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異世界で造形師めざします!  作者: コオリ
第一章【黄昏の魔術師】
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09 魔力の物質化と固定化


「キミは筋がいいようだな」

「え! 本当ですか? やった!」


 魔力の流れはすぐに掴むことができた。

 どうやら、胸のあたりに魔力を貯めておく器官のようなものがありそうだ。全部感覚だから、違うかもしれないけど。

 それをゆっくり全身に巡らせたり、右手に持った杖のほうに流したり。

 師匠の指示どおりに魔力を動かしていく。


「それが魔力操作の基本だ。まずは体内で魔力を動かすことに慣れる。慣れてくれば、外に出した魔力も問題なく扱えるだろう」

「そっか。これを外に出して使うと魔法になる……?」

「ああ。今の状態では、MPは減っていないだろう?」


 師匠に言われて、ステータスウィンドウは出しっぱなしにしていた。

 自分の身体の状態がわかりやすいだろう、って。確かに師匠の言うとおり、私のMPは満タンのままだった。


「出したら、減る……ちなみに回復は?」

「休んでいれば時間経過で回復する。眠っているほうが早いな。ポーションと呼ばれる薬もあるが、多用すると酔う」

「……酔うんですね。あれ」

「ああ。かなり気持ち悪くなるのでお勧めはしない」


 そうなんだ。

 この世界のポーション……あんまり便利じゃないんだな。


「あ、ちなみに。HPは0になったら死にますよね?」

「死ぬ。身体が残っていれば、多少復活の可能性は残されているが――まあ、死ぬと考えるのが一般的だな」


 ――やっぱり、そっか。


 ということは、私の命は300という数値で表されるものなんだ。

 これが0になったら死ぬ。

 なんだろう。やっぱり不思議だし、わけのわからない怖さがある。


「無茶をしなれば大丈夫だ。無闇に恐れるな」

「っ……はい!」


 そうやって話す師匠は、歴戦の猛者って感じだった。

 レベルが高いってことは、実際にそれだけ多くの敵と戦ってきたんだろうし――本物、なんだろうな。


「さて、そろそろ魔力を動かすのにも慣れてきたようだな。話しながらそれだけ動かせるんだ、本当にキミには魔術師の才能がありそうだな」

「あ、もしかしてこうやって雑談してたのも練習の一つでした?」

「そうだ。集中することも大事だが、そうでないときにうまく扱えてこそだと、ボクは思っているからな」


 確かに魔力を動かすたびに集中なんてしてたら、あっけなく敵にやられてしまいそうだ。

 力まずに自然に扱えてこそ、魔力を効率的に魔法に繋げることができるんだろう。


「では、杖を構えて。その先端から魔力を外に出すイメージを持って」


 杖から、魔力を……出す!!


「わ、わわわ――っ!」


 思いっきり出てしまった。

 なんの魔法にもならなかった魔力はうっすらと靄のように広がって見える。ぶわわぁ、と一気に広がって止まらない。


「え、え……これどうやって止めれば」

「外に出た魔力も体内のときと変わらない。キミの意志によって動かせるはずだ」

「あ……そっか。えっと――あ、わかった」


 魔法って本当に感覚のものだった。

 全部体験して知る、って感じだ。知識だけじゃ絶対扱えないやつ。


「そう、上手いな」

「あ、今のでMP200も減ってる……」

「200で済んだなら上出来だ。全部一気に吸い出されて、卒倒するものがほとんだからな」

「え? そんな危ない練習なんですか? これ」

「倒れても、ちゃんと頭は打たないようにするさ。そのための師匠だからな」


 結構スパルタだった。

 師匠、黙っていればかなり優しそうなイケメンなのに……人は見た目で判断できないな?


「これって、ここからどうしたら」

「キミは魔力を物質化したいと言っていただろう? できそうな感じはするか?」

「え? いきなり、それ?」

「魔法は感覚がすべてだ。できそうか、そうでないか……何かわからないか?」


 ――それが、普通にできそうなんですけど。


 さっきまではうっすら靄のように見えていた魔力が、今はシャボン玉のような感じに見える。

 少しずつ、魔力の硬さが増していっている感じだ。あくまで感覚だけど。


 ――でも、大事なのは感覚だって師匠も言ってたし。


 なら、これは「できそう」で間違いない。

 今すぐ完璧にできるかと言われれば、ノーだけど――いつかはできる気がする。


「できそう、って顔だな」

「……なんか不思議とそう思うんですけど、合ってますか?」

「やはり、ボクなんかすぐに追い抜いていきそうだな。キミは」


 師匠が杖を構えた。

 傾けた杖の先端から、師匠の魔力が放出される。ふよふよとした、スライムみたいな魔力だ。


「昨日、試してみてここまではできたんだが――逆に言えば、ボクにできるのはここまでのようだ」

「え?」

「キミとボクでは魔法に対する練度が違う。だからこそ、わかるんだよ。自分の限界がすぐに」

「……それって、捏ねたりはできない感じですか?」

「できないな。まず、完全に物質化できていない。だから、固定化も不可能だろうな」


 ふよん、と杖から離れた魔力はしばらくしたら消えてしまった。

 完全に物質化できていない、と言ったのはこういう意味だったらしい。

 これじゃ確かに、粘土のように捏ねることはできない。


「キミのそれはどうだ?」

「待ってくださいね――よいしょ、っと」


 杖を上下に振ると、先端から魔力が離れた。

 それは本当にシャボン玉のように、ふわふわと大気に浮かんでいる。師匠の魔力のように消えることはないみたいだった。

 その魔力に、師匠が指を近づける。つん、とつついた。


「……すごいな。やはり消えない」

「でも、捏ねるのは無理そうですね」

「だな。あくまでこの形のまま――という感じだ。しかし……魔力の物質化と固定化、どちらも成功している」


 MPは30消費していた。

 これがMP30を消費して作った私の魔力の塊、なのか。

 手の平に乗せてみる。杖の先でつんつんとつついても、それはシャボン玉のように割れることはなかった。


 ――ちょっと硬めのゴムボールって感じ?


 試しに地面に向けて落としてみる。

 跳ね返ってくるかと思ったそれは、ずん、と深く地面にめり込んでしまった。


「……危ないもののようだな」

「ですね。人に向かっては投げないようにします」


 よかった。

 師匠に「へい、パス!」とか言わなくて。




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