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異世界で造形師めざします!  作者: コオリ
第二章【勇者出立祭】
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04 試作品第一号はおひげリング


 作るのは実用性のある、装備としての装飾品(アクセサリー)

 私が魔術造形で作るものには魔石のような効果があるから、身に着けるようなものにそういう付与のようなものをつけられないかっていうのは、前から考えていたことだった。

 最初は師匠が言い出したことだったんだけど――でも、なかなかうまくいかなくて。

 ただ、あのドラゴンを助けたときに一つ、糸口が見えたのだ。


「使う人の魔力を混ぜる……ってことなんだけど」


 あのドラゴンの魔石に魔術造形を使ったとき、ドラゴンの魔力と私の魔力が混ざったんだよね。

 たぶん、うまくいったのはそれのおかげ。

 だから、それを応用して何かできないかなって思ったんだけど――ついにそれを試してみるときがきたみたいだ。


「その実験のための材料になるのが、ギルド長のくれた魔力水!」


 誰も見せびらかす人はいないけど、取り出した小瓶を掲げてみる。パンパカパーン。

 ギルド長に「魔力をちょっともらえませんか?」って聞いてみたのは、半ば賭けだった。黄昏の魔術師なんて立派な二つ名を持つ師匠にも魔力の物質化はできなかったので、もしかしたら無理かな? って思ってたんだけど。

 まさかこういう特殊な水があるなんて。


「ちょっと薄いかもだけど、まあ、なんとかなるよね」


 水を媒介している分、その魔力濃度が気になるけど――まあ、それは試行錯誤しながら考えるってことで。

 やってみてダメだったら他の方法、それもダメだったら次っていうのは開発の基本だ。

 失敗は恐れない!

 なんてったって、魔術造形は今のところ私しか使えない魔法なんだし。


「とりあえずは指輪あたりかなぁ。本当は籠手ぐらい作ってみたいけど、そうなってくるとオーダーメイドじゃないとぴったり合わないだろうし」


 祭りには王都の外からもたくさん人が来るだろうって話だった。

 そういう人に買ってもらうなら、オーダーメイドなんて時間のかかることはしていられないし。でも、いつかはそういうゴテッとした装備も作ってみたい。


「よーし。試作していくぞーっと。相棒よろしくね」


 杖を手に持って声を掛ける。

 ふぉん、と相棒はいつもどおり、淡い光で返事をしてくれた。

 その先端に魔力を送る。まずは指輪を作るための準備として芯棒を作りだす。芯棒とは、指輪のサイズの基準となる棒のことだ。

 装着者に合わせて大きさが変わる魔法の指輪、なんてものが作れればいいんだろうけど、まだそんな便利なものは作れそうにないからね。

 指輪はいくつかサイズを用意してみるつもり。


「芯棒はこれでオッケーっと」


 実際の造形を始めたときに壊れてしまわないように、しっかり固定化する。

 さて、ここから本番だ。

 杖にもう一度、魔力を通して魔力パテを出す。

 指輪用だからそんなに多くなくていいけど、いくつか試作してみるつもりだし、ちょっと多めに机の上に出してみた。


「魔力パテも、いい感じなのが安定して作れるようになってきたなぁ」


 ちなみに魔力パテは一種類だけじゃない。

 削りやすさ、広げやすさ、細かい装飾のしやすさなどなど――いろんな種類の魔力パテを開発してある。材料も作るものに合わせないとね。

 今回は指輪用なので、細かい装飾のしやすいパテだ。これなら細いデザインのものを作っても、それなりに耐久性も高くていい。

 それを指先で捏ねてから、芯棒に巻きつけ、形を整えていく。

 指輪の幅と大きさが決まれば、ここからは装飾だ。杖を金属ヘラの形に変形させて、ふと、気づいた。


「……魔力水ってどのタイミングで使えばいいんだろ」


 捏ねるときに一緒に混ぜたほうがよかったのかな?

 でもそうすると、指輪も完全にオーダーメイドでしか作れなくなってしまう。


「最初は、後から漬けてみる方法を採用してみるかな」


 それでダメなら練り込み作戦だ。

 あとは……どんな方法があるんだろ。いやあ、いろいろ考えながら作るって楽しい。

 デザインを考えるのも楽しかった。

 今回モチーフにしたのは、ギルド長のあの立派なお髭だ。真っ白な髭なんだけど、その毛の流れが本当に綺麗で。それをモチーフにしてみるのも面白いと思ったのだ。

 ちょっと幅を太めに作った指輪に、毛の流れを一本一本、デザインに見えるように杖の先端を使って彫り込んでいく。

 彫り込む深さで強弱をつけたり、あえて貫通させて透かし模様にしてみたり――ああ、やばい。この作業楽しすぎる!

 時間も忘れて、私はその作業に没頭していた。



   ◆◇◆



「こんなもんかな、っと」


 試作品第一号ができた。

 それにしては、かなりデザインを凝りすぎてしまったけど――でも、こうして没頭できるのは楽しかったし、仕上がりも大満足だ。

 魔術造形で作ったものは不思議な質感に仕上がる。

 金属とも少し違うし、向こうの世界の造形用パテで作った仕上がりともなんだか違っていた。まあ、それも面白いからいいんだけど。


「そうだ。魔力水」


 最後の工程を忘れるところだった。

 ギルド長に預かった小瓶を机の上に置く。ふたを開ければ、ちょうどそのまま中に指輪を入れることができそうだったので、そのままぽちゃんと中に入れてみた。


「わ、わわ……なんか、パチパチしてる」


 小さな火花のようなものが、瓶の中で弾けている。

 魔術造形で作った指輪と水の中の魔力が反応して電気を放出しているみたいだった。


「お、お……これ、大丈夫かな」


 これがどういう反応なのかは全然わからない。


 ――急に爆発したりしないよね? 念のため、周りに結界魔法でもかけておくか。


 小瓶の周りに結界を張る。

 そのままの状態で、しばらく観察することにした。


「ご飯食べよっと」


 時間がかかりそうなので、ご飯を食べながら待つことにする。

 アイテムボックスから取り出した定食は出来たてのあたたかさのままだ。やっぱりこれ、便利すぎ。


「いただきまーす」


 瓶の中の小さな花火を見ながら、ご飯を食べるのはなんか乙な感じだ。

 今度、こうやって見て楽しめる造形を作ってみるのも楽しいかもしれない。


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