魔法でも解除できないあの呪いをどうすればいいんだろうか。そう呟くと。
「私に少し提案があります。火倖祭・・・なんですけども、あれって悪い運気や病気みたいのを追い出す為に古来から行われてるらしいのですが・・・。どうやら精霊を降臨させるみたいですわよ。」
「精霊・・・?なんでまた」
「詳しい所までは分かりませんが、目的が浄化作用。崇拝の対象が精霊。これって一度直接会いに行ってみるべきではありませんこと?」
確かに、もしかしたら呪いも浄化してくれるかもしれない。目標は火倖祭に降臨する精霊、僕達は街へ急ぐ事にした。
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