10話 初夜
家に帰った僕達は、アリスとノワールが居間に置いてあるテーブルで眠りに着いている事に気がつき、二人を寝室に運んであげる事にした。
「貴方様。今日あった事はこの子達には絶対に内緒にして下さいね。まだ・・・、そういう事を知る年齢ではありません・・・」
「分かったよ、二人は内緒にする。ありがとうスピネル、僕を助けてくれて。君が居なかったら僕は永遠に意識が戻らなかったかも知れない。」
「いいんですのよ。困ったときに助け合うのが仲間でしょう?それに・・・私の方こそ・・・ごめんなさい、
もっと注意しておけば、準備しておけばこんな事にならずに済んだかもしれません・・・」
「スピネルは悪くないよ、悪いのは全部僕さ。話し合えば解決するとか考えてしまって、お酒を誘われた時は既に心を許してしまってたんだ。信用して・・・騙されて・・・馬鹿じゃないか・・・。」
僕が自責の念で押し潰されそうになってる事に気がついたスピネルがソファーの隣に座ってくる。
腕を絡ませてきて身を寄せる彼女の体に触れると、震えている事が分かった。
「私だって・・・怖かった!!!!やっと一人じゃ無くなって、前を見る事が楽しくなってきたのに、それが壊れてしまいそうで・・・泣きそうだった・・・。でも、私がなんとかしないと駄目な事が分かって無我夢中だった!!!貴方を失ったら2度とあの子達の顔を見る事なんて出来ない!!!!!!」
スピネル、紅の女王、鏡の魔法使い。アリスとノワールがまだ14~5位だとすると、彼女もまだ17歳くらいだろう。まだ成人にも満たないまま城主として君臨する為に築き上げてきた氷の様なプライドは、僕やアリス・ノワールによって溶かされた。そして今目の前にいる彼女は女王でもなんでもない唯のスピネル、彼女もまだこんな事に関わらずに生きていくべき少女だった。
それなのに自分の事ばかりになってしまった・・・僕が今、一番助けなければいけないのは彼女なのだ。
「ごめんよ、スピネル。本当に頑張ったね・・・巻き込んでしまってごめん、誓ってもう2度とあんな事にはならないようにするから・・・だから、許して欲しい・・・。」
「・・・っ、ごめんなさい。つい我慢出来なくなってしまって・・・。大丈夫ですのよ、私はもう2度と貴方様を一人になんてしませんわ。」
涙を拭いながらそう告げるスピネルの瞳には、先程までの曇りが無く、強い意志が宿っていた。
「ふふっ・・・そういえば、今日は一緒に寝てくださるのでしたよね?それは・・・そういう事って・・・認識でいいんですの・・・?」
頬を真っ赤に染めながら上目遣いでこちらを見るスピネル。僕はようやく理解して心臓が高鳴ってきた。
「うん・・・僕でよければ・・・」
「もちろん貴方様で無ければいけませんわ。それと・・・もしいつか、ノワールからこういう事を求められたら。受け止めてあげて下さいませ。あの子も・・・貴方様の事が好きだから・・・」
「ノワールが?全然気づかなかった・・・、でもスピネルはどうしてそ・・・」
言い終わる前に突然唇を奪われた、なんだか甘い匂いがする。
「はい、この話はここまで。あとは私で一杯になって下さいませ、あと・・・初めてなので優しく・・・」
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「うーん!いい朝だねっ二人共おはよーっ!いつの間にか帰って来てたんだね!!」
朝起きるとニコニコしながらアリスが寄ってくる、朝から元気を貰えそうだ。
「おにい、おはよう〜」
ぎゅ〜っと後ろからノワールに抱き締められた。スキンシップに信頼を感じて嬉しくなった。
「あれ?おにいから女王様の香りがする・・・?」
まずいと思った僕は咄嗟に言い訳をして乗り切った。
「貴方様、ノワールとアリスも、おはようございます。いい天気で気持ちがいいですわね。チラッ」
スピネルはこちらをチラッと見たが、目線を合わせると慌てて目を逸らしてしまった。
昨日の事で何か怒ってるのだろうか・・・、二人に聞こえないように小さな声で話しかけてみる事にした。
「スピネル、おはよう、昨日はむぐっ!」
指で唇を塞がれてしまい、昨日に続いて言葉を遮られてしまった。
「な・い・しょ、ですわよ。恥ずかしいので昨日の事は心の中にしまっておいて下さいませ。でももし、またしたくなったら、私はいつでも構いませんから・・・ね?」
二人に見えないように頬にキスをして離れていくスピネルに、朝からドキドキさせられるのだった。
その後僕たちは街の様子を見に行く事にした、王が居なくなった原因が僕達だとバレないはずだけどいなくなった事によって混乱は起きているはずだ。
「大きい街だね、私の村とは全然違う・・・」
「すごいねー!! あっ!クッキー売ってるよー!、食べてもいい〜?」
街に着くと二人は大はしゃぎだった。元々住んでいた村と人口も売ってるものも全然違うし、彼女達は村から出たことがなかったので当然の反応だろう。
広場に出ると女性が大衆に向かって演説をしている姿が見えた。
「皆様お集まり頂きまして、誠にありがとうございます。昨晩から姿が見えなくなっている父の事で混乱を招いてしまって大変申し訳ございません。父が見つかるまで私が国王を代理し、国営の指揮を取らさせて頂きます。どうかよろしくお願い致します。」
綺麗な青髪をした美しい女性は周囲に人々に対して深々とお辞儀をして、再度演説を続ける。
彼女の名前は『ルナ』で国王の次女だ、いなくなった国王の代わりを務めるらしい。
賢女として評判が高い彼女であれば良い国を築きあげてくれるだろう。
当初心配していたほどの混乱は街にはなくて一安心した僕は、皆と街で遊んで帰る事にした。
後ろからグリム達に着いてくる影があるとも知らずに・・・。
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