21 実験開始!!
「……王城、ですか?」
「ああ。父や姉のせいで、すぐに出て行かれてしまったがな。私は兄弟たちの中でも魔力が多くてね。扱い方を大賢者に教わったことがあるんだ」
――王城。父や姉のせいで……兄弟たち。ううん……もしかして、ヴァンさんの正体って。
言い当てていいものなんだろうか。
それとも、気づいていないふりをするほうがいいことなのかな。でも、ヴァンさんはあんまり隠す気がなさそうっていうか、正体を気づかせようとしている気がする。
――ええい。めんどくさい!
「ヴァンさんって、もしかしてこの国の王子様だったり……?」
「ああ、一応な。現王の第五子にあたる……が、年の離れた兄にはもう子供がいるからな。大した立場ではないさ」
案外、あっさりとネタばらしされてしまった。
これって、どうなんだろう。私が勇者召喚で巻き込まれてきた転移者だって、気づかれてたりするのかな。
王子様云々って話より、そっちのほうが私的には重要なんですけど?
「――まあ、この場ではお互いが何者かなんてどうでもいい。そうだろう?」
「私も、そのほうが助かります」
「じゃあ、そうしよう。なんなら、敬語も必要ないぞ? 無礼講といこうじゃないか。なあ、リード」
「……はぁ」
リードさんは、ヴァンさんに結構苦労させられてる人なのかな。隠す気もないのか、ヴァンさんの言葉に、大きく溜め息をついている。
従兄弟だって話だったし――いつもこうやって振り回されているのかもしれない。
「実験、進めましょうか」
しばらく、どうこたえようか悩んだけど、今ははっきり答えないことにした。
ヴァンさんがどういう立場の人かも、よくわかってないからね。迂闊なこと言えないじゃん。
ねじねじリングを手に取って、金色の魔力が渦巻く魔力水の中に投入する。ぱちん、といつにも増して激しめの音が鳴った。
「わわわ」
「怪我はないか?」
驚いている私の手を引いてくれたのは、リードさんだ。
ヴァンさんが小瓶が倒れないように支えてくれている。二人とも、咄嗟の行動が素早い。
「赤くはなっていないな。痛みは?」
「大丈夫。なんともないです」
びっくりしたけど、魔力水の中で弾ける火花は熱いものではなかった。
軽く水がかかったぐらいの感じだ。ひりひりしたりもしないし、痕になったりもしていない。
「色が変わったりするものではないんだな」
「ですね。今日、露店で売ったものも確認しましたけど、そういう変化は一つもなかったです」
「そうか」
ぱちぱちと、強めに弾けていた火花も少しずつ収まってくる。
音が静かになるころには、魔力水の色も無色透明に戻っていた。杖の形をピンセットのように変えて、小瓶から指輪を取り出す。
「君の杖は便利だな」
「そんな風に形の変わる杖、初めて見ました」
――そういえば、お前レア杖なんだったね。相棒。
「さて、と」
二人分の魔力とちゃんと馴染んだみたいだけど……効果はどうなんだろう。
それ以前に、二人とも付けられるようになっているのかな?
「先に私が通してみていいですか?」
「構わないが……そういえば、使用者登録をする前でも、セトにはこの指輪の効果があるのか?」
「ありますよ。私の魔力で作ってるんで、当然といえば当然かなって。ただ、使用者登録をすると私には使えなくなるんですよね……うん。やっぱりそうだ」
ファーラがギルド長の指輪に拒まれている感じがするって、言っていたような感じは私にはわからないけど、開いたステータスウィンドウにプラスの効果は何もついていない。
私には何の効果もない装飾品になっちゃった、ってことだ。
「じゃあ、次は私がつけさせてもらおう」
ヴァンさんはそう言うと、私が指輪を外すまで待てなかったのか、ひょいっと私の指から指輪を抜いていく。すぐに自分の指へと嵌めた。
「これ、は……」
虚空を見て、固まった。
この反応はリードさんと同じだ。ヴァンさんも今、自分のステータスを見ているんだろう。
「この効果……あんなにも簡単に作っているように見えたのに。まさか、これほどまでとは」
――あ、そういえば……ねじねじリングの効果、確認するの忘れてた。
最初は凝ったものを作るつもりじゃなかったから、すっかり忘れてしまっていた。
ねじねじしただけだけど――私が思っていたよりも、ずっといい付与効果がついてしまったみたいだ。驚いているところを見ると……ステータスが二つぐらい上がっているのかな。
確認したいけど、聞きたくない。
「末恐ろしいものだな。魔術造形とは」
「……ええっと」
「この能力を持ったのが君でなかったらと思うと、ぞっとするな」
「私は、いいんですか?」
「大賢者が認めた相手だ――それだけで充分、君は信じるに値する。それに、私は君と敵対するつもりはないからな。たとえ、勇者を敵に回そうとも」
――やっぱり、ヴァンさん。私が転移者だって気づいて。
でもそれ以上、何か言うつもりはないみたいだった。
充分に確認し終えたのか、指輪を抜くとリードさんに手渡す。
「ほら、お前も確認してみろ」
「はい」
受け取ったリードさんが指輪をはめるために、既に嵌めていた装飾品の一つを外す。腰にぶら下げた小さなポーチにそれを仕舞って、おもむろに指に嵌めた。
ちらりと視線を上げる。ほう、と息を吐き出した。
「私にも、きちんと効果があるようです」
「二人ともを使用者登録できた、ってことですね」
「私とリードの場合、血が近いから成功したという可能性がないこともないがな。不可能ではないということがわかったな」
「ですね。じゃあ、こっちの指輪も」
ごっついリングも、ぽいっと魔力水の小瓶に放り込む。
ばちばち、と跳ねた火花に驚いていると「君は学習しないな」と、またしても助けてくれた二人に呆れられてしまった。
す、すみません……。




