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異世界で造形師めざします!  作者: コオリ
第一章【黄昏の魔術師】
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05 魔法の師匠ができました


 少し考えてみよう――そう言われ、その場はお開きとなった。

 トゥカはこの宿に泊まっているのではなく、王都のはずれにある屋敷をしばらく自分の家として借りているらしい。

 明日はその家を訪ねることになった。


「明朝、迎えに来る」

「はい! お待ちしてます。師匠(せんせい)!」

「師匠か。まあ、それもいいか」


 私はトゥカを師匠と呼ぶことに決めた。

 これから魔法を教えてもらうのだから、その呼び方がちょうどいい。


 ――私に魔法の才能、あるといいんだけど。


 魔法で造形をしてみる、という思いつきは我ながらいいと思ったが、それが実際にできるかどうかはまだわからない。未知のことだらけだ。

 でも、もしうまくいけば――造形で食べていくための確実な第一歩になる。


「頑張るぞー!!」


 宿の自室で思わず叫んでいた。

 これから始まる異世界での生活にワクワクが止まらない。

 ドン、とすぐ横の壁を誰かが殴った音が聞こえたけど、それすら私の新しい門出を祝ってくれている祝砲のように思えた。



   ◆◇◆



「おはようございます!」

「おはよう。ここで朝食を食べて行こうと思うのだが」

「いいですね。私もお腹が減ってたので賛成です」


 この宿のご飯は本当においしそうな匂いがする。

 実際、味もおいしかった。

 この宿と食堂を切り盛りしているのは、ニャオのご両親だ。今日もニャオは給仕として、食堂の中を駆け回っている。


「日替わりでいいですかー?」

「うん。私はそれで」

「では、ボクも同じものを」

「かしこまりましたー!」


 返事に合わせて、ぴくぴくと動く三角耳が本当に可愛い。

 それに、ゆらゆら揺れている長い尻尾もだ。たぶん、ニャオは猫獣人なんじゃないかな。

 笑ったときに見える牙も、愛嬌があってすごく可愛い。うん、かなり眼福だ。


「獣人が珍しいのか?」

「ですね。向こうにはいなかったので」


 この世界は何もかもが新鮮だ。

 同じように朝食を食べている他のお客さんも、どうやらいろんな種族がいるみたいだった。耳の尖った人や、肌が青色の人――髪や目の色なんか本当カラフルだし、見ていて全然飽きない。


「そうだ。魔物とかっていたりしますか?」

「ああ、存在する。やはり怖いか?」

「いえ! ワクワクします」

「わくわく……?」

「あ、危険は重々承知してますよ。ただ、私そういうのが好きで」

「……魔物が、好き?」

「ほら、あのごつごつした肌とか、奇妙な形の角とか……見てて、気持ちが高ぶりません?」

「…………ボクにはわからないな」


 ――もしかして、ちょっと引かれた?


 でも、好きなものは好きなんだからしょうがない。

 怖いけど、好き。

 気持ち悪いところが、いい。

 なんていうか、こう……ぞわっとする感じがたまらないんだけど、やっぱり伝わんないものなのかな。


 ――まあ、実際に魔物の危険にさらされたら、私も苦手になる……いや、それはない気がするけど。


 本当に大好きなのだ。

 これだけは、誰にも理解されないとしても気持ちを貫き通したい。

 クリーチャー大好き! ドラゴン万歳!


「そうだ。ボクの家に行く前に、杖の店に寄っておきたい」

「杖の店……ですか?」

「ああ。魔法を使うのに杖は必須だからな。キミの杖を見ておきたいんだ」

「おお……私の杖」


 やばい。ファンタジー感が一気に増した。

 自分専用の杖だなんて。


「あと、服もだな。着替えがないのだろう?」

「……はい。すいません……いろいろお手数おかけして」


 なんか、師匠にはかなり助けてもらっている気がする。

 どうしてここまで、私のことを助けてくれるのかはわからないけど――悪い人じゃなさそうだし、こういうのも縁だ。

 もし、師匠に裏切られたりしたときは……私の見る目と、運が足りなかったってことで。


「あ、そうだ。身分証とかって……何かあったほうがいいですか?」

「そうだな。それも必要か――キミの魔法の才を確認して、大丈夫そうなら魔術師ギルドを紹介しよう。そこで身分証を発行してもらえばいい。ボクが後見人になるよ」

「え? そこまでしてもらって大丈夫なんですか?」

「構わないよ。キミは面白そうなことをしてくれそうだからね。ボクはそういうのが大好きなんだ」


 そう言って笑う師匠の目がキラキラ輝いている。

 確か、昨日もこんな顔をしていた。師匠は本当に面白いものが好きなんだろう。

 こういう顔をする人に悪い人はいない。たぶん……知らないけど。


 師匠と一緒に笑っていた私は、周りの人の視線が師匠に注がれまくっていることに、全く気がついていなかった。


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