15 売れた……!!
「これは……」
リードさんが虚空を見つめて固まっている。
やっぱり、みんなステータスウィンドウが見えるんだね。転移者特権じゃないのは知っていたけど、魔術師特権でもなんでもなく、こっちの世界の人の標準装備らしい。
まあ、能力も数値化されているみたいだしね。面白い仕組みだよなぁ。ステータス。
でも、自分の能力がはっきり数値化されているっていうのはいいなぁ。
自分の能力の可能性とかわかりやすいし。
私、本当に魔法以外での戦闘向いていないのわかってるからね。本当に。
頭のおかしいDEXと普通より高いINT以外、レベルが上がっても全然上がんないもん……。
「数量の購入制限はあるのか?」
「え、いや……特に決めてませんけど……」
「では、これと……あと、こっちの三つも」
――んん? 全部で五つも買ってくれるの?
「金銭に余裕があれば、この中の商品も気になったのだが」
そう言ってリードさんが見つめているのは、二つだけ用意した目玉商品だ。
めっちゃ食いついてくれるじゃん、嬉しいなぁ!
「よう。第五の団長さん。その指輪、効果は本物で間違いなかったのかい?」
「アルストか。ああ……これは、とてつもない代物だ」
後ろから別の人が現れた。
見るからに冒険者! って感じの風貌だ。薄汚れた見た目と服装だけど、武器だけはきちんと手入れされているのがわかる。
年齢は四十代ぐらいかな? かなりの手練れなのか、ものすごい強い感じがする。
――っていうか、リードさん。団長さんだったんだ。第五って……第五騎士団、とかかな?
「誰か人柱になるのを待ってたんだが、まさかアンタが最初とはねえ」
「……人柱って」
「ははっ、すまねえな、嬢ちゃん。聞こえちまったか。アンタ、初めて見る顔だったからな。それが偉えもん売ってるって、冒険者ギルドでも噂になってたんだよ」
「噂になってたんですね……誰も買ってくれないから、需要がないのかと」
――こっちは、心が折れかけてたんですけど!?
「ただ、安いもんではなかったんでな。最初に買うって勇気がなくってなあ」
「……それは、まあ。わかります」
効果の真偽がわからないものに金貨10枚、ぽんっと出せる人のほうがおかしいのだ。
そう考えると、リードさん。冒険者以上に冒険したな。すごい、えらい。
「でもまあ、この堅物がこれだけ金出すってことは本物だったんだろ?」
「……お前に見つからなければ、団の経理に連絡して買い占めさせようと思っていたのに」
「そりゃあ、残念だったなあ」
――え? え? 買い占め? マジ?
二人の間で話がぽんぽん進んでいく。
私としては、嬉しい話ばかりだけど……ってリードさん、本気でさっきの五個。買うつもりなのかなぁ。
「まずは、この分の会計を済ませておこう」
「あと、魔力水での使用者登録もこの場でお願いします」
「ああ。わかっている」
リードさんはさっきので、登録の要領はわかったらしく、魔力水を渡すとそこに自分の魔力を流してくれる。
一つずつしか、浸すことができないので、小瓶を四つ並べて置いておいた。
「おれも一つ買うかな」
「ありがとうございます!」
「……しっかし。さっきもチラッと見たが、やべえもんばっかりだよなぁ」
「そうですか? このぐらいなら装備として普通に売られてるって聞いたんですけど……」
「ここまで大量に並んでるのは初めて見るぜ。こういう装飾品ってのは、市場に出回る数がかなり限られてるからなぁ」
「……へえ。そうなんだ」
「だから、本物じゃねえかもしれねえって思ったんだ。悪いな」
「いえ! 大丈夫です!」
冒険者さんは、じっと商品を見て品定めをしているようだった。
気になっているのは防御力の上がるものみたいだ。手持ちはあんまりないのか、一番下の段の金貨10枚コーナーばかりを見ている。
「セト。代金を確認してくれるか?」
「あ、はい!」
リードさんの使用者登録がすべて終わったらしい。
効果を全部確認したリードさんが、五個分の指輪の代金である金貨60枚を私に差し出してきた。おおう……大金だ。
枚数を確認して、即アイテムボックスに収納する。
「君のそれは、もしかして魔術で収納しているのか?」
「あ、はい。師匠に……ルトゥカリに用意してもらって」
「そうか。それなら何者かに奪われるような心配もないな」
――そういえば、この袋。他の人には使えないようになってるんだっけ。どこかに置き忘れても、呼び出せばすぐに手元に戻ってくるし。
実はそんな便利機能もついていた。
師匠、たぶんいろいろ考えてくれたんだろうな……私なら絶対に無くすだろうって思われていたに違いない。うん……まあ、私もやらかさないとはいわないけど。
っていうか、前にもう一回、無くしそうになったんだよね。自宅で。
――悪かったな、散らかし放題で。
師匠に全部、この展開を読まれていたっぽいのが……少し複雑だ。
リードさんが買ってくれた商品を用意しておいた装飾品用の小さな袋に一つ一つしまいながら、師匠の不敵な笑みを思い出す。
まあ、予想どおりなんですけどね!!
「おい、嬢ちゃん。これ、貰えるか」
後ろから、声を掛けてきたのは冒険者さんだ。
そういえば、商品を選んでいたんだっけ。
「あ、はい……って、ええ?!」
露店のほうを振り返ると、そこには十人ほど冒険者ばかりの人だかりができていた。




