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異世界で造形師めざします!  作者: コオリ
第二章【勇者出立祭】
37/46

21 実験開始!!


「……王城、ですか?」

「ああ。父や姉のせいで、すぐに出て行かれてしまったがな。私は兄弟たちの中でも魔力が多くてね。扱い方を大賢者に教わったことがあるんだ」


 ――王城。父や姉のせいで……兄弟たち。ううん……もしかして、ヴァンさんの正体って。


 言い当てていいものなんだろうか。

 それとも、気づいていないふりをするほうがいいことなのかな。でも、ヴァンさんはあんまり隠す気がなさそうっていうか、正体を気づかせようとしている気がする。


 ――ええい。めんどくさい!


「ヴァンさんって、もしかしてこの国の王子様だったり……?」

「ああ、一応な。現王の第五子にあたる……が、年の離れた兄にはもう子供がいるからな。大した立場ではないさ」


 案外、あっさりとネタばらしされてしまった。

 これって、どうなんだろう。私が勇者召喚で巻き込まれてきた転移者だって、気づかれてたりするのかな。

 王子様云々って話より、そっちのほうが私的には重要なんですけど?


「――まあ、この場ではお互いが何者かなんてどうでもいい。そうだろう?」

「私も、そのほうが助かります」

「じゃあ、そうしよう。なんなら、敬語も必要ないぞ? 無礼講といこうじゃないか。なあ、リード」

「……はぁ」


 リードさんは、ヴァンさんに結構苦労させられてる人なのかな。隠す気もないのか、ヴァンさんの言葉に、大きく溜め息をついている。

 従兄弟だって話だったし――いつもこうやって振り回されているのかもしれない。


「実験、進めましょうか」


 しばらく、どうこたえようか悩んだけど、今ははっきり答えないことにした。

 ヴァンさんがどういう立場の人かも、よくわかってないからね。迂闊なこと言えないじゃん。

 ねじねじリングを手に取って、金色の魔力が渦巻く魔力水の中に投入する。ぱちん、といつにも増して激しめの音が鳴った。


「わわわ」

「怪我はないか?」


 驚いている私の手を引いてくれたのは、リードさんだ。

 ヴァンさんが小瓶が倒れないように支えてくれている。二人とも、咄嗟の行動が素早い。


「赤くはなっていないな。痛みは?」

「大丈夫。なんともないです」


 びっくりしたけど、魔力水の中で弾ける火花は熱いものではなかった。

 軽く水がかかったぐらいの感じだ。ひりひりしたりもしないし、痕になったりもしていない。


「色が変わったりするものではないんだな」

「ですね。今日、露店で売ったものも確認しましたけど、そういう変化は一つもなかったです」

「そうか」


 ぱちぱちと、強めに弾けていた火花も少しずつ収まってくる。

 音が静かになるころには、魔力水の色も無色透明に戻っていた。杖の形をピンセットのように変えて、小瓶から指輪を取り出す。


「君の杖は便利だな」

「そんな風に形の変わる杖、初めて見ました」


 ――そういえば、お前レア杖なんだったね。相棒。


「さて、と」


 二人分の魔力とちゃんと馴染んだみたいだけど……効果はどうなんだろう。

 それ以前に、二人とも付けられるようになっているのかな?


「先に私が通してみていいですか?」

「構わないが……そういえば、使用者登録をする前でも、セトにはこの指輪の効果があるのか?」

「ありますよ。私の魔力で作ってるんで、当然といえば当然かなって。ただ、使用者登録をすると私には使えなくなるんですよね……うん。やっぱりそうだ」


 ファーラがギルド長の指輪に拒まれている感じがするって、言っていたような感じは私にはわからないけど、開いたステータスウィンドウにプラスの効果は何もついていない。

 私には何の効果もない装飾品になっちゃった、ってことだ。


「じゃあ、次は私がつけさせてもらおう」


 ヴァンさんはそう言うと、私が指輪を外すまで待てなかったのか、ひょいっと私の指から指輪を抜いていく。すぐに自分の指へと嵌めた。


「これ、は……」


 虚空を見て、固まった。

 この反応はリードさんと同じだ。ヴァンさんも今、自分のステータスを見ているんだろう。


「この効果……あんなにも簡単に作っているように見えたのに。まさか、これほどまでとは」


 ――あ、そういえば……ねじねじリングの効果、確認するの忘れてた。


 最初は凝ったものを作るつもりじゃなかったから、すっかり忘れてしまっていた。

 ねじねじしただけだけど――私が思っていたよりも、ずっといい付与効果がついてしまったみたいだ。驚いているところを見ると……ステータスが二つぐらい上がっているのかな。

 確認したいけど、聞きたくない。


「末恐ろしいものだな。魔術造形とは」

「……ええっと」

「この能力を持ったのが君でなかったらと思うと、ぞっとするな」

「私は、いいんですか?」

「大賢者が認めた相手だ――それだけで充分、君は信じるに値する。それに、私は君と敵対するつもりはないからな。たとえ、勇者を敵に回そうとも」


 ――やっぱり、ヴァンさん。私が転移者だって気づいて。


 でもそれ以上、何か言うつもりはないみたいだった。

 充分に確認し終えたのか、指輪を抜くとリードさんに手渡す。


「ほら、お前も確認してみろ」

「はい」


 受け取ったリードさんが指輪をはめるために、既に嵌めていた装飾品の一つを外す。腰にぶら下げた小さなポーチにそれを仕舞って、おもむろに指に嵌めた。

 ちらりと視線を上げる。ほう、と息を吐き出した。


「私にも、きちんと効果があるようです」

「二人ともを使用者登録できた、ってことですね」

「私とリードの場合、血が近いから成功したという可能性がないこともないがな。不可能ではないということがわかったな」

「ですね。じゃあ、こっちの指輪も」


 ごっついリングも、ぽいっと魔力水の小瓶に放り込む。

 ばちばち、と跳ねた火花に驚いていると「君は学習しないな」と、またしても助けてくれた二人に呆れられてしまった。


 す、すみません……。


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